勝部??
第2章13 山月邸 上
(主な登場人物)
・部長 林道 茜・副部長 敗北 勝負
・会計 山月    ありさ・騎士(書記)結城    ひかり
・秘書 服部 彩・顧問 西園寺 麗子
【本編】
ありさのお見舞いに行く事になった勝負部。ありさの家の前にあるバス停に降りた一同は、ただただ驚いていた。
「お、おい・・デカすぎだろう」
お金持ちというレベルではない。東京ドーム何個分!という言葉を耳にした事があるが、まさか目にする機会があるとは思ってもみなかった。
「ク、ク、ク。探検のしがいがあるわい」
「お供するでござる」
目を輝かせるひかりと彩。
いやいや、一日で探検できるほどの建物じゃないぜとかつまは思ったが、口にはしなかった。
ーーーーーーーー
一方その頃、かつま達がそんな事を話しているとは知らないありさの元に、メイドさんがやって来た。
「ぐへ。ぐへへ。たまらん」
「お嬢様。松元ですが入ってもよろしいでしょうか?」
「・・!!ちょ、ちょっと待て」
ドアのノックと共にかけられた言葉にありさは激しく動揺するも、いつもの事なので決められた場所へブツを隠す。隠し終わると静かに頬を叩き、真剣な表情と声で入室を許可した。
「お嬢様。ご友人方がお見舞いに来られたようです」
「な、何!?」
せっかく表情を引き締め、落ち付きを取り戻していたありさだったが激しく動揺してしまう。
「動揺されるのも無理ありませんね。どうされますか?」
「どど、どうするも何も、追い返すなどという選択肢があるのか?」
ありさの質問ともとれる返しに、メイド服を着た松元という女性はうなずきながら答えた。
「はい。お嬢様は体調を崩してお休みです。体調がまだ悪いとおっしゃれば、追い返す事も出来ますが如何いたしましょう?」
「嫌、せっかく来てくれたのだ。案内してやってくれ」
「あぁ今日は何て素晴らしい日でしょう。お嬢様をたずねる友人がいたとは・・どうでしょう?私がケーキでも焼いて、盛大にお祝い致しましょうか?」
「ケーキは頼みたいが、盛大に祝うのはやめてくれ・・で、友人とはもしかして茜達か?」
メイドの松元の言うように、ありさを訪ねてきた友人は初めてである。校内一の美少女でもあるありさを訪ねてくる輩は多い。下心が見え見えな為、ありさ宅に上がった者はいない。無論、女子生徒は上がった事はあるのだが、ありさのファン倶楽部の連中であり、友人とは呼べなかった。
「かしこまりました。訪ねて来られたのは、林道茜様。結城ひかり様。服部彩様。後、お嬢様の彼氏さんです」
「・・・!?そ、そうか・・ならシャワーを浴びてくるから服を出して置いてくれ」
彼氏と言う単語にワザとらしくアクセントをつけた松元の目が光ったように見えたのは、気の所為ではない。ありさは動揺を隠せずにいた。
「まぁお嬢様!彼氏さんが来たと聞いた途端にシャワーを浴びるだなんて・・旦那様がお聞きになられたら何ておっしゃりますやら」
「か、髪が乱れているからだ!5分で済ます・・ん?何だ?」
「いいですか、お嬢様。彼氏さんと何かあれば直ぐにこちらを押して下さい」
「・・あ、あぁ分かった」
松元から卵サイズの機械を渡されるありさ。防犯ブザーか何かだろうと思うのだが、彼氏と何かとはどういう意味なのかを、松元に聞く勇気はなかった。そんな事より考えないといけない事が他にあったからである。
(まさか来るとは・・マズイ。非常にマズイ)
山月家では、敗北勝負と山月ありさは付き合っているという事になっているのであった。
ーーーーーーーーーー
玄関まで歩くかつま達。ガーデニングと呼ぶにはあまりにも広い庭の横を歩いていると、道案内していたメイドさんから質問される。
「ありさお嬢様は学校ではどうですか?」
どう?と聞かれてもな・・。
かつまは何と答えるか考えた。
変ですなどと言えないし・・。
答えが出てこないかつまは、無難な答えを返した。
「普通・・じゃないですか?」
疑問形の返しになってしまったのは、茜達に同意を求めたからであった。
「まぁ私が会計に選んだぐらいだから、普通だとは言えないでしょうけど・・」
「入部させたのは俺だけどな」
「あ?何かいった?」「別に」
実際は、体育館裏で覗いていた事を誤魔化す為に、口裏を合わせようとしたのがきっかけである。
今思えば、秘密の花園を守る為とはいえ、こんな変な部に入部となった事を考えると、ありさにとってはどっちが良かったのだろうか。
「なるほど、なるほど。つまりは俺のおかげでありさお嬢様は入部したと言いたいのですね」
キラーンと聞こえてきそうな目をしたメイドさんは、一つ咳払いをして続ける。
「そろそろお部屋に着きます。まずはお風呂をどうぞ。かつま様は先にお嬢様のお部屋へ。あぁそうそう。これをどうぞ」
「・・何すかこれ?サイコロ?」
そのサイコロは不思議な事にイエスとノーの文字が彫られていた。
「ハイ。それは我が山月グループが開発したイエス!ノー!サイコロとなっています。かつま様は今和食にしようか洋食にしようか悩んでいますね?」
「え?どっちでもないですが」
悩んでるのはこのサイコロの使いどころである。
「では、和食にしましょう。ハイ!サイコロを投げて」
「はぁ・・・」
お姉さんに指示され、仕方なくサイコロを投げると、イエスの所でサイコロは止まった。
サッと、かつまの所に近づくと、耳元で囁くお姉さん。
「この質問内容を〇〇したいと変えれば・・後は分かりますね?」
ゴクリと喉を鳴らすかつま。
何だよこのサイコロ!サイコーじゃねぇか!イエス!ノー枕なんて、めじゃねぇぜ!
ハンチョウもびっくりだよ!
「それなら、全てイエスにすれば・・あれ?」
かつまがそんな事を呟くと、メイド服のお姉さんはサッと一歩退いた。
「権力を振りかざすような行為はお控え下さい」
「振りかざしてないからね?」
ちょこんとお辞儀をしながら、扉の部屋を開けるお姉さん。四人はでかい玄関に驚きながら一歩ずつ歩いて行く。
「かつま殿、かつま殿。履き物はどのようにすればいいのでござるか?」
「ぬ、脱ぐのが普通じゃないのか?」
ここは日本だ。
通常玄関とは、靴を脱ぐ場所はここ!と主張してくれるのだが、ありさの家の玄関にそれはなかった。玄関と部屋の中は真っ平らで同じ色、どこからどこまでが玄関で、どこからどこまでが部屋なのかが分からなかったのである。
「脱がなくて大丈夫ですよ。少々お待ちを」
お姉さんはそう言うと、玄関の壁にあるスイッチを押す。スイッチを押すと、小さなお掃除ロボットがやって来た。
長方形のロボットであり、まるで靴の洗車をするかのように各々の靴に張り付いた。
「な、何よこれ?」
「ハイ。山月グループが開発した靴戦車です」
「洗車?」「ハイ。戦車です」
ウィーンっと掃除機のような音とともに、靴が磨かれているのが分かった。
「旦那様がガルパンが好きでして」
「ク、ク、ク。だから戦車の形をしているのだな」
もしかしたら、ありさの父親とは気が合うかもしれない。かつまとひかりの中で、ありさの父親の好感度が上がった。
「あ、あの?まだ動いちゃダメですか?」
かつま以外は動けるようになったが、何故か、かつまのロボットだけ、ずっと磨いてばかりであった。
「か、かつま。アンタよっぽど汚いのね」
「え?」
「う、うむ。もしくは臭いでござるか」
「そうですね。これが無ければ、我が社の大ヒット商品間違いなしだったのですが・・あっ、かつま様はそのままでいて下さい。皆さまはお風呂場へ案内致します」
どうやら、汚い物を綺麗にするまで、掃除をやめないようセットされたロボットの欠点らしい。
女性はコレを嫌がって買わないとの事だ。
一人残されたかつまはどうする事も出来ず、ただただ固まっているだけなのであった。
・部長 林道 茜・副部長 敗北 勝負
・会計 山月    ありさ・騎士(書記)結城    ひかり
・秘書 服部 彩・顧問 西園寺 麗子
【本編】
ありさのお見舞いに行く事になった勝負部。ありさの家の前にあるバス停に降りた一同は、ただただ驚いていた。
「お、おい・・デカすぎだろう」
お金持ちというレベルではない。東京ドーム何個分!という言葉を耳にした事があるが、まさか目にする機会があるとは思ってもみなかった。
「ク、ク、ク。探検のしがいがあるわい」
「お供するでござる」
目を輝かせるひかりと彩。
いやいや、一日で探検できるほどの建物じゃないぜとかつまは思ったが、口にはしなかった。
ーーーーーーーー
一方その頃、かつま達がそんな事を話しているとは知らないありさの元に、メイドさんがやって来た。
「ぐへ。ぐへへ。たまらん」
「お嬢様。松元ですが入ってもよろしいでしょうか?」
「・・!!ちょ、ちょっと待て」
ドアのノックと共にかけられた言葉にありさは激しく動揺するも、いつもの事なので決められた場所へブツを隠す。隠し終わると静かに頬を叩き、真剣な表情と声で入室を許可した。
「お嬢様。ご友人方がお見舞いに来られたようです」
「な、何!?」
せっかく表情を引き締め、落ち付きを取り戻していたありさだったが激しく動揺してしまう。
「動揺されるのも無理ありませんね。どうされますか?」
「どど、どうするも何も、追い返すなどという選択肢があるのか?」
ありさの質問ともとれる返しに、メイド服を着た松元という女性はうなずきながら答えた。
「はい。お嬢様は体調を崩してお休みです。体調がまだ悪いとおっしゃれば、追い返す事も出来ますが如何いたしましょう?」
「嫌、せっかく来てくれたのだ。案内してやってくれ」
「あぁ今日は何て素晴らしい日でしょう。お嬢様をたずねる友人がいたとは・・どうでしょう?私がケーキでも焼いて、盛大にお祝い致しましょうか?」
「ケーキは頼みたいが、盛大に祝うのはやめてくれ・・で、友人とはもしかして茜達か?」
メイドの松元の言うように、ありさを訪ねてきた友人は初めてである。校内一の美少女でもあるありさを訪ねてくる輩は多い。下心が見え見えな為、ありさ宅に上がった者はいない。無論、女子生徒は上がった事はあるのだが、ありさのファン倶楽部の連中であり、友人とは呼べなかった。
「かしこまりました。訪ねて来られたのは、林道茜様。結城ひかり様。服部彩様。後、お嬢様の彼氏さんです」
「・・・!?そ、そうか・・ならシャワーを浴びてくるから服を出して置いてくれ」
彼氏と言う単語にワザとらしくアクセントをつけた松元の目が光ったように見えたのは、気の所為ではない。ありさは動揺を隠せずにいた。
「まぁお嬢様!彼氏さんが来たと聞いた途端にシャワーを浴びるだなんて・・旦那様がお聞きになられたら何ておっしゃりますやら」
「か、髪が乱れているからだ!5分で済ます・・ん?何だ?」
「いいですか、お嬢様。彼氏さんと何かあれば直ぐにこちらを押して下さい」
「・・あ、あぁ分かった」
松元から卵サイズの機械を渡されるありさ。防犯ブザーか何かだろうと思うのだが、彼氏と何かとはどういう意味なのかを、松元に聞く勇気はなかった。そんな事より考えないといけない事が他にあったからである。
(まさか来るとは・・マズイ。非常にマズイ)
山月家では、敗北勝負と山月ありさは付き合っているという事になっているのであった。
ーーーーーーーーーー
玄関まで歩くかつま達。ガーデニングと呼ぶにはあまりにも広い庭の横を歩いていると、道案内していたメイドさんから質問される。
「ありさお嬢様は学校ではどうですか?」
どう?と聞かれてもな・・。
かつまは何と答えるか考えた。
変ですなどと言えないし・・。
答えが出てこないかつまは、無難な答えを返した。
「普通・・じゃないですか?」
疑問形の返しになってしまったのは、茜達に同意を求めたからであった。
「まぁ私が会計に選んだぐらいだから、普通だとは言えないでしょうけど・・」
「入部させたのは俺だけどな」
「あ?何かいった?」「別に」
実際は、体育館裏で覗いていた事を誤魔化す為に、口裏を合わせようとしたのがきっかけである。
今思えば、秘密の花園を守る為とはいえ、こんな変な部に入部となった事を考えると、ありさにとってはどっちが良かったのだろうか。
「なるほど、なるほど。つまりは俺のおかげでありさお嬢様は入部したと言いたいのですね」
キラーンと聞こえてきそうな目をしたメイドさんは、一つ咳払いをして続ける。
「そろそろお部屋に着きます。まずはお風呂をどうぞ。かつま様は先にお嬢様のお部屋へ。あぁそうそう。これをどうぞ」
「・・何すかこれ?サイコロ?」
そのサイコロは不思議な事にイエスとノーの文字が彫られていた。
「ハイ。それは我が山月グループが開発したイエス!ノー!サイコロとなっています。かつま様は今和食にしようか洋食にしようか悩んでいますね?」
「え?どっちでもないですが」
悩んでるのはこのサイコロの使いどころである。
「では、和食にしましょう。ハイ!サイコロを投げて」
「はぁ・・・」
お姉さんに指示され、仕方なくサイコロを投げると、イエスの所でサイコロは止まった。
サッと、かつまの所に近づくと、耳元で囁くお姉さん。
「この質問内容を〇〇したいと変えれば・・後は分かりますね?」
ゴクリと喉を鳴らすかつま。
何だよこのサイコロ!サイコーじゃねぇか!イエス!ノー枕なんて、めじゃねぇぜ!
ハンチョウもびっくりだよ!
「それなら、全てイエスにすれば・・あれ?」
かつまがそんな事を呟くと、メイド服のお姉さんはサッと一歩退いた。
「権力を振りかざすような行為はお控え下さい」
「振りかざしてないからね?」
ちょこんとお辞儀をしながら、扉の部屋を開けるお姉さん。四人はでかい玄関に驚きながら一歩ずつ歩いて行く。
「かつま殿、かつま殿。履き物はどのようにすればいいのでござるか?」
「ぬ、脱ぐのが普通じゃないのか?」
ここは日本だ。
通常玄関とは、靴を脱ぐ場所はここ!と主張してくれるのだが、ありさの家の玄関にそれはなかった。玄関と部屋の中は真っ平らで同じ色、どこからどこまでが玄関で、どこからどこまでが部屋なのかが分からなかったのである。
「脱がなくて大丈夫ですよ。少々お待ちを」
お姉さんはそう言うと、玄関の壁にあるスイッチを押す。スイッチを押すと、小さなお掃除ロボットがやって来た。
長方形のロボットであり、まるで靴の洗車をするかのように各々の靴に張り付いた。
「な、何よこれ?」
「ハイ。山月グループが開発した靴戦車です」
「洗車?」「ハイ。戦車です」
ウィーンっと掃除機のような音とともに、靴が磨かれているのが分かった。
「旦那様がガルパンが好きでして」
「ク、ク、ク。だから戦車の形をしているのだな」
もしかしたら、ありさの父親とは気が合うかもしれない。かつまとひかりの中で、ありさの父親の好感度が上がった。
「あ、あの?まだ動いちゃダメですか?」
かつま以外は動けるようになったが、何故か、かつまのロボットだけ、ずっと磨いてばかりであった。
「か、かつま。アンタよっぽど汚いのね」
「え?」
「う、うむ。もしくは臭いでござるか」
「そうですね。これが無ければ、我が社の大ヒット商品間違いなしだったのですが・・あっ、かつま様はそのままでいて下さい。皆さまはお風呂場へ案内致します」
どうやら、汚い物を綺麗にするまで、掃除をやめないようセットされたロボットの欠点らしい。
女性はコレを嫌がって買わないとの事だ。
一人残されたかつまはどうする事も出来ず、ただただ固まっているだけなのであった。
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