もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
魔の法則
「それで、まずは確認なのですが、白木さんは基礎魔法の‘‘ウォルタ’’を使用して倒れたんですよね?」
「ああ、間違いない。なんか滅多にない事例みたいで、二人とも驚いてたな」
リンネの問いに頷くと、彼女は顎に人差し指を当てて考え込む。
若干、あざとい仕草だが、本人はいたって真面目な様子だ。
これが俺の担当リンネなら、それでも、からかっただろうけど、今は他所様のリンネなので、自重しておく。
……なんとなく寂しいな。
「うーん、高位魔法であれば、そういうケースも珍しく無いんですけどねぇ。単に魔力を使い過ぎたとか、【持っていかれた】とか、あるいは【呑まれた】とか」
「魔力の使い過ぎは分かるとして、【持っていかれる】とか、【呑まれる】って何のことだ?」
俺の質問を受けたリンネが、隣のキースに視線を送る。
どうやら、‘‘代わりに答えてみて下さい’’という意図らしい。
普段、教えている事が身に付いているか、抜き打ちテストという訳だな。
「魔法とは、文字通り、魔の法則だと言われているんだ。魔法を使う者は魔法に魅了される、とも言われるね。昔は魔法を使うだけで身を滅ぼす、なんて迷信もあったらしい」
「あながち、間違いでもないんじゃないか? 実際、昨日の俺はミルクに止めて貰わなかったら死んでただろうし」
「まぁ、そういう側面があるのは否定しない。実際、魔法を使う時は勝手に魔力を徴収されるからね。そして、本人が意識的に魔力を留めないと際限なく徴収される。これが俗に【持っていかれる】と言われる現象だ。ちなみに、これが進行すると魔法の暴発や術者の死亡にも繋がる」
「なるほど。つまり電動の空気入れで風船を膨らませてる時に、うっかりスイッチを切り忘れて、破裂しちゃうような感じか」
「前半は何を言っているのか分からないが、風船に例えるのは言い得て妙だね。そして、似て非なるケースがもう一つ。それが、【呑まれる】と呼ばれる現象だ。今回、君が経験したのはこちらで、魔法に魅了されると言われる由縁でもある。具体的には、魔法を使った際に全能感に囚われ、無制限に魔力を注いでしまう現象だ。いや、注ぐというより【捧げる】といった方が表現として適切かな?」
「……確かに、全てを委ねて捧げたくなるような感覚だったな」
「やはり、そうか。基本的には魔法力の高い人物や、高位魔法を使う者が経験する現象なんだが……」
「白木さんが使ったのは基礎魔法。そして、魔法力が特別に高い訳でもない。そうですね?」
リンネがキースの話を引き継ぎ、そう尋ねてきた。
「ああ。一応、確認するか?」
俺の確認に、リンネが苦い表情を見せる。
「……あの、白木さん。多分、あなたを担当したリンネも説明したと思うのですが、あまりステータスを公開するのは……」
「あー、それなら知ってるけど、リンネなら良いかなって。女神だし、仕事に対しては誠実だし、信頼してるからさ。さすがにキースは、まだ無理だけど」
「失礼だな、君は! まぁ、警戒心を手放さないのは大事だが……って、どうかしたのか、リンネ?」
「い、いいえ! なんでもないです!」
何故か顔を赤く染めているリンネが、慌てて取り繕うような仕草を見せる。
その挙動不審な態度に、俺は思わずキースと顔を見合わせた。
「……? なぁ、キース。リンネはどうしたんだ?」
「さぁ……僕にも分からない」
あれ? でも、なんか前に似たような事が、あったような……。
「そ、それはそうと! 今回の状況は不自然です! 何か特別な原因があると見るべきです!」
何故か顔を真っ赤にしているリンネが、すごい勢いでまくし立てる。
「おっ、おう……。そうだな。でも、特別な原因って言われても、心当たりが……」
その熱量に押されつつ、なんとか考えを巡らせるものの、特に思い当たることはない。
が、そんな俺とは対照的に、リンネは確信を抱いたような顔つきで、口を開く。
「……私の推測では、その木刀が関係していると思われます」
……えっ?
「ああ、間違いない。なんか滅多にない事例みたいで、二人とも驚いてたな」
リンネの問いに頷くと、彼女は顎に人差し指を当てて考え込む。
若干、あざとい仕草だが、本人はいたって真面目な様子だ。
これが俺の担当リンネなら、それでも、からかっただろうけど、今は他所様のリンネなので、自重しておく。
……なんとなく寂しいな。
「うーん、高位魔法であれば、そういうケースも珍しく無いんですけどねぇ。単に魔力を使い過ぎたとか、【持っていかれた】とか、あるいは【呑まれた】とか」
「魔力の使い過ぎは分かるとして、【持っていかれる】とか、【呑まれる】って何のことだ?」
俺の質問を受けたリンネが、隣のキースに視線を送る。
どうやら、‘‘代わりに答えてみて下さい’’という意図らしい。
普段、教えている事が身に付いているか、抜き打ちテストという訳だな。
「魔法とは、文字通り、魔の法則だと言われているんだ。魔法を使う者は魔法に魅了される、とも言われるね。昔は魔法を使うだけで身を滅ぼす、なんて迷信もあったらしい」
「あながち、間違いでもないんじゃないか? 実際、昨日の俺はミルクに止めて貰わなかったら死んでただろうし」
「まぁ、そういう側面があるのは否定しない。実際、魔法を使う時は勝手に魔力を徴収されるからね。そして、本人が意識的に魔力を留めないと際限なく徴収される。これが俗に【持っていかれる】と言われる現象だ。ちなみに、これが進行すると魔法の暴発や術者の死亡にも繋がる」
「なるほど。つまり電動の空気入れで風船を膨らませてる時に、うっかりスイッチを切り忘れて、破裂しちゃうような感じか」
「前半は何を言っているのか分からないが、風船に例えるのは言い得て妙だね。そして、似て非なるケースがもう一つ。それが、【呑まれる】と呼ばれる現象だ。今回、君が経験したのはこちらで、魔法に魅了されると言われる由縁でもある。具体的には、魔法を使った際に全能感に囚われ、無制限に魔力を注いでしまう現象だ。いや、注ぐというより【捧げる】といった方が表現として適切かな?」
「……確かに、全てを委ねて捧げたくなるような感覚だったな」
「やはり、そうか。基本的には魔法力の高い人物や、高位魔法を使う者が経験する現象なんだが……」
「白木さんが使ったのは基礎魔法。そして、魔法力が特別に高い訳でもない。そうですね?」
リンネがキースの話を引き継ぎ、そう尋ねてきた。
「ああ。一応、確認するか?」
俺の確認に、リンネが苦い表情を見せる。
「……あの、白木さん。多分、あなたを担当したリンネも説明したと思うのですが、あまりステータスを公開するのは……」
「あー、それなら知ってるけど、リンネなら良いかなって。女神だし、仕事に対しては誠実だし、信頼してるからさ。さすがにキースは、まだ無理だけど」
「失礼だな、君は! まぁ、警戒心を手放さないのは大事だが……って、どうかしたのか、リンネ?」
「い、いいえ! なんでもないです!」
何故か顔を赤く染めているリンネが、慌てて取り繕うような仕草を見せる。
その挙動不審な態度に、俺は思わずキースと顔を見合わせた。
「……? なぁ、キース。リンネはどうしたんだ?」
「さぁ……僕にも分からない」
あれ? でも、なんか前に似たような事が、あったような……。
「そ、それはそうと! 今回の状況は不自然です! 何か特別な原因があると見るべきです!」
何故か顔を真っ赤にしているリンネが、すごい勢いでまくし立てる。
「おっ、おう……。そうだな。でも、特別な原因って言われても、心当たりが……」
その熱量に押されつつ、なんとか考えを巡らせるものの、特に思い当たることはない。
が、そんな俺とは対照的に、リンネは確信を抱いたような顔つきで、口を開く。
「……私の推測では、その木刀が関係していると思われます」
……えっ?
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