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開拓惑星の孤独

舞夢宜人

第19話 開拓惑星の恋愛事情

 私たち第一世代は、母船のAIによって生産され、カップリングの成功率の向上のためにパートナーが後天的に刷り込まれている。運動能力の成長促進のために生育カプセルから保育ゲージに開放されたときですら、パートナー候補になっている同一系統の兄弟と同一系統の姉妹との組み合わせで一緒に遊ばせている。私の兄弟達であるM0系統と一花達の姉妹であるF0系統は、最初からパートナー候補としてセットで育成された幼馴染でもある。同様に周辺探索チームの4人組はM9系統とF9系統のカップルであり、他の4人組のチームも系統が違うだけで同様になっている。保育ゲージでの記憶を保っている人は少ないが、ほっておくと同じ系統の兄弟姉妹かパートナーとして刷り込まれた対象の系統の相手同士で自然と集まる程度には刷り込みの影響が強い。第一世代は、開拓地の開発と、第二世代以降を生産するための存在とされており、カップリングされてからは常にその二人一組で行動している。促成教育で、男女平等と性の多様性を許容しない刷り込みも行われている。
 私が夕食の後片付けをして、駿河家のリビングとして使っている部屋に行くと、睦月が捜査している端末画面を他の3人が後ろから覗き込む形で、姦しくしているのが見える。


「楽しそうだね。何を見ているんだい。」
「子供の成長記録。」と睦月。
「誰のって……アクセス権限的に私たちの兄弟姉妹のかい?」
「そうなの。一花が昔の記録の場所を教えてくれたの。」
「そういえば、私が一花に馬乗りにされて泣かされている写真を一花に見せられたことがあるなあ。」
 4人の女の子が積み木遊びしているシーンで、気になって声をかけた。
「画面止めて。一番左側にいるの一花だよね。その隣は睦月みたいだね。」
「ちょっと待ってね。確認するから……左から一花、睦月、弥生、卯月……ちょうど私ら4人だね。一花は名札が見えているからわかるとして、隣が睦月だってよくわかったね。」
「20秒前ぐらいまに巻き戻してみてごらん。仕草でなんとなくわかるよ。」
「ああ、これ、困ったときの睦月だね。一花に使いたかった積み木のブロックを取られたみたいだね。一郎は睦月をよく困らせるから覚えていたんでしょう。あまりいじめないように。」と弥生がからかい気味に言う。
 動画を進めると車の玩具で遊んでいた弥生が積み木を崩してしまい一花と喧嘩になって、そのあおりを受けて睦月と弥生と卯月が泣き出した。カメラ側から泣いている3人をかばうように男の子が乱入して、一花を止めようとして逆襲されて馬乗りにされて蹂躙されていた。見覚えがあると思ったら、その男の子は私だった。続けて、一花と睦月に両方から引っ張られて泣いているシーンとか、弥生と車の玩具で遊んでいるシーンとか、睦月と卯月にいじられて服を脱がされているシーンとか見るにつれて、「あなたは、そういう運命だったのよ。」と卯月が笑いながら私の背中を叩く。一花が壁に写真を飾ろうとしていたので見せてもらうと、5人の子供の写真で、一花、睦月、弥生、卯月の4人に抱きつかれて両手両足を拘束されて、お昼寝している私の姿だった。


 翌日、睦月が主に蕎麦などを担当している下田清明と下田雛月の夫婦と、伊東桐春と伊東花月の夫婦の4人組を連れてきた。下田清明が雛月と花月とを比べて花月を褒めるので下田清明と雛月が喧嘩し、それを仲裁しようとして伊東桐春が花月と雛月とを比べて雛月を褒めるので伊東桐春と花月が喧嘩して収拾がつかなくなったということだ。傍から見ると兄弟姉妹同士とあって実に似た者同士である。逆のことをやられたら清明と桐春だって自分のパートナーを怒るだろうと、男二人を諭す。
「清明と桐春が違っているように、雛月と花月が違っている。自分のパートナーに改善を要望し合うのはいいが、別の人とましてや自分の兄弟姉妹と比べられれば面白くないのは当然だろう?」
「そうじゃない。」と雛月と花月がユニゾンで反発する。「元とは言えばあんたが……この泥棒猫」と言って、今度は雛月と花月が喧嘩を始め、それぞれのパートナーが後ろから羽交い絞めにして二人を引き離す。よくよく聞いてみると、雛月が清明と花月との浮気を疑い、花月が桐春と雛月との浮気を疑っているのが原因で、不満を持っているところで比較されたから喧嘩になったということらしい。
「清明さん。桐春さん。二人が浮気していないのであれば、できるアドバイスは一つだ。仕事と家の関係でいつも4人でいるだろう? 定期的に自分のパートナーと二人だけの時間を作って二人にとって楽しいことをしなさい。どうせ今日はもう仕事にならないだろう。デートして来い。」


 二組の夫婦を追い出すと、睦月がニヤニヤと私を覗き込む。
「睦月とも仕事以外で二人の時間を作って欲しいなあ。仕事を口実に二人っきりになろうとしているの気付いているよね? 姉妹で一緒にいるのも楽しいし、5人で楽しく過ごすのもいいけれど、自分だけを見てほしい気持ちもあるのよ。」


 睦月の期待が重い。睦月ですら何か貯め込んでいるようなら、一花はさらに重症になっている可能性が高い。早急に対処が必要だろう。とりあえず要望確認を兼ねて、その日の夕方から4日連続して一夜に一人づつ二人だけの時間を作ってみた。最初のうちは警戒されたけれど、それぞれに言いたいことや、したいことがあった。特に、一花がいろいろ貯め込みすぎて自爆する前に対処できたのは収穫だった。

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