もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
本物のリンネ
「さて、白木さんの固いものを咥え続けて口が疲れましたけど、約束は約束です。質問に答えましょうか」
「人聞きの悪い言い方すんな! 誰かに聞かれたら、どうすんだ! アインならネタにされるし、ミルクならハンマーでド突かれるんだぞ!」
スプーンで長時間、口を塞がれたことに対する当て付けか、不吉なことを口走るリンネ。
そんな彼女に全力で突っ込みつつ、聞きたいことを頭の中で整理していく。
「クスクスッ。パーティーメンバーと仲が良さそうで何よりです。お二人とも、なかなか個性的な方ですよね」
上品に口元を隠し、慈愛に満ちた穏やかな笑みを浮かべるリンネ。
本当、コイツって、ギャグモードの時と女神モードの時で差が激しいよな。
それでいて、どっちも似合っていて、魅力的……いや、なんでもない!
ないったら、ない!
「……あれっ? そういえば、リンネってアインと面識あったんだっけ?」
邪念を頭から振り払っていると、ふと、違和感に気付く。
そういえば、さっきも、『ミルクさんと、アインさんは?』って、聞いてきたよな。
ミルクとは3人で一緒に依頼をこなしたりもしたけど、リンネがアインと接触していた記憶はないぞ?
「ええ、昨日、白木さんが倒れている間に軽く挨拶した程度ですけどね。お互いに慌ただしかったので、詳しい話は出来てません」
「なるほどな……。って、そうだ! 昨日は何で、すぐに帰っちゃったんだよ。色々と聞きたいことがあったのに」
「すみません。神様も何かと忙しくて。というか、原則的に神が下界に降りて良いのは仕事の時だけですし」
「ん? でも教会の女神像を叩けば出てくるじゃん」
「あれは例外的な対応なんですからね! そんな簡単にホイホイと呼び出されたら困るんですから!」
「そ、そうか。気を付けるよ。……ところで、キースの担当リンネって、どうなるんだ? チュートリアルが終わる前に消えちゃったんだけど。というか、あいつって何で、まだチュートリアルやってんの? 俺より力も知識も身に付けてるよな?」
「ええっと、順番にお答えすると、まずチュートリアルは継続されます。それがルールなので。近いうちに同じ記憶と姿をもったリンネが派遣される事になると思います。混乱を避けるために関係者の記憶を弄る必要があるので、少し時間は掛かりますが。そして、チュートリアルの卒業条件に力や知識は関係ありません」
「じゃあ、なにが判断基準なんだ?」
「私がいなくても、この世界でやっていけるか、ですね。白木さんの場合は、早い段階でミルクさんという保護者が見つかったので、お任せ出来たんです。白木さん本人にも大きな問題は見られませんでしたし」
「つまり、あいつには任せられる仲間がいなくて、本人にも問題があると?」
「そうですね。簡単に言ってしまうと、ドジな上にプライドが高いので、なかなか信頼できる仲間に巡り会えないみたいです」
「身も蓋もない理由だな……。でも、パーティーは組んでたみたいだし、知り合いも多そうに見えたけどな?」
「最終的には担当リンネの判断なので、なんとも言えませんが……。彼を担当してる私は、まだ心配なんでしょうね」
「…………ふーん」
「あれぇ? なんですか、白木さん? もしかして、焼きもちですか? 私がキースさんばかり構ってるって妬いちゃってるんですか? もぅ、可愛いですねっ!」
「うっせ! だいたい、お前とキースの担当リンネは別人みたいなもんだろ? 同じ本体から生まれたってだけでさ。そもそも、どちらも分身体だし、結局、本体のリンネには会えない訳で……。って、別に会いたいって言ってる訳じゃないぞ!?」
「うっふっふ~。はいはい、分かってますって。フリですよね?」
「分かってねぇじゃねぇか!」
「でも、知ってました? 下界に現れる私が、本体と同じ姿なのは白木さんが相手の時だけなんです。他の方は自分の好みを反映した姿に変化しますから」
「……あー、そういえば、そんなこと言ってたな。本体のリンネが俺の好みドストライクだから姿が変わらないとか自意識過剰なことを」
「自意識過剰とか関係ないですぅ! というか、私が言いたいのは、そんな事じゃなくてですね? ほら、姿が変わらないって事は本体の私と会ってるのと変わらないんじゃありせん?」
「……でも、厳密には別人だろ?」
「それはそうですけど、例えば、『今ここにいる私は、実は本体なのでした!』って、言ったとして、それが嘘かどうか、白木さんには見抜けませんよね?」
「……確かにな。つまり、天然ダイヤと人工ダイヤの違いが見抜けない奴にとっては、どっちも一緒ってことか」
「まぁ、そんな感じです。それに私は見た目だけじゃなくて、性格や考え方まで同じなんですから本体と話してるのと変わりませんよ。白木さんとの大事な思い出も、きちんと本体に送られてますし!」
「……ふんっ」
「あっ、照れました? 照れちゃいました? 本物の私を独り占めしてるみたいで、独占欲が満たされちゃったんですね?」
「うるさい! そんなことより、次の質問いくぞ!」
苦し紛れに話題を逸らし、ついでに視線も少しズラしつつ、俺は何とか平静を取り戻そうと足掻いたのだった。
「人聞きの悪い言い方すんな! 誰かに聞かれたら、どうすんだ! アインならネタにされるし、ミルクならハンマーでド突かれるんだぞ!」
スプーンで長時間、口を塞がれたことに対する当て付けか、不吉なことを口走るリンネ。
そんな彼女に全力で突っ込みつつ、聞きたいことを頭の中で整理していく。
「クスクスッ。パーティーメンバーと仲が良さそうで何よりです。お二人とも、なかなか個性的な方ですよね」
上品に口元を隠し、慈愛に満ちた穏やかな笑みを浮かべるリンネ。
本当、コイツって、ギャグモードの時と女神モードの時で差が激しいよな。
それでいて、どっちも似合っていて、魅力的……いや、なんでもない!
ないったら、ない!
「……あれっ? そういえば、リンネってアインと面識あったんだっけ?」
邪念を頭から振り払っていると、ふと、違和感に気付く。
そういえば、さっきも、『ミルクさんと、アインさんは?』って、聞いてきたよな。
ミルクとは3人で一緒に依頼をこなしたりもしたけど、リンネがアインと接触していた記憶はないぞ?
「ええ、昨日、白木さんが倒れている間に軽く挨拶した程度ですけどね。お互いに慌ただしかったので、詳しい話は出来てません」
「なるほどな……。って、そうだ! 昨日は何で、すぐに帰っちゃったんだよ。色々と聞きたいことがあったのに」
「すみません。神様も何かと忙しくて。というか、原則的に神が下界に降りて良いのは仕事の時だけですし」
「ん? でも教会の女神像を叩けば出てくるじゃん」
「あれは例外的な対応なんですからね! そんな簡単にホイホイと呼び出されたら困るんですから!」
「そ、そうか。気を付けるよ。……ところで、キースの担当リンネって、どうなるんだ? チュートリアルが終わる前に消えちゃったんだけど。というか、あいつって何で、まだチュートリアルやってんの? 俺より力も知識も身に付けてるよな?」
「ええっと、順番にお答えすると、まずチュートリアルは継続されます。それがルールなので。近いうちに同じ記憶と姿をもったリンネが派遣される事になると思います。混乱を避けるために関係者の記憶を弄る必要があるので、少し時間は掛かりますが。そして、チュートリアルの卒業条件に力や知識は関係ありません」
「じゃあ、なにが判断基準なんだ?」
「私がいなくても、この世界でやっていけるか、ですね。白木さんの場合は、早い段階でミルクさんという保護者が見つかったので、お任せ出来たんです。白木さん本人にも大きな問題は見られませんでしたし」
「つまり、あいつには任せられる仲間がいなくて、本人にも問題があると?」
「そうですね。簡単に言ってしまうと、ドジな上にプライドが高いので、なかなか信頼できる仲間に巡り会えないみたいです」
「身も蓋もない理由だな……。でも、パーティーは組んでたみたいだし、知り合いも多そうに見えたけどな?」
「最終的には担当リンネの判断なので、なんとも言えませんが……。彼を担当してる私は、まだ心配なんでしょうね」
「…………ふーん」
「あれぇ? なんですか、白木さん? もしかして、焼きもちですか? 私がキースさんばかり構ってるって妬いちゃってるんですか? もぅ、可愛いですねっ!」
「うっせ! だいたい、お前とキースの担当リンネは別人みたいなもんだろ? 同じ本体から生まれたってだけでさ。そもそも、どちらも分身体だし、結局、本体のリンネには会えない訳で……。って、別に会いたいって言ってる訳じゃないぞ!?」
「うっふっふ~。はいはい、分かってますって。フリですよね?」
「分かってねぇじゃねぇか!」
「でも、知ってました? 下界に現れる私が、本体と同じ姿なのは白木さんが相手の時だけなんです。他の方は自分の好みを反映した姿に変化しますから」
「……あー、そういえば、そんなこと言ってたな。本体のリンネが俺の好みドストライクだから姿が変わらないとか自意識過剰なことを」
「自意識過剰とか関係ないですぅ! というか、私が言いたいのは、そんな事じゃなくてですね? ほら、姿が変わらないって事は本体の私と会ってるのと変わらないんじゃありせん?」
「……でも、厳密には別人だろ?」
「それはそうですけど、例えば、『今ここにいる私は、実は本体なのでした!』って、言ったとして、それが嘘かどうか、白木さんには見抜けませんよね?」
「……確かにな。つまり、天然ダイヤと人工ダイヤの違いが見抜けない奴にとっては、どっちも一緒ってことか」
「まぁ、そんな感じです。それに私は見た目だけじゃなくて、性格や考え方まで同じなんですから本体と話してるのと変わりませんよ。白木さんとの大事な思い出も、きちんと本体に送られてますし!」
「……ふんっ」
「あっ、照れました? 照れちゃいました? 本物の私を独り占めしてるみたいで、独占欲が満たされちゃったんですね?」
「うるさい! そんなことより、次の質問いくぞ!」
苦し紛れに話題を逸らし、ついでに視線も少しズラしつつ、俺は何とか平静を取り戻そうと足掻いたのだった。
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