話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

及ばぬ魔法と折れたる剣(つるぎ)

「……はぁ……はぁ。……ふぅ、ようやく、数が減ってきたな」

プリムが騎士団の支援に向かってから、既に10分ほどが経過した。

今まで、どこからともなく現れていた雑魚モンスターの増援も落ち着き、こちらは徐々に余裕が生まれつつある。

しかし、肝心のゴーレムに関しては、未だに衰えが見られない。

あれから、ギルド部隊の本格的な魔法攻撃が幾度となく放たれたが、それすら歯牙にもかけず、ゴーレムは騎士団を追い込んでいる。

プリムの魔力も残り少ないようで、回復しきれないメンバーについては離れた場所に離脱しているみたいだ。

加えて——、

「くそっ、また剣がやられた!」

「ほら、俺の予備を使え! それで、最後だけどな!」

「こちらも残り僅か……。部隊長、このままではっ!」

「むぅ……万事休す、か……」

魔法にも物理にも強い耐性を持つ、ゴーレムの頑丈な体は、騎士団のつるぎを何本も、へし折っていた。

武器を失い、無手のスキルで戦っている団員も少なくない。

その上、ギルド部隊の魔法攻撃も途絶えて久しい。

彼らは全力で魔法を行使した結果、とうに魔力が尽きて、極度の疲労感で地面に倒れている。

必要最低限の魔力を上手く調整して回復に充てるプリムよりも、消耗は遥かに速いのだ。

「……仕方ねぇ。おい、ミルク、兄ちゃん! ここは任せた! 俺達は、そっちのパーティーと、ゴーレムの討伐に向かう! まだ敵は、それなりに残ってるが、奴を相手取るよりはマシだろう! いいか、死ぬんじゃないぞ!?」

キース達のパーティーを指差して、今後の方針を指示するダディ。

俺とミルクは一瞬だけ顔を見合わせると、互いに覚悟を決めた表情で頷いた。

「ああ、頼まれた! 街には一匹たりとも行かせねぇよ!」

「ダディさん! そっちも死んじゃダメですます! 絶対、また皆で祝勝会をしますですから!」

「ああ! 楽しみにしてるぜ!」 

最後に頼もしく、ニヤッと笑みを浮かべて、ダディはゴーレムの元に向かった。

その後にパーティーメンバーの大男が二人、続き、更にキース達のパーティーが追従する。

……モンスターの生命力は数値で確認できないため、終わりが見えない。

あと一撃で倒れるかもしれないし、まだ一割も削れていないかもしれない。

強いモンスターと戦う際には、そんな精神的な圧迫感とも向き合わなければならないのだ。

そんな状況でも、己を見失うことなく、為すべきことを冷静に見つめて、実行できる。

熟練の冒険者の貫禄を、俺はダディの背中に見た気がした。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く