もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

戦闘開始

「野郎共! 攻撃開始! 騎士団に注意を向けさせるな! 放て、放て、放てぇぇぇ!」

冒険者ギルド、ハーモニック支部。

そのトップに君臨するギルド支部長の号令と共に、色とりどりの魔法が雨のように放たれた。

それらはゴーレムの顔に次々と着弾し、奴の動きが目に見えて鈍る。

作戦の第1段階は無事、成功だ。 

「総員! 冒険者ギルドに遅れを取るな! 【我らが剣に、女神リンネの祝福を!】」

「「我らが剣に、女神リンネの祝福を!」」

それを確認した騎士団の面々は、隊列を乱すこともなく、奴の背後に素早く回り込む。

そして、動きが緩やかになったゴーレムの足を、それぞれの武器と武技で攻め立てていく。

攻撃、交代、そして回避と、全ての連携が完璧に統制され、まるで一つの生き物みたいだ。

こちらも、端から見ている限り、何の問題も無さそうだな。

となると、残る不安要素は——、

「っぶねぇ!?」

「こら、ハルさん! 余所見は禁物ですます!」

「おいおい、兄ちゃん。相変わらず危なっかしいなぁ! そんなんじゃあミルクを任せらんねぇぞ!」

街に攻め込んで来るゴーレム以外の雑魚モンスターを、俺達が処理しきれるかって事だな!

襲い掛かってくるミニマムウルフの爪を紙一重で躱した俺は、そう結論付けた。

ちなみに、この場には俺とミルクの他にも大勢のメンバーがいる。

まずは、前にミルクが所属していたパーティーのメンバー。

ダディを筆頭とする3人の大男たちだ。

「俺だって、あれから少しは成長したんだ! こっから名誉挽回して見せるさ!」

「そいつは、楽しみだ!」

俺とダディが男臭い笑みを浮かべていると、横から、わざとらしい溜め息が漏れた。

「はぁ……なんでわたくしが、こんな、むさ苦しい男達と肩を並べないといけないのかしら?」

「おい、こら、てめえら! プリムさんが、ご立腹だ! ちっとは大人しくしろ!」

「貴方が一番、喧しいわ。この駄犬っ」

「あふぅ!? ぷ、プリムさん。こんな時に、ご褒美は、ちょっと……」

「あらあら、御免なさい? ただの躾のつもりだったのだけど。貴方ほどになると、この程度じゃ、ご褒美にしかならないのね。とんだ、変態だわ」

「はぃぃぃ! 変態で、すみませんんん!」

俺達以外のチーム、その2は、プリムとカムのコンビだ。

いつも通り、気の抜ける、やり取りを交わしているが、その活躍は目を見張るものがある。

特に、カムのポテンシャルの高さには度肝を抜かれた。

馬鹿な反応を返しているかと思えば、いつの間にか姿を消しており、次に現れた時にはモンスターのケルンが辺りに散らばっている。

周囲の仲間たちにすら、その存在を悟らせずに、粛々と命を刈り取っていく、その姿は、まさに忍者のよう。

もちろん、治癒師として名高いプリムも、噂に違わぬ実力を見せつけ、回復以外にも様々な役割をこなしている。

そして、一番、戦意が高ぶっているチームが、もう一つ。

「リンネの仇、取らせてもらうぞ!」

黒ローブに襲われて、リンネを失ったキースのパーティーだ。

キース自身、瀕死の重症を負わされたにも関わらず、既に回復して敵を屠っている。

他にも、魔法が苦手なギルドメンバーの何名かが、雑魚モンスターの討伐に参加していた。

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