もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

祝勝会

「そんじゃあ、野郎共! ゴーレムと、その他のモンスターの軍勢から街を守り通した、今日の勝利を祝って! 乾杯!」

「かんぱーいっ!」

ギルド支部長の音頭に合わせて、グラスをぶつける音が、あちこちで響き渡る。

ここは冒険者ギルド。

ゴーレムを討伐し、ドラゴンの襲来を凌ぎきったメンバーが、思い思いに祝杯を上げていた。

規律に厳しい騎士団と、自由奔放なギルドのメンバーは、普段から衝突が絶えないらしいけど、今の所は仲良くグラスを傾けているようだ。

「うぅ……。走りすぎて、まだ気持ち悪い……」

そんな、お祭りムードの中だと、ドラゴンから逃げ回った疲労で、グロッキー状態な俺は、かなり浮いている。

今は壁際の丸太椅子に腰掛け、壁に背を預けて休憩中だけど、パーティーの参加者たちからチラチラと視線を向けられていた。

始まったばかりで、もう酔ったのか? とか、最近の若いもんは軟弱な……とか考えてんだろうなぁ。

まぁ、そんな視線に反応を返す元気も残ってない訳だけど。

……ドラゴンが去っていった後、俺はミルクとアインに肩を貸してもらい街まで帰還した。

ちなみに、あの騒ぎに紛れて逃走しようとした黒ローブは、騎士団の部隊長とギルドの支部長によって捕らえられたらしい。

今は騎士団の支部で、一人目の黒ローブと共に取り調べを受けているそうだ。

詳しいことが判明するのは、これからだろうけど、取り敢えず、そいつは女の転生者らしいと、捕縛を手伝ったというキースから聞いた。

キースの担当リンネを襲った動機については、‘‘街を歩く度に自分よりチヤホヤされていて気に食わなかった’’との事。

しかし、その言い分を聞いたキースがブキギレて、周りから羽交い締めにされたため、それ以上は聞けなかったとか。

……うん、まぁ、気持ちは分かる。

チートを貰えなくて逆ギレした、一人目の黒ローブと同じくらい低レベルな動機だし。

ところで、そのキースだけど、頭を冷やしたいとのことで、この祝勝会には参加していないと、あいつのパーティーメンバーから聞いた。

リンネがやられてから、その死を悼む暇も無かった訳だし、今は一人になりたいんだろうな。

というか、チュートリアルが終わる前にリンネが消えたら、どうなるんだろう。

あれは、ただの分身体だし、また新しい分身体が派遣されるのか?

まぁ、もし新しいリンネが来なかったら、その時は、また教会の女神像を叩いて呼び出してみるか。

そろそろ罰当たりだって怒られそうだけどな。

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