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もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

その名はフィーア



「おおっ! 今日は、なんて素晴らしい日なんだピョン! まさか新規の、お客様が二人も店に来るなんて! しかも一人は、こんなに可愛らしい、おニャの子! ねぇねぇ、お嬢ちゃん。お名前は?」


「フィーアはフィーアなのっ。今日は久しぶりに会う、お姉ちゃんのために、お土産を買いに来たの!」


「そっかぁ〜。姉妹なのに離れ離れだったんだねぇ。それで自分から、お土産を持って会いに行くとか、なんて健気にゃのか! ねっ、お兄さんも、そう思うよね!?」


「お、おう……。それについては同意だけど、なんだ、そのテンション」


栗色の髪とクリクリした黒い瞳が特徴的な幼女を相手にして、この上なく荒ぶっているクラリス。


俺は、そんな彼女を宥めつつ、突然やって来た女の子の方へ視線を向けた。


フィーアと名乗った、その少女は、まだまだ未成熟な年頃で、10歳くらいに見える。


つまり、見た目年齢が12歳くらいのミルクよりも、更に幼く見えるという訳だ。


体の方も、ミルクと違って年相応で、つるペタである。


当然、手足も短いので、白衣の裾が床に付いてしまっている。


が、ここまで引き摺って来た割には何故か汚れていない。


それどころか、良く見ると埃一つ付いておらず、まさに新品同然だった。


「なぁ、フィーアちゃん。その白衣って――」


「あ、ごめんなさいなの。フィーア、お姉ちゃんに呼ばれて急いでるから、お話は今度にして欲しいの」


「そ、そうか。そりゃ、悪いことしたな」


最後まで言い切る前にバッサリと断られ、すごすごと引き下がる俺。


実は気になる事は他にもあるんだけど、こう言われては仕方ない。


どうやら、“お姉ちゃん”とやらは、この街に居るようだし、また話す機会もあるだろう。


というか、俺の予想が正しければ、この後すぐに再会する筈だしな。


詳しい話は、その時に聞けばいい。


「本当はフィーアも色んな人と、ゆっくり、お話がしたいの。でも、お姉ちゃんが最優先なの」


「……そっか。フィーアちゃんは、お姉ちゃんが大好きなんだな」


「そうなの! だから、凄く離れてたけど慌てて飛んできたの! お姉ちゃんとは、いつでも心が繋がってるけど、お姉ちゃんから呼び出されのは初めてだったから!」


心の底から嬉しそうに、姉への想いを語るフィーア。


そんな彼女の姿が眩しくて、一瞬だけ言葉に詰まってしまう。


「……なら、早く、お土産を選んで、お姉ちゃんのとこに行かないとな! 邪魔して悪かったよ」


それでも何とか口を開き、フィーアを応援する。


「うん! フィーア、頑張るの!」


そんな俺に、フィーアは満面の笑みを見せてくれたのだった。

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