勝部??
第2章13 山月邸…中
やれやれ…やっと終わったか。
遠ざかっていく戦車を見つめながら、戦車道を極めた気分のかつまであったが、そもそも戦車道とは乙女の戦車道と言って、花嫁修業的な意味合いがあり、男の自分とは無縁である。
「かつま様…ありさお嬢様がお呼びですのでこちらへどうぞ」
「あ、は、はい…あれ?俺だけ?」
どうやら他の三人は、まだお風呂らしい。
「そうですが、それは何の確認事項なのでしょうか?」
な、何のって、あ、あれ?普通だよね?
女の子の家に遊びに行った時に、今日親御さんは?って聞くのって、普通だよね?
べべべ別にやましい気持ちがあるからとかじゃなく、社会人の常識として、まずは家の主人に挨拶をと考えての行動であって、か、勘違いしないでよね。
「まぁ、私達が部屋の側で待機していますので、何かあったら直ぐに伺いますが…ね」
"ね"の部分で不敵に笑うのやめてほしいなぁ…怖いなぁ…女の子の怒るポイントが、この世の中で最も分からないよぉ…。
まるで、神社にある有名な彫刻のように、メイド服のお姉さんが、左右の扉に両手を組んで立っていた。
「ありさお嬢様。彼氏さんをお連れ致しました」
部屋を数回ノックしながら、メイド服のお姉さんは不思議な事を言う。
彼氏?と、頭に疑問符を浮かべていると、部屋の扉が勢いよく開き、かつまは腕を強引に引っ張られて、部屋の中に連行されてしまうのであった。
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かつまを部屋に連行した女性は、ぜぇ、ぜぇ、と、軽く息を切らせていた。
「だ、大丈夫か?」
顔を赤くしているありさを見たかつまは、もしかして風邪だろうか?と、心配して声をかけるのであった。
「だ、大丈夫…ハァ…大丈夫だ」
凛とした顔立ち、雑誌モデルや芸能人にも顔負けしない美少女は、右手を腰にあて、左手で髪をかきあげながら、そう呟いた。
「良く来たな。まぁ、その、何だ。ゆっくりしていけ」
美少女と二人っきりというシュチュエーションで、ゆっくりとはどういうゆっくりなのだろうか。
自宅だと思ってゆっくりなど出来るはずが無い。だからといって、ゆっくりってどうすれば?などと尋ねるのも不自然だろう。
「…とりあえず、座っていいか?」
「ん?あぁ。ゆっくりしていけと言っただろ?」
一応断りを入れてから座るべきだと思ったかつまに対し、何言ってるの?的な返しをするありさ。
違うよ?ゆっくり出来たらそれはそれで可笑しなヤツだと思うだろ?考えて見てよ。
友人を招き、ゆっくりしなよ( ^ω^ )と言った矢先、ベッドでゆっくりとくつろぎだしたら、殺意が芽生えちゃうでしょ?
後、勝手に人の本棚にある「俺ガイル」を手に取って読み始めるのやめてほしい。
「じゃ、じゃぁ遠慮なく」
どこかぎこちない様子で、高そうなソファーに腰を下ろすかつまは、衝撃を受ける事となった。
ヤバイヤバイヤバイ…先輩ヤバイんですぅと言う、いろはすの声を脳内再生しながら、ソファーに座るかつま。
うむ。アレだ。
これは…人をダメにするソファーですね…ワフー(´ω`)
「さて、どうしたものか…」
アゴに手をあて、語り出すありさ。
こういった時に、何をして遊べばいいのだろうか…そんな呟きが、かつまの耳に届いた。
確かに…女の子と二人っきりというシチュエーションで、何をして遊べばいいのだろうか。
映画を観るにも、借りてきなどいない。
テレビを見るにも、ニュース番組ばかりだろう。
いや、ニュースはニュースで盛り上がる事もあるんだよ?本当だよ?
「ありさは普段、何して遊んでいるんだ?」
そう、困った時はこの一言なのだ。
ありさが普段やっている事を一緒にやってみる、これは一つの答えである。
逆に、自分が普段からやっている事を一緒にやってみるのも、一つの答えなのだが、残念ながらここは俺の家ではない。
「ん?私か?私は…そうだなぁ…同人じゃなく、読書とかだなぁ…」
同人誌を読むのを読書とは言わない。
いや、ラノベを読んでいる俺も読書とは言うが、それは間違いではない。
電車の中で本を読んでいる人の大半は、ラノベのはずである。ん?では同人誌を読むのは何なのかと聞かれたら…鑑賞と言うべきか。
そもそも、読書では遊べないよ?いや、好きだけどね。
「後は…けいおん!を観た、いや、聴いたりだなぁ…」
待て待て。なぜ、言い直した。
あの神のような作品を、観るのは恥ではない。むしろ、誇るべき作品だ。
友人に何かおススメと聞かれた時に、けいおん!と答えるのは当たり前、いや、観たからと返されるのも当たり前。
恐らく、百合である自分が、女の子しか出ない番組を観てると言うのに、抵抗があったのだろうが、あのアニメはそうではない。
いや、しかし、聴くと言うのもアリか。
「後は、ゲームかなぁ…」
おい。
そこでなぜ顔を背けるんだありさ。
しかし、今の話しから、じゃぁゲームな!と言うのは目に見えているではないか。
いや、けいおん!を観るでもいいが、台詞を一言一句覚えちゃった俺としては、それは避けたい。
「…なら、ゲームでもするか」
そう提案するかつまに対し、ありさは満面の笑みで、うん!と、答えるのであった。
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