もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
女を泣かせた責任は
「そ、そういえば! 白木さんも、なかなか良い武器を持ってますよね! どこで手に入れたんですか?」
重い空気を振り払うように、わざとらしく明るい声音で話題を変えるリンネ。
どうせ、コイツの事だから、俺の力になれなくて申し訳ないとか思ってんだろうなぁ。
空元気なのがバレバレだ。
とはいえ、せっかくの気遣いを無駄にするのも気が引ける。
ここは、素直に乗っておくか。
「あー、気の良い知り合いが格安で譲ってくれてな。出所がハッキリしない訳あり品ではあるけど、俺なんかには勿体ないくらい頼りになる相棒だよ、この白虹丸は」
「そ、そうですか。それは、良かったです。それにしても、もちこちゃんの時といい、白木さんのネーミングセンスは独特ですね……」
「お前まで、そんな反応かよ。ミルク達にも微妙な顔をされたんだよなぁ。スズリはカッコイイって言ってくれたのに。あっ、ちなみに、そのスズリって奴が白虹丸を売ってくれたんだぞ」
「……ふーん、お二人は趣味が合うんですね。どうせ、その店員さんとイチャイチャしたんでしょ?」
「ん? なに言ってんだ? スズリは男だぞ」
「へっ? そんなハズは…………あっ」
「そんなハズ? なんだ、リンネはスズリのこと知ってるのか?」
「そ、そんな訳ないじゃないですか……」
全力で目を逸らしながら言っても説得力がない。
オマケに、めっちゃ冷や汗が流れてるし。
「だったら、どうしてスズリが女だと思ったんだ? 武器屋と聞いたら普通は男の店員を思い浮かべるだろ。もちろん、女の店員さんがいても不思議はないけど、最初から女だと確信しているのは違和感がある」
「うぅ……。そ、それは……」
まぁ、スズリの事を見たことがあるなら、その勘違いも分かるけどな。
あいつ、見た目は完全に可愛い女の子だし。
だけど、リンネはスズリを知らないと言った。
「お前、また何か隠してるだろ」
「……くっ、私としたことが。まさか、こんな形で足元を掬われるとは」
悔しげに顔を歪めるリンネだけど、そんな表情もまた絵になるほど美しい。
ったく、美人ってのは存在からして反則だよなぁ。
「まっ、お前が言えないってんなら無理に聞くつもりはないさ。けど、一人で抱え込むのも大概にしろよ? お前って、一見お調子者に見えて、人のこと気遣いすぎだし」
「ふ、ふんっだ。白木さんに心配されても嬉しくなんて無いんですからねっ。私なんかの事より、白木さんは自分の心配をするべきです!」
「……それもそうだな。日本と違って、こっちは死と隣り合わせな物騒な事件がポンポン起きるみたいだし。それでなくとも冒険者は危険が多い仕事だからな。特に俺は、まだまだ弱いし、せいぜい鍛えるとするさ。あっさりと逝っちまわないようにな」
「……後悔、してませんか? この世界に来て」
「はっ? なんだよ、藪から棒に」
「だって、白木さん。今までは比較的、安全が保証された平和な世界で生きてきた訳じゃないですか。それなのに、特別な力も無しで危険な世界に転生したんですよ? 全部リセットして、一から人生を歩めば良かったって後悔してないのかな……と」
親に叱られた子供のようにシュンとして、項垂れるリンネ。
もしかして、教会で黒ローブに言われたことを気にしてんのか?
「……まったく、さっきも言ったばかりだろ? お前は妙な所で人の事を気遣いすぎなんだよ。その癖、調子に乗った時は鬱陶しいくらい人のこと弄ってくるし」
「うぅ……。だ、だって、そういう性格なんですから、仕方ないじゃないですか」
「その通りだ」
「へっ?」
まさか同意されるとは思っていなかったのか、リンネが口をポカンと開ける。
「お前は、そういう性格だ。そして、それは別に悪いことじゃない。お前は、お前がやりたいと思ったことをやれば良いんだよ。それで、失敗したり後悔したら、次に活かせば良い。成功も失敗も、決意も後悔も、全てはお前自身のもの。そして、それは俺や、あの黒ローブも同じだ。自分で望み、自分で選んだ。だから、その結果も俺達が背負うべきものなんだよ。だから、お前が気にして抱え込む必要はないさ」
「白木さん……」
「それに、ここは日本人なら誰もが憧れるであろう、剣と魔法のファンタジー世界だぞ? 少しくらい危険があるからって、後悔なんて微塵もないよ。もちこにミルク、アインみたいな面白い奴らとも出会えたしな。だから……さ。感謝してるよ、女神様。俺を、この世界に連れてきてくれて、ありがとう」
「う……ううっ! 白木さぁぁぁん!」
「のわっ!? ちょ、急に抱きついてくんな!」
「なんですか! なんで不意打ちで、そんな泣かせるようなこと言うんですか! それに、乙女が胸に飛び込んできたら、黙って抱き締めるのが男でしょう!」
「お、男だから問題なんだよ! いいから離れろ!」
「嫌です! ハンカチ持ってないので、白木さんの胸で泣かせてもらいます!」
そのままゴタゴタと暴れ続け、ようやくリンネが落ち着いたのは、それから一時間ほど経過した頃だった。
重い空気を振り払うように、わざとらしく明るい声音で話題を変えるリンネ。
どうせ、コイツの事だから、俺の力になれなくて申し訳ないとか思ってんだろうなぁ。
空元気なのがバレバレだ。
とはいえ、せっかくの気遣いを無駄にするのも気が引ける。
ここは、素直に乗っておくか。
「あー、気の良い知り合いが格安で譲ってくれてな。出所がハッキリしない訳あり品ではあるけど、俺なんかには勿体ないくらい頼りになる相棒だよ、この白虹丸は」
「そ、そうですか。それは、良かったです。それにしても、もちこちゃんの時といい、白木さんのネーミングセンスは独特ですね……」
「お前まで、そんな反応かよ。ミルク達にも微妙な顔をされたんだよなぁ。スズリはカッコイイって言ってくれたのに。あっ、ちなみに、そのスズリって奴が白虹丸を売ってくれたんだぞ」
「……ふーん、お二人は趣味が合うんですね。どうせ、その店員さんとイチャイチャしたんでしょ?」
「ん? なに言ってんだ? スズリは男だぞ」
「へっ? そんなハズは…………あっ」
「そんなハズ? なんだ、リンネはスズリのこと知ってるのか?」
「そ、そんな訳ないじゃないですか……」
全力で目を逸らしながら言っても説得力がない。
オマケに、めっちゃ冷や汗が流れてるし。
「だったら、どうしてスズリが女だと思ったんだ? 武器屋と聞いたら普通は男の店員を思い浮かべるだろ。もちろん、女の店員さんがいても不思議はないけど、最初から女だと確信しているのは違和感がある」
「うぅ……。そ、それは……」
まぁ、スズリの事を見たことがあるなら、その勘違いも分かるけどな。
あいつ、見た目は完全に可愛い女の子だし。
だけど、リンネはスズリを知らないと言った。
「お前、また何か隠してるだろ」
「……くっ、私としたことが。まさか、こんな形で足元を掬われるとは」
悔しげに顔を歪めるリンネだけど、そんな表情もまた絵になるほど美しい。
ったく、美人ってのは存在からして反則だよなぁ。
「まっ、お前が言えないってんなら無理に聞くつもりはないさ。けど、一人で抱え込むのも大概にしろよ? お前って、一見お調子者に見えて、人のこと気遣いすぎだし」
「ふ、ふんっだ。白木さんに心配されても嬉しくなんて無いんですからねっ。私なんかの事より、白木さんは自分の心配をするべきです!」
「……それもそうだな。日本と違って、こっちは死と隣り合わせな物騒な事件がポンポン起きるみたいだし。それでなくとも冒険者は危険が多い仕事だからな。特に俺は、まだまだ弱いし、せいぜい鍛えるとするさ。あっさりと逝っちまわないようにな」
「……後悔、してませんか? この世界に来て」
「はっ? なんだよ、藪から棒に」
「だって、白木さん。今までは比較的、安全が保証された平和な世界で生きてきた訳じゃないですか。それなのに、特別な力も無しで危険な世界に転生したんですよ? 全部リセットして、一から人生を歩めば良かったって後悔してないのかな……と」
親に叱られた子供のようにシュンとして、項垂れるリンネ。
もしかして、教会で黒ローブに言われたことを気にしてんのか?
「……まったく、さっきも言ったばかりだろ? お前は妙な所で人の事を気遣いすぎなんだよ。その癖、調子に乗った時は鬱陶しいくらい人のこと弄ってくるし」
「うぅ……。だ、だって、そういう性格なんですから、仕方ないじゃないですか」
「その通りだ」
「へっ?」
まさか同意されるとは思っていなかったのか、リンネが口をポカンと開ける。
「お前は、そういう性格だ。そして、それは別に悪いことじゃない。お前は、お前がやりたいと思ったことをやれば良いんだよ。それで、失敗したり後悔したら、次に活かせば良い。成功も失敗も、決意も後悔も、全てはお前自身のもの。そして、それは俺や、あの黒ローブも同じだ。自分で望み、自分で選んだ。だから、その結果も俺達が背負うべきものなんだよ。だから、お前が気にして抱え込む必要はないさ」
「白木さん……」
「それに、ここは日本人なら誰もが憧れるであろう、剣と魔法のファンタジー世界だぞ? 少しくらい危険があるからって、後悔なんて微塵もないよ。もちこにミルク、アインみたいな面白い奴らとも出会えたしな。だから……さ。感謝してるよ、女神様。俺を、この世界に連れてきてくれて、ありがとう」
「う……ううっ! 白木さぁぁぁん!」
「のわっ!? ちょ、急に抱きついてくんな!」
「なんですか! なんで不意打ちで、そんな泣かせるようなこと言うんですか! それに、乙女が胸に飛び込んできたら、黙って抱き締めるのが男でしょう!」
「お、男だから問題なんだよ! いいから離れろ!」
「嫌です! ハンカチ持ってないので、白木さんの胸で泣かせてもらいます!」
そのままゴタゴタと暴れ続け、ようやくリンネが落ち着いたのは、それから一時間ほど経過した頃だった。
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