僕ら全ては絵空事なんです

駒乃利久

吾輩は猫になりたいのである

話には続きってものがある。
けれど、続きとか、書くとなると、
めんどくさくなる。

ので、上野空は書きかけで終わってしまう。

「はぁー楽して稼ぐってのは無理だなこれは」

才能の世界では無理なのだと実感する上野。
ましてや、人気の作品は話の筋がしっかりしていることに驚く。

 「あれだけ書けりゃ才能だよ」

スマホを見ている。
そして、上野は顔をあげて
大空を見る。

  「はぁ~」

将来というのはかくも漠然としていて不安だ。ましてや、小説は漠然としているものから、さらに混沌として不安だ。ラノベはもっと、混沌としている。

 上野は頭を悩ませる。
 それを見つめる誰かさんの存在がいた。

 「どうしたんだい君は」

 倒置法を使った独特な人の声、
 いつも放課後は屋上にいる危険人物。
 その名も

 「君は猫山猫乃(ねこやまねこの)」

 「呼ばないでくれたまえ作者ネームで」

猫のフードを被った独特の人物は、
さっと、降りると、
上野の前に来て、

 「覗きに来たのかい、深淵を」
 「スカートは見えてますけどね、はい」

なんなら、パンツの色は……

上野は更なる深淵の在りかを辿るために
 覗くことを決意。
 これもきっと、青春なのだと

 「君ははっ恥ずかしくないのか!」
 「いや、全然なんとも、」

あまりの恥ずかしさに倒置法を忘れる猫山と、真顔を貫き通している上野。
両者の対照的な構図は美しいとさえ思える、
向こう窓の芸術部の学生、有田弥吉(ありたやき)はキャンバスに描く。
インスピレーションと情熱の赴くままに

 今日の登場人物

 屋上の猫、
 上野、
 埴輪のマスクを被った人


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