開拓惑星の孤独

舞夢宜人

第13話 開拓惑星の成長

 宿舎に戻って、お花見を兼ねたハイキングの様子を駿河睦月さんにメールした。いつもならすぐに連絡が来るのに今日に限って応答がない。不審に思いながらも、簡単に、作り置きしていた蕎麦と、菜の花のサラダで夕食を取った。夕食の片付けが終わったころに、1週間後に重大な会議をすることと、それまで応答できないと返信があった。


 1週間後の通信画面には、いつもであれば睦月さん一人のはずなのに、睦月さんを先頭に、一花に似た感じの髪型違いの女性が3人と、私の兄弟と思われる男性の5名が写っていた。何かがあったということなのだろう。不安になる。代表して睦月さんが語りだす。
「まず、一郎に謝らなければなりません。私が計画を取り違えてしまっていたようです。結果として一郎に過大な負担をかけることになりました。ごめんなさい。」
「どういうことですか?」
「最初の1年は、開拓者本人が消費する分と生産量を維持できるだけの量だけ生産できればよかったので、あんなに頑張る必要はなかったんです。途中から一花が入植して多少は楽だったでしょうが、結果として、3年目の目標を最初の1年でクリアしてしまいました。」
「大変だった分、贅沢な食事ができていると思っているので、気にしないでください。」「やっぱり、そうだったんですね。事情があったとはいえ、勝手に押しかけた身ですし、一郎さんと一緒に作業するのが楽しくて気にしていませんでした。」
「資源探査衛星の世代交代に伴う監査で、あなたのところの広大な菜の花畑が見つかって、急遽、業務監査が行われたので、その対応でしばらく応答できなかったのです。心配してくれてありがとうございます。その結果としていくつかの決定が行われました。」
「一つ、管理不行き届きで駿河睦月をオペレーターから解任。後任は、メインオペレーターが駿河如月、サブオペレーターが駿河次郎の夫婦になります。」
後ろにいる一組の男女がよろしくと挨拶した。
「一つ、開発の進捗度を考慮して、No.49-88-0001を筆頭とする開拓地を重点モデル地域とし、さらなる開発の強化を行うことになりました。」
「一つ、重点モデル地域に指定したことに伴い、駿河睦月を含む追加の人員と資材を開拓地に降下することになりました。なお、降下する人員は一部を除き、昨年の秋に変更した計画の39名になります。降下する資材については、資料を精査したうえで、新しいオペレーターに相談してください。」
「一つ、降下する人員のうち32名は、各4名づつ開拓地No.49-88-0002~9に配備されます。食料供給などを開拓地No.49-88-0001から供給することになります。地上の二人は現状の作業計画を継続してください。人員増加に伴う追加作業は、新しいオペレーターと降下した人員で行います。」
「一つ、周辺探索チームとして、遠江太郎と遠江初月の夫婦と、伊豆一樹と伊豆始月の夫婦を派遣します。この4名は、周辺の生物の生息状況や、利用可能な資源の探索を主任務とします。」
「最後に、No.49-88-0001ですが、全体のリーダーを一郎さんにやってもらいます、医療担当兼サブリーダーを睦月が務めます。他には、駿河弥生と駿河卯月の2名が入植します。本来は男女1名づつの予定だったのですが、男性が別の地域に派遣されることになったので、医療関係に強い卯月さんに交代しました。弥生さんは機械整備を専門にしています。勝手ながら一花さんは登録名が駿河一花になります。結果として、同一系統の4姉妹がパートナーになりますが、一郎さん、よろしくお願いします。」
一花が私の隣でぶつぶつ言いながら急に不機嫌になって私に抱き着いてくる一方で、画面の中で3人の女性がよろしくと挨拶した。
 後のことは、睦月さんに任せるといって、如月さんと次郎さんは席を外した。


 私は、あきらめ気味につぶやく。
「どうしてこうなった。人間関係を複雑にしたくないのだがなあ。」
「一花さん、ごめんなさいね。私のミスと希望があった上に、一郎さんが期待以上の成果を上げてしまった上に、運が悪かったんです。入植の目的上、女性を独身のまま放置することはできません。一郎さんが、一花と私の二人を受け入れたことで、複数の女性を受け入れるだけの甲斐性があり、そういう性癖であるとみなされています。」
「弥生と卯月については、パートナーを失ったことに対するカウンセリングを私が担当していたという点も大きいです。ちなみに、前のパートナーは一郎さんと同じ系統の兄弟でした。」
「私達3名は、数時間以内に先行して降下して受け入れ準備をすることになっています。一郎さんと一花さんにとっては一方的な決定で不満があるとは思いますが、少なくとも、これから一生一緒に暮らす家族になるのですから、時間をかけて解消していきましょう。次に会うのは地上になります。」


 通信が終わった後、しばらく呆けていたが、一花が抱き着いて私を拘束しているのが痛くなってきて我に返った。私の服を手が白くなるほど強く握っていた。近くの長椅子に誘導して座らせ「これからもよろしく」と言って、彼女の頭をなでながら、一緒にいてやることしか私にはできなかった。二人の関係が変わる程度には、半年の月日は十分長かったようである。



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