もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

次なる一手

「作戦を次の段階に移行する! 今度は我らが囮を務め、ギルド部隊の大規模魔法の構築をサポートするのだ!」

「「「はっ!」」」

指揮官の指示に素早く応じて散開する騎士団のメンバー。

しかし、そんな彼らに翻弄されつつも、ゴーレムは、その巨大な拳を大地に叩き付けて、一人、また一人と負傷者を増やしていく。

騎士団にも当然、治癒を担当する団員がいるようだが、広範囲に破壊を撒き散らすゴーレムの猛攻に、対応が追い付いていない。

このままだと、戦況が瓦解するのは時間の問題だろう。

「チッ……。カム、付いてきなさい。騎士団の連中を支援するわよ」

「了解です!」

プリムも同じ未来を危惧したのか、瞬時に判断を下して、カムに声を掛けた。

すると、どこからともなくカムが現れ、プリムの傍に跪く。

マジで忍者か、あいつは。

「ミルク、申し訳ないけど、しばらく回復できないわ。大事な大事な貴方の身体は、もちろんだけど、あのお人好しにも怪我させないで」

「分っかりました! 任せて下さいですます!」

もしかして、お人好しって、俺のことか?

べ、別に昨日、助けたのは、お前のためじゃないんだからねっ。

……うん、キモいな。

男のツンデレとか誰得だわ。

下らないこと言ってないで、回避に集中しないと。

プリムが言ってた通り、しばらく回復の手が止まる。

オヤジパーティーや、キースのパーティーにも、回復役は居るみたいだけど、あっちはあっちで手一杯だろうし、余計な手間を掛けさせる訳には、いかない。

「おい、そこ! 焦りすぎだ! 魔力の流れが乱れてるぞ! 急ぐ気持ちは分かるが、暴発したら意味がねぇ! 安全第一で丁寧にやれ!」

「わ、分かりました!」

遠く離れた場所に展開するギルドの魔法部隊を見れば、相変わらず支部長が声を張り上げていた。

自身も大規模魔法を準備しつつ、周りにも気を配っているようだ。

まだ基礎魔法すら満足に使えない俺とは雲泥の差だな。

ちなみに、スキルさえ習得していれば、対応する魔法名を唱えるだけで発動する基礎魔法とは違って、高位の魔法は発動までに独特の【タメ】が必要らしい。

大量の魔力を正確に扱うには、それに応じた集中力と時間を要するのだとか。

俺の手が、その高みに届くのは、いったい、いつになることやら。

……まぁ、とにかく、まずは目の前の壁を乗り越えないと。

未来の話は無事に生き残ってからだな。

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