もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

スズリをナデナデ

「……(くいくい)」

「ん? おおっ、スズリじゃないか! こんな所で会うなんて奇遇だな! 俺に、なにか用か?」

プリムとの口論から発展した馬鹿騒ぎが落ち着き、俺が一休みしている所に、スズリが訪ねて来た。

ちなみに、さっきまで散々、叫んでいた割には、あまり疲れが残っていない。

もしや、プリムが何かしらの回復でも掛けてくれたのか?

……いや、そんな訳ないか。

あの守銭奴シスターが、頼まれてもいないのに治療するなんて、あるはずないよな。

まして無償タダとなれば、尚更だ。

……と、思いきや、しれっと後から請求書を突き出して来たりして。

まぁ、そんな妄想はさておき、思えば、俺が今日の戦いを切り抜けられたのは、スズリのお陰でもあるんだよな。

こいつが白虹丸はっこうまるを勧めて、売ってくれなかったら、今頃どうなっていたことか。

俺のシャツの裾を引っ張って、気を引こうとするスズリは、今日も愛らしい。

これで、俺と同じ性別だなんて未だに信じられないよな。

「……おっきいゴーレム……討伐……したって聞いて…………お、おめでとう……ございます……」

「わざわざ、お祝いを言いに来てくれたのか? 可愛い奴め!」

人と話すのが苦手なスズリが、こんなに人の多い場所まで来て、祝いの言葉をくれるなんて、お兄さんは感無量だぜっ!

そんな俺の喜びを全身で表現すべく、スズリを抱きしめ、わしわしと頭を撫でる。

耳まで真っ赤に染めたスズリは、ぷるぷると震えつつも、されるがままだ。

そのうえ、桜色の髪からは、本物の桜のような甘い香りが漂ってるし、こうしていると本当に女の子みたいだな。

あっ、そういえば——、

「いやぁ、本当に、この子は可愛いわねぇ。主人に愛想を尽かしたら、いつでもおいで?」

「そうだな! お前みたいに食いっぷりの良い奴は嫌いじゃねぇ。それにウチに来たら、みっちり鍛えてやるぞ!」

ぷるぷるで思い出したけど、もちこの奴はパーティーが始まってから、ずっとBARの女マスターに餌付けされているみたいだ。

その隣にはギルド支部長の姿もある。

ついさっき、知った話だけど、どうやら二人は夫婦らしい。

胸元が大きく開いたカクテルドレスを着こなす、キャバクラの主といった見た目の女マスターと、上半身が、ほぼ裸で、分厚い胸板や筋肉を見せつけるギルド支部長は、まさに美女と野獣。

いったい、どんなドラマの果てに結婚したのか、そのうち聞いてみたいもんだな。

そんな事を考えつつ、俺は腕の中のスズリを、しばらく撫で続けたのだった。

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