もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

締まらない決着

「つまり、お前も俺と同じ……。だけど、なんでリンネを?」

俺の問いに、黒ローブは狂ったように笑い出す。

「クハハハハハッ! ナゼ、ダト? グモンダナ。オマエハ、ナニモ、カンジナカッタノカ? オマエモ、オナジ、ナノダロウ? コノクソガミカラ、トクベツナチカラモ、アタエラレズ、ココニツレテ、コラレタ。チュートリアル、トイッテ、サイテイゲンノ、チシキダケ、ツタエラレテナ」

黒ローブの言った事は事実だが、まさか、そんな理由でリンネを恨んでいるというのか?

「それが、どうした? 選択肢は他にも、あったはずだ。この道を選んだのは、お前だろう」

「……フン。ホカノセンタクシ、ダト? タマシイノジュンカンナドト、オオゲサナコトバヲ、ツカッテイルガ、ヨウスルニ、ジコノショウメツダロウ。シニタクナケレバ、コチラヲエラブシカナイ。ダイタイ、イセカイテンセイ、トイエバ、チートガ、オヤクソクダロウ。ナゼ、コンナクロウヲ、シナケレバナラナイ?」

つまり、黒ローブは【自己】の消滅が嫌で、生まれ変わりを拒んだ訳だ。

だけど、記憶と肉体を受け継いで転生してみたら、それはそれで大変だった。

だから、楽な道チートを用意しなかったリンネが悪いと、そう考えたのか。

「……なるほど。よく分かったよ。お前は只の甘ったれだ」

「ナニ?」

「チートが与えられて当たり前とか、ラノベの読みすぎだろ。どんだけ都合の良いこと考えてんだよ。しかも、それが手に入らないからって駄々こねるとか、ガキそのものだな。というか、そんな理由で教会を襲ったのか? ここが、リンネを祭ってるからって?」

「ち、ちょっと、白木さん! そこまで喧嘩腰にならなくても……」

リンネが肩を揺すって止めに入るが、自分でも驚くほど、俺は苛ついていた。

以前のプリムの件といい、どうやら、俺はリンネの事となると、自分が抑えられなくなるらしい。

その理由については、心当たりがないけど。

「ソレガ、ドウシタ」

「だとしたら、いい迷惑だ。騎士団が来る前に、とっとと帰れ。今なら、まだ逃げられるぞ」

「白木さんってばぁ! 聞いてくださいよぉ!」

シッシッ、と虫を追い払うように手を振って、黒ローブを拒絶する。

そんな俺に、リンネが涙目で抱きついて来たが、今は真面目な話をしているので、名残惜しいけど、やんわりと引き剥がした。

「ククク、ズイブント、キガ、オオキクナッテイルナ。サッキマデハ、シヲウケイレタヨウナ、ヨウスダッタガ?」

「さっきは、さっき。今は、今だ。リンネの前でカッコ悪いとこなんて見せられるか」

「し、白木さん……」

何を勘違いしたのか、リンネが頬を赤く染める。

なので、誤解は早めに解いておく事に。

「後で、どんだけ弄られるか分かったもんじゃないからな!」

「そんなことしませんよぉ!」

シリアスな空気も読まず、ギャーギャーと騒ぎ立てるリンネに、黒ローブが冷めた視線を送る。

まぁ、これに関しては黒ローブの気持ちも分からなくないが、そもそもリンネにシリアスは向いてないのだ。

どうか、勘弁してやって欲しい。

「……フン。トンダ、チャバンダナ。ヤルキヲ、トリモドシタ、イマナラ、カテルトデモ?」

「いいや? だけど、覚悟は改めて決まった」

そう言って、俺は黒ローブに向かって駆け出した。

そして、左手で白虹丸はっこうまるを握りしめ、右手を前に掲げる。

「ナニヲシヨウト、オマエノコウゲキナド、ナニヒトツ、トドカナイ」

「ああ、そうだな! だけど、お生憎様あいにくさま! これは、攻撃魔法じゃねぇよ! ‘‘ウィンドレ’’! 【暴発オーバーロード】!」

「……キサマ、ショウキカ!?」

黒ローブが纏う竜巻の鎧に、俺の右手を叩き付ける。

それと同時に魔法が発動。

巨大な空気の塊が一瞬で膨張し、気流を掻き乱す。

その結果——、

「きゃう!?」

「このっ!?」

「グハッ!?」

「がはっ!?」

吹き荒れた暴風が教会内を蹂躙した。

リンネは間抜けな声を上げつつ椅子の影に身を屈め、プリムはアバカムを庇うように覆い被さる。

そして、俺と黒ローブは呆気なく風に煽られ、壁に叩き付けられた——いや、それどころか突き破っている。

ボロい木造の教会だったのが、この場合は幸いなのか、それとも不幸なのか。

ともかく、俺達は外の芝生に放り出され、まんまと意識を失った。

「ハルさん!」

「お兄さん!」

最後の瞬間、ミルクたちの声を聞いたのは、気のせいだろうか。

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