もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
反省と歓声
「では、ハルさん。反省会ということで、正座ですます」
「……はい」
翌日、ミルクに連れられてギルドのBARにやって来た俺は、テーブル席で丸太のような椅子に正座させられていた。
当然、無茶苦茶に痛い。
が、やらかした自覚とミルクの剣幕から嫌だとも言えず、大人しく痛みに耐える。
ちなみに、反省会が今日になった理由は一晩、冷静になる時間が必要だと思ったからだそう。
細やかな気遣いに、さらに申し訳なくなる。
「まったくもう、ハルさんはどうしようもない、おバカさんですます。何でスカウトに行ったのに、出会う前より険悪な関係になって戻ってくる羽目になったか、分かってますですか?」
「俺が過剰に感情的になって、言い争いになったからです……」
「その通りですます。本当、なんであんなに怒ってましたです?」
「……それは言えない」
「はぁ……」
呆れたように深いため息を吐き、腕を組んで、どうしたものかと考え込んでいる様子のミルク。
彼女の怒りも当然だろう。
せっかく頼まれて仲介役を買って出たのに、交渉の場を台無しにされて、面目だって丸つぶれだ。
今後、彼女がプリムと関わる際にも、気まずい空気になるのは想像に難くない。
にもかかわらず、当の元凶は詳しい事情の説明すらしない。
俺がミルクの立場なら、呆れ果てて投げ出しているかもしれない。
とはいえ、『実は俺たちと別れたリンネは本物の女神様で、プリムの態度から彼女を馬鹿にされたように感じたんだ』などと真実をぶっちゃける事は出来ない。
信じてもらえない恐れがある上に、信じてもらっても問題が発生する。
ミルクが軽々しく周りに言いふらすとは思えないが、リンネの秘密を俺が勝手に暴露する訳にはいかなかった。
「あれは、ハルさんにとって、どうしても譲れない事だったのですます?」
やがて、考えがまとまったのか、真剣な表情で俺に問いかけるミルク。
俺は、それに対して誠実な答えを返すべく、一度目をつむって自問自答する。
結論はすぐに出た。
「あぁ、言い方は悪かったと思ってるし、反省もしてるけど、口にしたことは紛れもない俺の本心で、どうしても譲れないことだった」
眼を見開き、真っ直ぐミルクと視線を交わして、思いをぶつける。
たとえ過去に戻って、もう一度あの場面をやり直したとしても、俺とプリムは対立するだろう。
もちろん、それが分かっているので、もう俺からプリムに関わることはないだろうが。
「…………はぁぁぁ」
先ほどよりも長い、ミルクのため息。
これは、本格的に愛想を尽かされただろうか?
ネガティブな想像が頭の中を駆け巡り、手に汗を握って俯いていると、ふいにミルクの声が届いた。
「だったら、もっと胸を張って堂々とするですます。ミルクの大好きな、お二人が仲違いしたのは残念ですが、誰にだって譲れない事はありますです。今回はそれが運悪くぶつかっただけ。そんなことで何時までも目くじら立てたりしませんよ」
顔を上げて見たミルクの表情は、呆れてはいても確かに笑っていた。
その笑顔を見ていると、見捨てられずに済んだ安堵とともに、ミルクの言葉の一部が心に押し寄せてくる。
『大好き』
歳の近い異性、それも美少女から放たれた、その言葉は俺の胸をズキュンッ! と撃ち抜いた。
「もちこ! どうしよう!? ミルクに大好きって告白されちまった! 俺はどうしたら!?」
「…………?(ぷるぷる)」
「は、話をちゃんと聞いてたですます!? 私が言った『大好き』は、あくまでもプリムさんとハルさん、二人に対する親愛の『大好き』であって、決して男性としてハルさんが大好きという――」
「男性としてハルさんが大好きって言われたぁぁぁ!?」
「話は最後まで聞くですますっ!」
取り乱す俺。
震える、もちこ。
叫びながら俺の胸ぐらを掴んでくるミルク。
その光景は、BARの女マスターが呆れて介入してくるまで無限ループしていた。
……こっちの世界に来てから、声帯の限界を試すような絶叫が増えた気がするのは気のせいだろうか?
「……はい」
翌日、ミルクに連れられてギルドのBARにやって来た俺は、テーブル席で丸太のような椅子に正座させられていた。
当然、無茶苦茶に痛い。
が、やらかした自覚とミルクの剣幕から嫌だとも言えず、大人しく痛みに耐える。
ちなみに、反省会が今日になった理由は一晩、冷静になる時間が必要だと思ったからだそう。
細やかな気遣いに、さらに申し訳なくなる。
「まったくもう、ハルさんはどうしようもない、おバカさんですます。何でスカウトに行ったのに、出会う前より険悪な関係になって戻ってくる羽目になったか、分かってますですか?」
「俺が過剰に感情的になって、言い争いになったからです……」
「その通りですます。本当、なんであんなに怒ってましたです?」
「……それは言えない」
「はぁ……」
呆れたように深いため息を吐き、腕を組んで、どうしたものかと考え込んでいる様子のミルク。
彼女の怒りも当然だろう。
せっかく頼まれて仲介役を買って出たのに、交渉の場を台無しにされて、面目だって丸つぶれだ。
今後、彼女がプリムと関わる際にも、気まずい空気になるのは想像に難くない。
にもかかわらず、当の元凶は詳しい事情の説明すらしない。
俺がミルクの立場なら、呆れ果てて投げ出しているかもしれない。
とはいえ、『実は俺たちと別れたリンネは本物の女神様で、プリムの態度から彼女を馬鹿にされたように感じたんだ』などと真実をぶっちゃける事は出来ない。
信じてもらえない恐れがある上に、信じてもらっても問題が発生する。
ミルクが軽々しく周りに言いふらすとは思えないが、リンネの秘密を俺が勝手に暴露する訳にはいかなかった。
「あれは、ハルさんにとって、どうしても譲れない事だったのですます?」
やがて、考えがまとまったのか、真剣な表情で俺に問いかけるミルク。
俺は、それに対して誠実な答えを返すべく、一度目をつむって自問自答する。
結論はすぐに出た。
「あぁ、言い方は悪かったと思ってるし、反省もしてるけど、口にしたことは紛れもない俺の本心で、どうしても譲れないことだった」
眼を見開き、真っ直ぐミルクと視線を交わして、思いをぶつける。
たとえ過去に戻って、もう一度あの場面をやり直したとしても、俺とプリムは対立するだろう。
もちろん、それが分かっているので、もう俺からプリムに関わることはないだろうが。
「…………はぁぁぁ」
先ほどよりも長い、ミルクのため息。
これは、本格的に愛想を尽かされただろうか?
ネガティブな想像が頭の中を駆け巡り、手に汗を握って俯いていると、ふいにミルクの声が届いた。
「だったら、もっと胸を張って堂々とするですます。ミルクの大好きな、お二人が仲違いしたのは残念ですが、誰にだって譲れない事はありますです。今回はそれが運悪くぶつかっただけ。そんなことで何時までも目くじら立てたりしませんよ」
顔を上げて見たミルクの表情は、呆れてはいても確かに笑っていた。
その笑顔を見ていると、見捨てられずに済んだ安堵とともに、ミルクの言葉の一部が心に押し寄せてくる。
『大好き』
歳の近い異性、それも美少女から放たれた、その言葉は俺の胸をズキュンッ! と撃ち抜いた。
「もちこ! どうしよう!? ミルクに大好きって告白されちまった! 俺はどうしたら!?」
「…………?(ぷるぷる)」
「は、話をちゃんと聞いてたですます!? 私が言った『大好き』は、あくまでもプリムさんとハルさん、二人に対する親愛の『大好き』であって、決して男性としてハルさんが大好きという――」
「男性としてハルさんが大好きって言われたぁぁぁ!?」
「話は最後まで聞くですますっ!」
取り乱す俺。
震える、もちこ。
叫びながら俺の胸ぐらを掴んでくるミルク。
その光景は、BARの女マスターが呆れて介入してくるまで無限ループしていた。
……こっちの世界に来てから、声帯の限界を試すような絶叫が増えた気がするのは気のせいだろうか?
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