もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
事後報告
「そうか、黒ローブは無事に捕まったか」
「はい、今は騎士団のハーモニック支部で取り調べを受けてますです」
「ちなみに、ローブの中身は男やったみたいやね。良かったやん、お兄さん。女の子を傷物にした訳やなくて」
「まったくだ。‘‘責任とれ’’とか言われても困るしな」
朝っぱらから思わぬ黒歴史を生み出してしまった俺だが、あの後は特に何事もなく、二人を起こして一階の食堂へ向かった。
ただ、俺としては、そのまま二人が付いてくると思っていたが、予想に反して、リンネは玄関で別れを告げ、足早に去ってしまった。
何か急ぎの用事でも、あるのだろうか?
でも、それなら何で俺に付き添ってたんだろう?
ちなみに、例の手錠に関しては、丁度その辺りのタイミングで、12時間が経過して充填魔力が尽きたらしく、勝手に外れた。
……ミルクの分は魔力が再充填されてしまったので、そのままだけど。
おかげで、今もミルクは隣の席に座っている。
ついでに言うと、ミルクの向かいがアインで、俺の向かいは、もちこだ。
「それと、今回の襲撃の裏では、実行犯とは別の人物が関わっていると思われますです」
「……別の人物って?」
「詳しくは、なんとも……。ただ、顔と声を隠す周到さや、持っていたアイテムの質。それらが襲撃者本人と上手く噛み合っていないと思いますです」
「そうなんよね~。あんだけ入念な準備して犯行に及んでる割には、プリムはんをいたぶって時間を浪費したり、お兄さんと戦う時も油断して返り討ちに遭ったりして、なんかチグハグや。だいたいの事情はプリムはんから聞いたよ?」
なるほど、その時は必死で気付かなかったけど、言われてみれば確かにな。
自爆覚悟の不意打ち戦法とはいえ、あんな雑な戦い方で倒せたのだ。
相手も、大した手練れではなかったはず。
そんな奴が今回の襲撃を計画して、準備したと考えるのは違和感があるな。
「じゃあ、実行犯と計画を練った奴は別ってことか」
「ただの推測ですが、間違ってないと思いますです。それと、襲撃の開始も、上空からの奇襲攻撃だったみたいです」
「あー、それで天井に穴が空いてたのか」
「そうそう、それで真っ先に予兆に気付いたカムはんが、プリムはんを庇って倒れたらしいで?」
「なるほどな~。言動からして忠犬ぽかったし納得だわ。ていうか、あいつってカムって呼ばれてんの?」
確か、教会でもプリムが、そう呼んでたけど。
「そうやね。本人は、プリムはん以外に、そう呼ばれんのは嫌みたいやけど。アバカムって言い辛いやん?」
「分かる」
著作権的な意味でもな。
「そういえば、カムさんは結局、助かったのですます? アインさんも治療を手伝ってましたけど」
「あー、せやね。確かに、ウチも手伝ったけど、ホンマに些細な手助け程度やったで? プリムはんが解呪に専念する間、回復薬を流し込んでただけやし。時間にして1分も掛からんかったわ」
「へー、あいつって治癒師としては、マジで優秀なんだな」
「その通り。少なくとも、回復魔法で彼女に勝てる人は、この街におらんよ」
「はぁ~。俺もプリムを見習って魔法の精進しないとなぁ」
俺が今回の危なっかしい戦いを反省しつつ、そう呟いた瞬間、ミルクの肩がピクンッ、と震えた。
それを真似するかのように、前の席の、もちこもプルンッと震える。
……いや、違う。
これは——、
「そういえば、ミルクもプリムさんから色々と聞きましたです。ハルさん、闇属性の魔法を使ったそうですね?」
ミルクの怒りに反応したのだ。
それに、気付いた瞬間、俺の額からも滝のように汗が流れる。
隣から向けられるジト目がツラい!
「い、いやぁ。あれは、そう、仕方なくというか」
「その後、わざと【暴発】も起こしたとか?」
「えーっと、それも止むに止まれぬ事情があってだな……」
ロクな言い訳が浮かんでこない、俺のポンコツ頭が恨めしい。
「……はぁ。それは、分かってますです。プリムさんを守るためだった、というのは。それに、今回の原因は、ウジウジと落ち込んで、ハルさんから目を離したミルクにもありますです」
しかし、意外なことに、ミルクの怒りは、すぐに萎んだ——、
「そ、そうか。なら、この話は一件落着って事で」
「なので、この手錠は、しばらく継続ですます! よくよく考えてみれば、心配なら四六時中、見張ってれば問題ないと、ミルクは気付きましたです!」
と思ったら、変な方向に結論が振り切れた!?
「いや、待って!? 風呂とかトイレは、どうすんの!?」
理性とか羞恥心とか、その他もろもろの問題が山積みすぎる!
「もう、ミルクは腹を括りましたです! バッチこい、ですます!」
「俺が大丈夫じゃないって! せめて、その2つは勘弁して! 外で見張ってれば逃げ場もないだろ!?」
それに、これはミルクのためでもあるのだ。
女の子が、そんな簡単に肌を晒しちゃいけません!
普段、セクハラしまくっといて、なに言ってんだ、こいつ、と思われるかもしれないが、それとこれとは話が別だ!
「……むぅ、分かりましたです。それで、手を打ちます」
そもそも、そんな簡単に手錠が着脱できないという問題点と、寝る時は、どうするかという問題点。
その二つに気付いて頭を抱えたのは、それから数十分後のことだった。
「はい、今は騎士団のハーモニック支部で取り調べを受けてますです」
「ちなみに、ローブの中身は男やったみたいやね。良かったやん、お兄さん。女の子を傷物にした訳やなくて」
「まったくだ。‘‘責任とれ’’とか言われても困るしな」
朝っぱらから思わぬ黒歴史を生み出してしまった俺だが、あの後は特に何事もなく、二人を起こして一階の食堂へ向かった。
ただ、俺としては、そのまま二人が付いてくると思っていたが、予想に反して、リンネは玄関で別れを告げ、足早に去ってしまった。
何か急ぎの用事でも、あるのだろうか?
でも、それなら何で俺に付き添ってたんだろう?
ちなみに、例の手錠に関しては、丁度その辺りのタイミングで、12時間が経過して充填魔力が尽きたらしく、勝手に外れた。
……ミルクの分は魔力が再充填されてしまったので、そのままだけど。
おかげで、今もミルクは隣の席に座っている。
ついでに言うと、ミルクの向かいがアインで、俺の向かいは、もちこだ。
「それと、今回の襲撃の裏では、実行犯とは別の人物が関わっていると思われますです」
「……別の人物って?」
「詳しくは、なんとも……。ただ、顔と声を隠す周到さや、持っていたアイテムの質。それらが襲撃者本人と上手く噛み合っていないと思いますです」
「そうなんよね~。あんだけ入念な準備して犯行に及んでる割には、プリムはんをいたぶって時間を浪費したり、お兄さんと戦う時も油断して返り討ちに遭ったりして、なんかチグハグや。だいたいの事情はプリムはんから聞いたよ?」
なるほど、その時は必死で気付かなかったけど、言われてみれば確かにな。
自爆覚悟の不意打ち戦法とはいえ、あんな雑な戦い方で倒せたのだ。
相手も、大した手練れではなかったはず。
そんな奴が今回の襲撃を計画して、準備したと考えるのは違和感があるな。
「じゃあ、実行犯と計画を練った奴は別ってことか」
「ただの推測ですが、間違ってないと思いますです。それと、襲撃の開始も、上空からの奇襲攻撃だったみたいです」
「あー、それで天井に穴が空いてたのか」
「そうそう、それで真っ先に予兆に気付いたカムはんが、プリムはんを庇って倒れたらしいで?」
「なるほどな~。言動からして忠犬ぽかったし納得だわ。ていうか、あいつってカムって呼ばれてんの?」
確か、教会でもプリムが、そう呼んでたけど。
「そうやね。本人は、プリムはん以外に、そう呼ばれんのは嫌みたいやけど。アバカムって言い辛いやん?」
「分かる」
著作権的な意味でもな。
「そういえば、カムさんは結局、助かったのですます? アインさんも治療を手伝ってましたけど」
「あー、せやね。確かに、ウチも手伝ったけど、ホンマに些細な手助け程度やったで? プリムはんが解呪に専念する間、回復薬を流し込んでただけやし。時間にして1分も掛からんかったわ」
「へー、あいつって治癒師としては、マジで優秀なんだな」
「その通り。少なくとも、回復魔法で彼女に勝てる人は、この街におらんよ」
「はぁ~。俺もプリムを見習って魔法の精進しないとなぁ」
俺が今回の危なっかしい戦いを反省しつつ、そう呟いた瞬間、ミルクの肩がピクンッ、と震えた。
それを真似するかのように、前の席の、もちこもプルンッと震える。
……いや、違う。
これは——、
「そういえば、ミルクもプリムさんから色々と聞きましたです。ハルさん、闇属性の魔法を使ったそうですね?」
ミルクの怒りに反応したのだ。
それに、気付いた瞬間、俺の額からも滝のように汗が流れる。
隣から向けられるジト目がツラい!
「い、いやぁ。あれは、そう、仕方なくというか」
「その後、わざと【暴発】も起こしたとか?」
「えーっと、それも止むに止まれぬ事情があってだな……」
ロクな言い訳が浮かんでこない、俺のポンコツ頭が恨めしい。
「……はぁ。それは、分かってますです。プリムさんを守るためだった、というのは。それに、今回の原因は、ウジウジと落ち込んで、ハルさんから目を離したミルクにもありますです」
しかし、意外なことに、ミルクの怒りは、すぐに萎んだ——、
「そ、そうか。なら、この話は一件落着って事で」
「なので、この手錠は、しばらく継続ですます! よくよく考えてみれば、心配なら四六時中、見張ってれば問題ないと、ミルクは気付きましたです!」
と思ったら、変な方向に結論が振り切れた!?
「いや、待って!? 風呂とかトイレは、どうすんの!?」
理性とか羞恥心とか、その他もろもろの問題が山積みすぎる!
「もう、ミルクは腹を括りましたです! バッチこい、ですます!」
「俺が大丈夫じゃないって! せめて、その2つは勘弁して! 外で見張ってれば逃げ場もないだろ!?」
それに、これはミルクのためでもあるのだ。
女の子が、そんな簡単に肌を晒しちゃいけません!
普段、セクハラしまくっといて、なに言ってんだ、こいつ、と思われるかもしれないが、それとこれとは話が別だ!
「……むぅ、分かりましたです。それで、手を打ちます」
そもそも、そんな簡単に手錠が着脱できないという問題点と、寝る時は、どうするかという問題点。
その二つに気付いて頭を抱えたのは、それから数十分後のことだった。
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