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もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

命の重み

「……さてと。俺も、そろそろ危険と向き合わないとな」

ダディたちを見送った俺は、包囲してくるモンスターを睨みつつ、そう呟いた。

もはや、この場にいるのは、俺とミルクの二人だけだ。

さっきまではギルドのメンバーも数人、残っていたが、今は倒れたギルドの魔法部隊を戦域から離脱させるために動いている。

この期に及んでリスクを恐れ、ミルクにだけ負担を押し付ける訳にはいかない。

「ハルさん! 厄介そうなモンスターは、こっちで引き受けますですから、ハルさんは堅実に相手できるモンスターだけ、お願いします!」

「ああ、そっちは頼んだ!」

とはいえ、ここで見栄を張って足を引っ張るのは論外だ。

俺はミルクの判断に大人しく従い、こちらに流れて来たモンスターだけに集中する。

——と、さっそく、ミニマムウルフの群れが襲いかかってきた。

「‘‘アースロ’’! ‘‘ウォルタ’’!」

地属性の基礎魔法‘‘アースロ’’で、身体能力を強化し、続けて水属性の基礎魔法‘‘ウォルタ’’で作った水球をミニマムウルフの目にぶつける。

白虹丸はっこうまるは、まだ腰のベルト穴に差したままなので、影響を受けて暴発する事もなく、安定した魔法行使が出来た。

これも、キースに付き合って貰った特訓のお陰だな。

一時的に視界を失った先頭の一匹を無視して、残り二匹のミニマムウルフに肉薄する。

そして、魔法で高まった敏捷性とフットワークを生かし、一匹ずつ相手できる位置取りを確保した俺は、最初の一匹の顎に向けて白虹丸を抜き放った。

「くっ……おるぁぁぁッ!」

ズシリと、重たい衝撃が腕を伝う……が、躊躇っている余裕はない。

僅かな腕の痺れに顔をしかめつつ、そのままの勢いで白虹丸を振り抜くと、ミニマムウルフが大きく仰け反り、宙を舞った。

打ち所が良かったと言うべきか、悪かったと言うべきか、その一撃だけで、そいつはケルンを残して消えていく。

「……ははっ。地球にいた頃には考えられない体験だな……とっ!?」

初めて命を奪った感傷に浸る暇もなく、二匹目のミニマムウルフが飛び掛かってくる。

ついでに、‘‘ウォルタ’’を浴びせた個体も視力が回復したようで、こちらに向かって来ていた。

……考えるのも、感じるのも、全ては後回しだ。

今は、ただ生き残るために、為すべきことを為す。

「せっかく、魔法も身に付けたことだ。前回の試し切りのリベンジと行こうか!」

自分自身を鼓舞するように声を張り上げ、真っ直ぐに白虹丸を構える。

そして、迫り来る爪を弾き上げるようにして、二匹目のミニマムウルフを迎え撃った。

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