もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

クラリスの営業トーク

「じゃあ、まずは【竜の鱗】とか、どうかにゃ? ちょっと、ありきたりだけど、武器や防具の作製に使えるのは当然として、マジックアイテムや日用品の材料にもなっちゃう万能素材! 幅広い用途で活躍する、その汎用性は他の追随を許さない! 錬金術師なら常に一つはストックを確保しときたい代物だよ? 低ランクの物なら値段も手頃だし、アインさんへの贈り物として大きく外す事は無いと断言できるね」

店の壁際に並んだ棚の一つに案内して、商品を示しながら、懇切丁寧に説明してくれるクラリス。

そんな彼女の営業トークは、非常に分かりやすく、説得力もあって、俺は思わず感心してしまっていた。

ふざけた格好や、わざとらしい言動の反動ギャップで、正直、少しだけ見直した気分だ。

まぁ、アインの時も、そうやって評価を改めた瞬間、ひどい目に遭ったりしてるから油断はしないけど。

特に、この二人は親しい上に感性も近いようだからな。

「悪くはないけど、今のアインの気を引くには刺激が足りないかな? 今回は実用性よりインパクトを重視したい」

せっかく買ったのに、『そら、おおきに。ありがたく頂戴するから、その辺に置いといて』なんて言われたら意味が無いからな。

ここは、アイツが思わず部屋から飛び出すような奴を買いたい所だ。

「ん〜、じゃあ、一点物の天然素材でも買っちゃう? 【虹の絹糸】とか【雨露の石】とか。最低でも、これくらいの値段だけど」

クラリスが示した金額に、俺は激しく首を振った。

「冗談じゃない。俺の財布が一発で空になるわ」

実は昨日、ゴーレム討伐と街の防衛に貢献した事で、ちょっとした臨時収入を獲得している俺。

とはいえ、その報酬を全て、アインへの手土産に費やす――という訳にはいかない。

ケチだと言われようが、甲斐性なしだと言われようが、流石に、そこは譲れないな。

というか、アインの場合、良くも悪くもアイテムの価格など気にしないだろう。

自分が興味を持てるか否か。

アインにとってのアイテムの価値とは、その一点に尽きるはず。

だから別に、必ずしも高級アイテムに手を出す必要はないのだ。

……決して、節約のために必死で理論武装した訳じゃないぞ?

「うーん、残念だけど、そうなると、後はいわく付きの商品しかないピョン」

何故か嬉しそうに、ニヤニヤと笑みを浮かべるクラリス。

セリフと表情が真逆じゃねぇか。

お前が言う“曰く付き”はマジで洒落にならなさそうなんだけど……。

取り敢えず、一応、見せて貰うか?

「その“いわく付きのしょーひん”ってヤツ、私もキョーミあるっ!」

バタン! と、勢い良くドアが開かれる音と共に、舌足らずな声が響き渡る。

振り返ってみると、そこにはを着た、が、不敵な笑みを浮かべて仁王立ちしていた。

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