もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
妹みたいな女の子に守ってもらおうと思う
「おい兄ちゃん! そろそろ指定されたモンスターの住みかに着くからな。気を引き締めろよ!」
「あぁ、分かった!」
ミルク達と共に受けたクエストを遂行すべく、俺達は街から少し離れた森の奥、とある洞窟の前まで来ていた。
ちなみに、タメ口なのは、ここまで徒歩で来る道中に、ミルクの提案で、お互い敬語は無しにしようという話になったからだ。
命の危険がある場面で、余計な遠慮が発生しないように、普段から対等な意識でいたいらしい。
俺的に、ミルクはともかく他の冒険者のオヤジ達は歳もキャリアも上なため気が引けるのだが、そういう意識をなくすためと言われては頷くしかない。
「いやぁ、皆さんに誘われてよかったです。私と白木さん二人だと今頃どうなっていたか分かりません」
「気にする事ないですます。困った時はお互い様だと思いますです」
「あぁっ、ミルクちゃん、可愛いですぅ~」
そのわりに、ミルクやリンネが敬語を使っててもなにも言われないのは何故なのか疑問だけど。
人望の差だろうか?
あと、リンネは知り合いの初心者冒険者で、近々別のパーティーと共に別の街へ行く予定と説明した。
これ以上ないほど、ふわっとした話で、ほとんど説明になっていないが、まさか真実を告げる訳にもいかない。
幸い、ミルク達は明かせない事情があるのを察してくれて、このいい加減な話に突っ込まず、流してくれた。
本当に気の良いパーティーで、俺の実力が足りていたなら、このまま正式に加入したいくらいだ。
まぁ、現状では差が開きすぎていて、夢物語にすぎないけど。
「さて、じゃあ偵察を頼む」
「おう」
スキンヘッドのオヤジの指示で、メンバーの1人が洞窟の中へと向かった。
次の瞬間、今まで視界にいたはずの大男の姿が、ふっと消える。
「っ!? これが、スキルの力か?」
足音を殺すとか、風景に紛れるとか、そんなチャチなレベルではなく、本当に存在を感じ取れなくなった。
もし敵のモンスターが、こんな能力を持っていたらと思うとゾッとする。
下手をすれば危険を感じる暇もなく死んでいるかもしれない。
悪寒が体を突き抜け、無意識のうちに背筋が震えた。
「だっはっは! すげぇだろ、あいつの【隠形】は。ハーモニックにいる冒険者で、あいつと肩を並べる【盗賊】スキルの持ち主は、そうはいねぇ」
ハーモニックとは、俺達が出会った、あの街の名前だ。
神話の魔法言語で調和を意味するのだとか。
「何で、こんな実力のパーティーが、あの街で活動してるんだ? もっと中央の街にいった方が稼げるんじゃ……」
「……ふぅむ、そいつは簡単には言えねぇな。いつか、兄ちゃんが俺達と肩を並べられるようになったら話してやるさ。ま、そのためにも、今は生き残ることに集中しな。ミルクもリンネの嬢ちゃんも、纏めて守って見せるからよ」
ニヤリ、と実に男臭い不敵な笑みを浮かべるダディ。
日本にいた頃なら鬱陶しく感じたかもしれないが、命の危険が付きまとう、この世界では実に頼もしく感じる。
おそらく、若い頃は相当モテたのではないだろうか。
その時は髪もフサフサだったろうし。
「むぅ、だからミルクは、もう子供じゃないですます。これでも立派な重戦士(タンク)として活躍してると思いますです」
と、守られる立場が不服なのか、近くで話を聞いていたミルクが唇を尖らせる。
まぁ、職業的に皆を守るのはミルクの役割なのかも知れないが、こんな小さな女の子がモンスターの攻撃を引き付けてたら、そりゃあ、なあ?
とはいえ、ミルクの表情には不満だけでなく、どこか寂しげな色も混じっており、妹に似た何かを感じた俺は無意識に口を開いていた。
「なら、ミルクは俺を守ってくれよ。この中では間違いなく、一番弱っちいからさ。頼りにしてるぞ」
「白木さん……はい、ですますっ! ミルクに任せておくです!」
勢いよく手を挙げて、嬉しそうに、ピョコピョコと跳ねるミルク。
その足元では競うように、もちこがぴょんぴょんと跳ねる。
周囲に警戒しつつ、そんな感じで適度に雑談を交わしていると、いつの間にか体の震えは収まっていた。
やがて、斥候役として先行していたメンバーが戻ってくると、報告を受けたダディが静かに号令をかける。
「よし、中の様子も問題なし。打ち合わせ通り、それぞれの役割をしっかり果たせ。女神の加護を」
「「女神の加護を」」
道中で習った、冒険者の合言葉を口にして、俺達は洞窟へと足を踏み入れる。
きっと、大丈夫。
今の俺達には本物の女神が付いているんだから。
「おや? ミルクちゃんって意外と……」
「ひゃう!? そ、そこはダメですますっ」
呑気に女の子の体をまさぐって、セクハラかましている能天気な女神だけどな!
「あぁ、分かった!」
ミルク達と共に受けたクエストを遂行すべく、俺達は街から少し離れた森の奥、とある洞窟の前まで来ていた。
ちなみに、タメ口なのは、ここまで徒歩で来る道中に、ミルクの提案で、お互い敬語は無しにしようという話になったからだ。
命の危険がある場面で、余計な遠慮が発生しないように、普段から対等な意識でいたいらしい。
俺的に、ミルクはともかく他の冒険者のオヤジ達は歳もキャリアも上なため気が引けるのだが、そういう意識をなくすためと言われては頷くしかない。
「いやぁ、皆さんに誘われてよかったです。私と白木さん二人だと今頃どうなっていたか分かりません」
「気にする事ないですます。困った時はお互い様だと思いますです」
「あぁっ、ミルクちゃん、可愛いですぅ~」
そのわりに、ミルクやリンネが敬語を使っててもなにも言われないのは何故なのか疑問だけど。
人望の差だろうか?
あと、リンネは知り合いの初心者冒険者で、近々別のパーティーと共に別の街へ行く予定と説明した。
これ以上ないほど、ふわっとした話で、ほとんど説明になっていないが、まさか真実を告げる訳にもいかない。
幸い、ミルク達は明かせない事情があるのを察してくれて、このいい加減な話に突っ込まず、流してくれた。
本当に気の良いパーティーで、俺の実力が足りていたなら、このまま正式に加入したいくらいだ。
まぁ、現状では差が開きすぎていて、夢物語にすぎないけど。
「さて、じゃあ偵察を頼む」
「おう」
スキンヘッドのオヤジの指示で、メンバーの1人が洞窟の中へと向かった。
次の瞬間、今まで視界にいたはずの大男の姿が、ふっと消える。
「っ!? これが、スキルの力か?」
足音を殺すとか、風景に紛れるとか、そんなチャチなレベルではなく、本当に存在を感じ取れなくなった。
もし敵のモンスターが、こんな能力を持っていたらと思うとゾッとする。
下手をすれば危険を感じる暇もなく死んでいるかもしれない。
悪寒が体を突き抜け、無意識のうちに背筋が震えた。
「だっはっは! すげぇだろ、あいつの【隠形】は。ハーモニックにいる冒険者で、あいつと肩を並べる【盗賊】スキルの持ち主は、そうはいねぇ」
ハーモニックとは、俺達が出会った、あの街の名前だ。
神話の魔法言語で調和を意味するのだとか。
「何で、こんな実力のパーティーが、あの街で活動してるんだ? もっと中央の街にいった方が稼げるんじゃ……」
「……ふぅむ、そいつは簡単には言えねぇな。いつか、兄ちゃんが俺達と肩を並べられるようになったら話してやるさ。ま、そのためにも、今は生き残ることに集中しな。ミルクもリンネの嬢ちゃんも、纏めて守って見せるからよ」
ニヤリ、と実に男臭い不敵な笑みを浮かべるダディ。
日本にいた頃なら鬱陶しく感じたかもしれないが、命の危険が付きまとう、この世界では実に頼もしく感じる。
おそらく、若い頃は相当モテたのではないだろうか。
その時は髪もフサフサだったろうし。
「むぅ、だからミルクは、もう子供じゃないですます。これでも立派な重戦士(タンク)として活躍してると思いますです」
と、守られる立場が不服なのか、近くで話を聞いていたミルクが唇を尖らせる。
まぁ、職業的に皆を守るのはミルクの役割なのかも知れないが、こんな小さな女の子がモンスターの攻撃を引き付けてたら、そりゃあ、なあ?
とはいえ、ミルクの表情には不満だけでなく、どこか寂しげな色も混じっており、妹に似た何かを感じた俺は無意識に口を開いていた。
「なら、ミルクは俺を守ってくれよ。この中では間違いなく、一番弱っちいからさ。頼りにしてるぞ」
「白木さん……はい、ですますっ! ミルクに任せておくです!」
勢いよく手を挙げて、嬉しそうに、ピョコピョコと跳ねるミルク。
その足元では競うように、もちこがぴょんぴょんと跳ねる。
周囲に警戒しつつ、そんな感じで適度に雑談を交わしていると、いつの間にか体の震えは収まっていた。
やがて、斥候役として先行していたメンバーが戻ってくると、報告を受けたダディが静かに号令をかける。
「よし、中の様子も問題なし。打ち合わせ通り、それぞれの役割をしっかり果たせ。女神の加護を」
「「女神の加護を」」
道中で習った、冒険者の合言葉を口にして、俺達は洞窟へと足を踏み入れる。
きっと、大丈夫。
今の俺達には本物の女神が付いているんだから。
「おや? ミルクちゃんって意外と……」
「ひゃう!? そ、そこはダメですますっ」
呑気に女の子の体をまさぐって、セクハラかましている能天気な女神だけどな!
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