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開拓惑星の孤独

舞夢宜人

第28話 開拓惑星の帰郷

 敷かれたレールの上を走る人生は嫌だとか、見知らぬ土地に行ってみたいという夢を抱く若者が、どこの世界にもいる。ある意味、若さゆえのはしかのようなものだ。交易相手を求めたこの航海が賛同を得られたのも、そういった流れにある物だ。不足しがちな資源が得られるのであれば、追加の交易船が作られることになるだろう。そうでなければ、衛星的な開拓地を作ろうとする者が現れる可能性もある。入植可能な場所自体はいくらでもある。


 駿河湾の西側の灯台と、東側の灯台が見えてきた。もう少し駿河湾を北上すれば、西側の灯台の北側に、焼津村が見えてくるはずだ。焼津村は、駿河湾の入り口付近まで漁に出る漁船が増えてきたことで時化対策として開発した港を中心に、この数年で自然発生的にできた村である。最初は、港と倉庫ぐらいしかなかったのだが、常駐者が家庭菜園を始めたのをきっかけに、子育てを卒業した40代以上の年長者を中心に50名ほどの村になった。最近になって、農業用水や、保育所、病院などを作る要望が出ていた記憶がある。農業用水が整備できれば、それなりの町になるだろう。


 駿河湾に入ったところで、15m級の漁船を改造したと思われるスループが後をついてくるのが確認された。駿河市にはない船だし、仙台市にも、函館市でも見かけなかった船だ。近づいてきたので声をかけたところ、別の街からの旅行者で、目的地が駿河市ということなので、場所を案内してやった。


 駿河市に近づくと、戸田丸を見つけた漁船がタグボートとして迎えに来た。専用岸壁に着岸して舫を渡すと、船員たちから安堵の声が聞こえた。わずか一月の間であったが、見慣れたプラントの反応炉や太陽炉、港の建物を見ると、懐かしく、帰ってきたのだと実感する。


「六花、やっと帰ってきたね。」
「久しぶりに子供達にも会いたいね。」
「時間が取れるといいね。次の休日に子供達を呼んでパーティーするのもいいかもな。でも、お客さんを放置するわけにいかないし、これからの方が忙しいかもなあ。」
「レポートの作成は終わってるの?いくつか指摘した点があったよね。」


 戸田丸の帰港の連絡を受けた部下達がやってきたので、伊達夫妻と十勝夫妻を紹介して、接待を頼む。港湾担当者に積み荷のリストを渡して、交易品の積み下ろしを依頼する。そうやって、いくつかの手続きをしていると、港湾警備員が20歳ぐらいの一組の男女を連れてきた。


「開拓地No.49-91-0001だった琉球市からの旅行者だそうです。外の街との折衝は駿河市長補佐の担当と伺いましたので、連れてきました。」
「琉球市から来た琉球一輝です。彼女は妻の一菜です。」
「旅行者と聞きましたが、初めてのケースなので戸惑っています。」
「立場としては、琉球市の幹部候補生なのですが、街の発展が停滞していまして、外との交流を始めれば、突破口になるのではないかという口実で、旅に出ました。」
「そうですか。この船も、他の街と交易をしたいということで建造され、北方にある仙台市や函館市と交易開始の交渉に出かけて帰ってきたところです。琉球市の様子なんかを聞かせていただければ、多少は補給物資を提供できるかと思います。」
「それは、ありがたい。琉球市だけでなく、途中で寄った博多市の様子なんかも話せると思います。」
「どんな文物が流行っていて、何が交易できるのか興味があります。宿泊場所を提供しますので、そういったものがわかりレポートか何かを提供していただけるとありがたいです。そちらもお疲れでしょうし、まずはゆっくりお休みください。明日、仙台市と函館市からの来賓に駿河市を案内して、夕方に、関係者で簡単なパーティーをしますので、良かったらご出席願います。」
「ご配慮ありがとうございます。」


 琉球市と博多市の話も気になる。今さらながら、単に出かけていくだけならば、もっと早く他の街と行き来できるようになっていたのではないかと思いつく。もっとも、交易をする前提で準備をしてきて、この町を訪れる外部の人が現れることも想定して準備していたからこそ、慌てずに済んでいるという面もある。渡航目的が街としての公の要求ではなく、私の要求を優先した結果であれば、琉球夫妻の取り扱いに注意する必要があると肝に命じつつも、新しい出会いに期待している面もある。少なくとも、警戒するのは市の幹部として間違った判断ではないだろう。





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