もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
魔法の暴発
「……ふぅ、こんなもんかな」
「お疲れさん~」
「お疲れさま、ですます! 使い心地はどうでした?」
白虹丸を手に入れた俺は、ミルクとアインの監督のもと、草原のモンスター相手に試し切りを決行した。
と言っても、俺が戦い慣れていないせいで、早々にピンチに陥り、ミルクが敵を吹っ飛ばす……という情けない展開が続いたけど。
結果的に、俺が討伐できたモンスターは0。
まぁ、今回は白虹丸の使い勝手を確かめるのが目的なので、気にしないでおくか。
既に夕日が傾いているので、あとは魔法を触りだけ教わって、今日の訓練を終えるとしよう。
「木刀は向こうでも使った事があるから扱いやすかったよ。それに、全力で叩き付けても、折れるどころか傷一つ付かないし。話には聞いてたけど実際、凄い耐久力だな」
「それは良かったですます! スズリくんも、きっと喜びますです」
木刀を振っていると、修学旅行で京都に行った事を思い出した。
あの時は楽しかったなぁ。
その日、土産物屋で木刀を買った男子全員が参加したチャンバラ大会。
そこで、いくつかの幸運と偶然が重なり、俺は帰宅部リーグで優勝を果たしたのだ。
まぁ、その後、先生にバレて、参加者全員が説教を食らったけど……。
あの時の、呆れかえった女子達の視線は今でも覚えている。
「白虹樹は世界一、丈夫な樹とも言われてるんよ。幻素の吸収量と変換効率が他とは段違いで、樹齢も計測不可なんやて」
「そりゃ凄いけど、だったら木刀に加工するより、魔法の杖とか作った方が良かったんじゃ?」
「そうなんよ。こんな貴重な素材を使うて、なんで木刀なんか作ったんやろね? ウチと趣味が合いそうや♪」
「あー、お前も、そっち側の人間だったな……」
「類は友を呼ぶと言いますし、いつか会えるかもしれませんです」
俺とミルクがジト目を向けるが、アインに気にした様子はない。
「その時は、ぜひ精霊水でも飲みつつ、語り明かしたいわぁ」
むしろ胸を張って、そんな未来を想像していた。
「まっ、本当に機会があれば、その時は俺も混ぜてくれよ。お礼も言いたいしな」
「スズリくんも呼べば、良い勉強になると思いますですっ」
ミルクが手を上げて、ぴょこぴょこ飛び跳ねながら、追加の意見を主張した。
ついでに足元では、もちこが賛成の意を示すように、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
「うんうん。楽しい話は賑やかな方が盛り上がるもんなぁ。……さーて、そんな未来を期待しつつ、そろそろ魔法の訓練に移ろか? ゆーても、もう日が暮れるし、簡単に試し打ちして終わりやろけど」
「あぁ、よろしく頼む」
「ほんなら、まずは水の基礎魔法、‘‘ウォルタ’’から試そか。暴発した時に一番、危険が少ないしな~」
「その暴発って、具体的に何が起きるんだ?」
「魔法によって異なるけど、だいたい制御が利かんようになるか、過剰な効果で使用者に害を与える感じやね。‘‘ウォルタ’’の場合は水がドバッ! って出て、周りが水浸しになるだけやから安全よ? ちなみに、基礎魔法の中で暴発時の危険性が一番に高いのは、闇属性の、‘‘ダークネス’’。これは、ホンマに冗談抜きで危険やから、他の属性をまともに使えるまで禁止やで?」
念を押すように、視線でも強く訴えてくるアイン。
その、あまりの真剣さに、何が起きるか気になってしまう。
「……もし、うっかり使ったら?」
「消える」
「えっ?」
しかし、回答が端的すぎて、その意味が頭に入ってこない。
そして、アインは続けて口を開く。
「全身が消える。核すら残さずに綺麗さっぱり消滅や。そもそも‘‘ダークネス’’は手の平に闇の球体を生み出す魔法なんよ。ほんで、その球体は魔力を吸収する性質がある。まぁ、そうは言うても基礎魔法の出力やから、そこまで大層な効果はあらへん。ただ、これが暴発すると魔力じゃなくて幻素を吸収するようになる。それも、使用者まで巻き込んでな。知っての通り幻素は万物の元やから、暴発した‘‘ダークネス’’は全てを飲み込む冥府の入口って訳やね」
「‘‘ダークネス’’が生まれるのは手の平。つまり、使用者が真っ先に飲み込まれるってことか……」
「そーいうこと。ま~、ゼロ距離で使えば1人くらいは道連れに出来るかもしれんね。その後は確実に死ぬけど」
重くなった雰囲気を和らげるためか、おどけて見せるアインだが、その眼だけは笑ってない。
まぁ、仲間の命に関わることだし当然か。
「……分かった。他の魔法を扱えるようになるまでは絶対に使わないよ」
「約束ですます!」
「はいはい。そんな危ない真似は俺だってゴメンだよ」
どうやら、こちらの世界にも指切りの文化があるらしく、ミルクにそれを強制された。
妹も何かあると、すぐに指切りしたがったよなぁ。
……ところで、指切りって、字面だけ見るとメチャクチャ怖いんだけど、他にまともな名前の候補は無かったのだろうか……。
「お疲れさん~」
「お疲れさま、ですます! 使い心地はどうでした?」
白虹丸を手に入れた俺は、ミルクとアインの監督のもと、草原のモンスター相手に試し切りを決行した。
と言っても、俺が戦い慣れていないせいで、早々にピンチに陥り、ミルクが敵を吹っ飛ばす……という情けない展開が続いたけど。
結果的に、俺が討伐できたモンスターは0。
まぁ、今回は白虹丸の使い勝手を確かめるのが目的なので、気にしないでおくか。
既に夕日が傾いているので、あとは魔法を触りだけ教わって、今日の訓練を終えるとしよう。
「木刀は向こうでも使った事があるから扱いやすかったよ。それに、全力で叩き付けても、折れるどころか傷一つ付かないし。話には聞いてたけど実際、凄い耐久力だな」
「それは良かったですます! スズリくんも、きっと喜びますです」
木刀を振っていると、修学旅行で京都に行った事を思い出した。
あの時は楽しかったなぁ。
その日、土産物屋で木刀を買った男子全員が参加したチャンバラ大会。
そこで、いくつかの幸運と偶然が重なり、俺は帰宅部リーグで優勝を果たしたのだ。
まぁ、その後、先生にバレて、参加者全員が説教を食らったけど……。
あの時の、呆れかえった女子達の視線は今でも覚えている。
「白虹樹は世界一、丈夫な樹とも言われてるんよ。幻素の吸収量と変換効率が他とは段違いで、樹齢も計測不可なんやて」
「そりゃ凄いけど、だったら木刀に加工するより、魔法の杖とか作った方が良かったんじゃ?」
「そうなんよ。こんな貴重な素材を使うて、なんで木刀なんか作ったんやろね? ウチと趣味が合いそうや♪」
「あー、お前も、そっち側の人間だったな……」
「類は友を呼ぶと言いますし、いつか会えるかもしれませんです」
俺とミルクがジト目を向けるが、アインに気にした様子はない。
「その時は、ぜひ精霊水でも飲みつつ、語り明かしたいわぁ」
むしろ胸を張って、そんな未来を想像していた。
「まっ、本当に機会があれば、その時は俺も混ぜてくれよ。お礼も言いたいしな」
「スズリくんも呼べば、良い勉強になると思いますですっ」
ミルクが手を上げて、ぴょこぴょこ飛び跳ねながら、追加の意見を主張した。
ついでに足元では、もちこが賛成の意を示すように、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
「うんうん。楽しい話は賑やかな方が盛り上がるもんなぁ。……さーて、そんな未来を期待しつつ、そろそろ魔法の訓練に移ろか? ゆーても、もう日が暮れるし、簡単に試し打ちして終わりやろけど」
「あぁ、よろしく頼む」
「ほんなら、まずは水の基礎魔法、‘‘ウォルタ’’から試そか。暴発した時に一番、危険が少ないしな~」
「その暴発って、具体的に何が起きるんだ?」
「魔法によって異なるけど、だいたい制御が利かんようになるか、過剰な効果で使用者に害を与える感じやね。‘‘ウォルタ’’の場合は水がドバッ! って出て、周りが水浸しになるだけやから安全よ? ちなみに、基礎魔法の中で暴発時の危険性が一番に高いのは、闇属性の、‘‘ダークネス’’。これは、ホンマに冗談抜きで危険やから、他の属性をまともに使えるまで禁止やで?」
念を押すように、視線でも強く訴えてくるアイン。
その、あまりの真剣さに、何が起きるか気になってしまう。
「……もし、うっかり使ったら?」
「消える」
「えっ?」
しかし、回答が端的すぎて、その意味が頭に入ってこない。
そして、アインは続けて口を開く。
「全身が消える。核すら残さずに綺麗さっぱり消滅や。そもそも‘‘ダークネス’’は手の平に闇の球体を生み出す魔法なんよ。ほんで、その球体は魔力を吸収する性質がある。まぁ、そうは言うても基礎魔法の出力やから、そこまで大層な効果はあらへん。ただ、これが暴発すると魔力じゃなくて幻素を吸収するようになる。それも、使用者まで巻き込んでな。知っての通り幻素は万物の元やから、暴発した‘‘ダークネス’’は全てを飲み込む冥府の入口って訳やね」
「‘‘ダークネス’’が生まれるのは手の平。つまり、使用者が真っ先に飲み込まれるってことか……」
「そーいうこと。ま~、ゼロ距離で使えば1人くらいは道連れに出来るかもしれんね。その後は確実に死ぬけど」
重くなった雰囲気を和らげるためか、おどけて見せるアインだが、その眼だけは笑ってない。
まぁ、仲間の命に関わることだし当然か。
「……分かった。他の魔法を扱えるようになるまでは絶対に使わないよ」
「約束ですます!」
「はいはい。そんな危ない真似は俺だってゴメンだよ」
どうやら、こちらの世界にも指切りの文化があるらしく、ミルクにそれを強制された。
妹も何かあると、すぐに指切りしたがったよなぁ。
……ところで、指切りって、字面だけ見るとメチャクチャ怖いんだけど、他にまともな名前の候補は無かったのだろうか……。
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