もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

黒いローブ

「プリムッ!」

「貴方は……白木 春! 何故ここに!?」

開け放たれている教会の扉をくぐって、中へ踏み込んだ俺は、倒れ伏したアバカムと、彼を治療するプリムを目撃した。

悪い予想が当たったと言うべきか、やはりプリムは、この場に来ていたのだ。

しかし、孤児院で育てられているという子供達は見当たらない。

もう逃げ出したのか、最初から居なかったのか、あるいは、どこかで捕まっているのか。

現状では判断が付かない。

「ダレダ、オマエハ?」

そして、この場には俺達の他に、もう1人いる。

そいつは、黒いローブで全身を覆っており、声もアイテムか何かで偽装しているようだ。

そのせいで、歳も、種族も、性別も、何もかも不明。

唯一、見た目から分かるのは、杖を得物とする魔法使いだ、という事か。

「俺は……そいつらの知り合いだ」

別に俺達は友人関係という訳でもないし、『実はミルクという共通の知り合いがプリムと友達で……』などと、ローブの男に詳しく説明する義理もない。

そんな事を考えて、思わず返答が曖昧になったものの、ローブの男は興味なさそうに「そうか」と、呟いただけだった。

「ちょっと、無視しないでくれるかしら? ただの‘‘知り合い’’の貴方が、このタイミングで、何をしに来たのか聞いているのだけど?」

アバカムの治療を続けつつ、やたらと‘‘知り合い’’を強調して、こちらを睨み付けるプリム。

いったい何が気に触ったのか不明だが、こちらの答えは決まっている。

「助けに来た」

「……そんなこと、頼んだ覚えはないわ」

一瞬、驚いたように目を見開いたプリムだが、すぐに冷たいポーカーフェイスに戻ってしまう。

プリムの、その表情を見て、せっかく気分がスカッとしたのに残念だ。

「俺も誰かに頼まれた覚えは無いな。俺は俺自身のエゴで、ここに来た。だいたい、お前、そんな強がってる場合かよ。全身ボロボロじゃねぇか」

治療で手が塞がっている所を狙い撃ちにされたのか、プリムのシスター服は、あちこち破損していた。

ただでさえ露出が多めな衣装なのに、普段より更に肌面積が増えている。

胸元なんて、今にも溢れそうだ。

体に対するダメージはケルンに蓄積されて、傷が残らないため判断しづらいが、そうとう消耗しているんじゃないか?

アバカムも、恐らく生命力のステータスを削られ過ぎて、意識を失ってるんだろう。

ちなみに、生命力とはゲームで言うHPみたいなもので、残り2割を切る頃には意識が朦朧とし、無くなれば死に至る。

「……チッ。これは借り一つよ。後で清算するから覚えときなさい」

「はいはい」

こんな脅し文句は初めて聞いたぞ。

なんで、借りてる自覚があるのに、こんな偉そうなんだ?

まぁ、しおらしくされるよりは、プリムらしくて良いか。

この戦いが終わったら、せいぜい遠慮なく取り立ててやるとしよう。

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