もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

ヒョウリの花

「あっ、多分ここなの! この家から、お姉ちゃんの気配を感じるの!」

「あー、やっぱり、そういう事だったか」

【雑貨喫茶アビス】にて、納得のいく土産を見繕ったフィーアと共に辿り着いたのは、案の定、アインの屋敷だった。

どうりで見覚えのある白衣を着てると思った。

それにしても、まさかアインに妹がいたなんてな。

まだアインと出会って、それほど長い時間が経っている訳じゃないから、別におかしな事でもないけど、そんな話は全く聞いていないぞ。

こんなに可愛らしい妹がいたら普通は自慢しそうなもんだけどな。

少なくとも、俺は学校で妹の事を自慢しまくっていた。

まぁ、そのせいで妹が、ちょっとした有名人になってしまって、恥ずかしがった本人からメッチャ怒られたけどな!

「お兄ちゃん、早く行くの!」

「ああ、そうだな。ちなみに、実は俺も、ここに住んでたりするんだ。パーティーメンバーの特権で、お姉ちゃんに部屋を貸して貰ってるんだよ」

「そうなの!? お兄ちゃんは、お姉ちゃんの、お仲間さんなんだ! ……ん? でも、同じ家で暮らしてるって事は、もしかして、それ以上の関係だったり!?」

恋に恋するお年頃なのか、キラキラした期待の眼差しを向けてくるフィーア。

そんな純粋な彼女に苦笑しつつ、俺は首を横に振る。

「いやいや、別に、そういう訳じゃないんだ。この家の住人だって、もう一人いるしな。その子も同じパーティーの仲間だから、皆で同じ家に暮らしてるってだけだよ」

「……なぁんだ、つまんないの」

シュン……と、まるで花がしおれるように、肩を落とすフィーア。

ガッカリさせて申し訳ないけど、嘘をでっち上げた所で、どうせ、すぐにバレるのだ。

お姉ちゃんの恋愛事情については、本人と好きなだけ語らって貰うとしよう。

「さっ、そんなことより、お姉ちゃんに会いに行こうぜ。せっかく思い出の品も手に入ったんだし」

俺は、そう言って、彼女の手に、しっかりと握られた花束を指差した。

「ハッ! そうだったの! フィーアが選んで、お兄ちゃんが買ってくれた、二人のきょーどープレゼントで、お姉ちゃんに喜んで貰うの!」

「おう、その意気だ!」

この花は、クラリスが紹介した曰く付きの商品の一つだ。

なんでも、この花は猛毒の材料になるらしく、それに尾ひれが付いて、不幸を呼ぶアイテムと言われてるとか、なんとか。

しかし、最近の研究で良薬の材料にもなると判明したそうだ。

そして、この花は二人にとっての思い出の品でもあるらしい。

それなら丁度いいという事で、俺が購入してフィーアに手渡したのだ。

アインも俺なんかより、フィーアに貰ったほうが嬉しいだろうし、あの店にいた時から二人の関係は薄々、気付いてたしな。

ちなみに、この花は【ヒョウリの花】という名前らしい。

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