もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
美女と串焼き
「な、なぁ、あんた。大丈夫か?」
「だ、大丈夫じゃないですぅぅぅ」
俺が路地裏で見つけた謎の美少女は、いまいち緊迫感がない間延びした口調で、不調を訴えた。
しかし、よく見ると、こんな薄汚い場所には不釣り合いなくらい絶世の美少女——いや、絶世の美女だな。
ふんわりと、ウェーブが掛かった紫の髪。
神秘的な輝きを放つ紺碧の瞳。
細いウエストとは対称的に、主張が激しいバストとヒップ。
上品かつ、ゆったりした服装は胸元も大きく開いており、大人の色気をこれでもかと振り撒いている。
……まぁ、ゴミ袋の山に埋もれてるせいで、全て台無しになってるけど。
なんだ、その筋肉バ◯ターを食らったような体勢は。
どんな経緯で、そうなったんだよ。
「よっこらせっ、と。腹が減ってるのか?」
取り敢えず、こんなお姉さんがパンツ丸出しで呻いてるとか残念すぎるので、なんとか抱えて近くの壁にもたれさせる。
人によっては興奮するのかも知れないが、俺的には、むしろ萎えるからな。
俺はパンモロより、パンチラ派だ。
……いったい、何を語っているんだろう。
ちなみに、お姉さんはレースの黒だった。
「は、はぃぃぃ。一週間くらい道に迷って、飲まず食わずだったので。あっ、水は‘‘ウォルタ’’で用意して飲んでたんでした」
「……そっか、それは災難だったな。金はあるのか?」
「う~ん。あるには、ありますが、この国の通貨ではないので」
「外国から来たのか。……しゃあない。串焼き程度で良ければ奢ってやるよ」
黒ローブの捕獲に協力したことで、ちょっとした報酬を貰えたしな。
所詮は降って湧いたような金だし、人助けに使うのも悪くないだろう。
「あ、ありがとうございますぅぅぅ。なんと、お礼を言っていいか。貴方は命の恩人です」
「気にすんなって。……不可抗力とはいえ、アレも見ちまったことだし」
「ほえ?」
「こっちの話だ」
俺は美女の追求から逃れるように、そそくさと、その場から離れ、表通りの屋台に向かった。
そこで、適当に2、3人前の串焼きを買い込んで、再び路地裏に戻る。
……というか、よく考えたら、一週間、断食した後に、いきなり肉を食うのは良くないんじゃないか?
まぁ、本人も、特に何も言って無かったしなぁ。
最悪、野菜だけ外して食わせるとしよう。
「戻ったぞー」
「あぁぁぁ。良く焼けた肉と野菜、そして香ばしいタレの匂いがぁぁぁ」
キュルルルルル! と、可愛らしくも激しい腹の虫が、彼女の空腹を表している。
どうやら、もう我慢が出来ないといった様子だ。
確かに、旨そうだもんなぁ、この串焼き。
ぷりぷりとした柔らかい肉が、炭火で、じっくりと炙られ、肉汁を溢れさせる。
その肉汁を吸ったネギや、他の野菜も、うっすらと焦げ目がつく程度に焼き上げられ、非常に食欲をそそる香りだ。
さらに、濃厚なソースが全体をコーティングしており、えもいわれぬ輝きを放っている。
空きっ腹で、こんなの見せられたら、堪らんよなぁ。
「あのさ、一応、聞いとくけど、お腹とか壊さないか?」
「大丈夫ですぅぅぅ。昔から体だけは丈夫なのでぇぇぇ」
見たところ、心も、かなり丈夫そうだけど。
切羽詰まっていそうな割には、どことなく余裕を感じるんだよなぁ。
まぁ、それは良い。
本人が大丈夫と言っているので、俺は遠慮なく彼女に串焼きを与えた。
どうやら串を握る力も残っていないようだったので、俺が口許に持っていって食べさせたのだ。
なんだか雛に餌をやる親鳥のような気分で、なかなか楽しかった。
「あっという間に平らげたな。それなりの量があったのに」
「そりゃあ、お腹ペコペコでしたもん。本当に、ありがとうございました~。この恩は、いつか必ず、お返ししますねぇ」
「さっきも、言ったろ? 気にする必要は——」
「ハルさーん! どこにいますですかー!」
気にする必要はない。
そう言おうとした俺の声は、どこからか聞こえてきたミルクの叫びによって、掻き消された。
そういえば、お見舞いの品を買うって話だったな。
早く戻らないと。
「悪い、連れが来たみたいだ。あんたは……って、あれ?」
振り返ったとき、そこには誰もいなかった。
不思議に思って、表通りに出てみるが、人混みのせいで良く分からない。
名前も知らない、あの美女は、いったい、どこに消えたのだろうか?
「だ、大丈夫じゃないですぅぅぅ」
俺が路地裏で見つけた謎の美少女は、いまいち緊迫感がない間延びした口調で、不調を訴えた。
しかし、よく見ると、こんな薄汚い場所には不釣り合いなくらい絶世の美少女——いや、絶世の美女だな。
ふんわりと、ウェーブが掛かった紫の髪。
神秘的な輝きを放つ紺碧の瞳。
細いウエストとは対称的に、主張が激しいバストとヒップ。
上品かつ、ゆったりした服装は胸元も大きく開いており、大人の色気をこれでもかと振り撒いている。
……まぁ、ゴミ袋の山に埋もれてるせいで、全て台無しになってるけど。
なんだ、その筋肉バ◯ターを食らったような体勢は。
どんな経緯で、そうなったんだよ。
「よっこらせっ、と。腹が減ってるのか?」
取り敢えず、こんなお姉さんがパンツ丸出しで呻いてるとか残念すぎるので、なんとか抱えて近くの壁にもたれさせる。
人によっては興奮するのかも知れないが、俺的には、むしろ萎えるからな。
俺はパンモロより、パンチラ派だ。
……いったい、何を語っているんだろう。
ちなみに、お姉さんはレースの黒だった。
「は、はぃぃぃ。一週間くらい道に迷って、飲まず食わずだったので。あっ、水は‘‘ウォルタ’’で用意して飲んでたんでした」
「……そっか、それは災難だったな。金はあるのか?」
「う~ん。あるには、ありますが、この国の通貨ではないので」
「外国から来たのか。……しゃあない。串焼き程度で良ければ奢ってやるよ」
黒ローブの捕獲に協力したことで、ちょっとした報酬を貰えたしな。
所詮は降って湧いたような金だし、人助けに使うのも悪くないだろう。
「あ、ありがとうございますぅぅぅ。なんと、お礼を言っていいか。貴方は命の恩人です」
「気にすんなって。……不可抗力とはいえ、アレも見ちまったことだし」
「ほえ?」
「こっちの話だ」
俺は美女の追求から逃れるように、そそくさと、その場から離れ、表通りの屋台に向かった。
そこで、適当に2、3人前の串焼きを買い込んで、再び路地裏に戻る。
……というか、よく考えたら、一週間、断食した後に、いきなり肉を食うのは良くないんじゃないか?
まぁ、本人も、特に何も言って無かったしなぁ。
最悪、野菜だけ外して食わせるとしよう。
「戻ったぞー」
「あぁぁぁ。良く焼けた肉と野菜、そして香ばしいタレの匂いがぁぁぁ」
キュルルルルル! と、可愛らしくも激しい腹の虫が、彼女の空腹を表している。
どうやら、もう我慢が出来ないといった様子だ。
確かに、旨そうだもんなぁ、この串焼き。
ぷりぷりとした柔らかい肉が、炭火で、じっくりと炙られ、肉汁を溢れさせる。
その肉汁を吸ったネギや、他の野菜も、うっすらと焦げ目がつく程度に焼き上げられ、非常に食欲をそそる香りだ。
さらに、濃厚なソースが全体をコーティングしており、えもいわれぬ輝きを放っている。
空きっ腹で、こんなの見せられたら、堪らんよなぁ。
「あのさ、一応、聞いとくけど、お腹とか壊さないか?」
「大丈夫ですぅぅぅ。昔から体だけは丈夫なのでぇぇぇ」
見たところ、心も、かなり丈夫そうだけど。
切羽詰まっていそうな割には、どことなく余裕を感じるんだよなぁ。
まぁ、それは良い。
本人が大丈夫と言っているので、俺は遠慮なく彼女に串焼きを与えた。
どうやら串を握る力も残っていないようだったので、俺が口許に持っていって食べさせたのだ。
なんだか雛に餌をやる親鳥のような気分で、なかなか楽しかった。
「あっという間に平らげたな。それなりの量があったのに」
「そりゃあ、お腹ペコペコでしたもん。本当に、ありがとうございました~。この恩は、いつか必ず、お返ししますねぇ」
「さっきも、言ったろ? 気にする必要は——」
「ハルさーん! どこにいますですかー!」
気にする必要はない。
そう言おうとした俺の声は、どこからか聞こえてきたミルクの叫びによって、掻き消された。
そういえば、お見舞いの品を買うって話だったな。
早く戻らないと。
「悪い、連れが来たみたいだ。あんたは……って、あれ?」
振り返ったとき、そこには誰もいなかった。
不思議に思って、表通りに出てみるが、人混みのせいで良く分からない。
名前も知らない、あの美女は、いったい、どこに消えたのだろうか?
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