勝部??

伊達\\u3000虎浩

第2章11 巻き物争奪戦??上

(主な登場人物)
 ・部長 林道 茜りんどう あかね ・副部長 敗北 勝負はいきた かつま
 ・会計 山月やまつき ありさ ・騎士(書記)結城ゆうき ひかり
 ・秘書 服部 彩はっとり さやか ・顧問 西園寺 麗子さいおんじ れいこ


【本編】


 とある一室での出来事である。


「こちら作戦本部。作戦本部。どうぞ」


「こちら世界を救う者。どうぞ」


「・・真面目にやりなさい。どうぞ」


「愚かなり。我はいつだって大真面目って、やめれーー」


「レイラ人形を救いたくば、探索を続けなさい」


「ひ、卑劣なり、林道茜!!」


 バンっと机を叩くひかり。
 何くわぬ顔を返す茜。
 二人はTV電話をしていた。


 TV電話は進化し、今では立体映像が映し出されるようになっている。
 具体的には携帯電話に、映写機能が加わり、壁に向ける事よって映し出される映像と会話ができるのだ。
 現在、白い壁限定なのだが、近い将来、どんな壁にも対応できる機能を備えつけようという動きがある。
 しかし、電車や階段などに映し出されてはたまったものではない為、完成は困難であった。


「待っておれ!レイラ。今、我が迎えに・・ん?」


「迎えに来なくていいから、巻き物を探しなさい」


「ク、ク、ク。やはり天は我に味方したか。見よ!!」


 思わず、ジャッ、ジャジャーンっという効果音が聞こえてきそうな、そんな大袈裟な態度を見せるひかり。
 手には巻き物が握られている。


「でかしたわひかり!巻き物をあけなさい」


 巻き物を広げるひかり。


 《茜殿のパンツはクマさんパンツ》


 巻き物を落とすひかり。


「で?で?何て書いてあったのひかり?」


 目を輝かせる茜。
 ひかりは固まってしまっていた。


(ぐぉぉぉお!!何書いてんじゃぁぁあ!!)


 心の中は絶叫中であった。
 どうする?どうする?正解は何だ?
 ねぇ?ねぇ?と聞こえてくる声を背に、ひかりはしばらくの間、沈黙してしまうのだった。


 ーーーーーー


 一方、その頃リン達は2.3学年の校舎へと来ていた。


「ねぇ、リンちゃん。巻き物って何色とかわかる?」


「知らないアル」


「えっ⁉︎・・・知らないでどうやって探すの?」


「何言ってるアル?巻き物は巻き物アルよ」


「そ、そうなんだけど・・アレ?」


 さゆりはリンにたずねる。
 巻き物を探していると言っていたが、どれでもいいのか?と。
 当然リンは、当たりの巻き物に決まってるアルよと、バカにしたような目を向ける。
・・・アレ?友達ですよね?
 しかし、さゆりはリンの性格を理解し始めたのか、ニコニコしながら接する。


「でもさリンちゃん。どれが当たりか解らないと、巻き物を見つけても仕方がないんじゃないかな?」


「・・・なんでか?」


「なんでですか?だろ。全く。こう見えても先輩だぞ!もう少し敬語をだな・・」


「こう見えてもは余計ですけどね」


 さすがに黙っておれず、口を挟むかつまだったが、逆に口を挟まれてしまった。
 口を挟まれたリンは、不思議そうに二人にたずねた。


「友達なのにか?」


「ご、ごめんねリンちゃん!!」


 友達なのに敬語を使うのか?とたずねるリンに、私が間違ってましたと、さゆりは謝りながらリンに抱きついた。


「親しき仲にも礼儀ありって言ってな、日本では目上の人は敬うものなんだよ」


「そうだったアルか・・確かに・・ハゲてるアル」


 可哀想な人を見る目に変わるリン。
 さゆりはまだカツラを被っているままであった。


「ほ、ほら?リンちゃん見て」


「大丈夫アル。姿でも、ずっと友達アル」


 慌ててカツラを外し、リンに本当の姿を見せるさゆりであったが、リンはカツラを被ったと思いそう返事をする。


 リンの中ではカツラをつけていない今のさゆりが、カツラをつけており、ハゲカツラをつけた時のさゆりが本来の姿だと思っている。


 どうやら誤解は解けそうにない。


「とりあえず、巻き物を探そうか」


 この誤解が解けた時、リンは友達でいてくれるのだろうか。
 さゆりの胸に、チクリと何かが刺さったような、そんな気がした。
 もしも出会い方が少しでも違ったなら、何かが変わっていたのだろうか。
 この天真爛漫な笑顔を、私は見れていただろうか。


「先輩?」


「えっ⁉︎何?」


「大丈夫ですか?」


「ん?何が?」


「・・・何でもないですよ」


 とぼけられてしまっては、それ以上は詮索できない。
 さゆりが何を考えていたのか、かつまには少しだけ解っていた。
 しかし、解っていても答えてあげられない。


 友達について。


 この答えを答えられる人はおそらくいないだろう。


 不安そうなさゆりに、笑顔のリン。
 そんな二人を見送り、かつまは茜の元へと歩きだした。


 ーーーーーー


 あの二人は大丈夫なのだろうか?
 一番最初にいた場所、つまり勝負部の部室にまだいる。


 ガラガラ。


 部室の部屋を開け、頭をかきながら部室に入るかつまであったが、入るなりすぐに固まってしまう。


 そこは地獄と呼ぶべき場所なのか。
 ピリピリ張り詰めた空気。
・・あれれ?さっきまでと空気が違うんですが。


 ゴクリと喉を鳴らす。


「・・めろ」


「・・・ハイ?」


「閉めろっつてんの」


 悪魔・・イヤ、茜か。
 怒っているであろう雰囲気なのに、声の大きさやトーンは変わらない。
 逆にそれが怖かった。
 部室のドアを閉めると、茜のそばで正座しているひかりの姿がそこにはあった。
・・・アイツ、何で震えているんだ?


 ひかりの近くに行くと、何やらブツブツ呟いているのが解った。


「ウサギさんが1羽。ウサギさんが2羽。ウサギさんが」


「ウサギ?」


「おぉおほん。ひかり」


「ハッ!!」


 わざとらしい茜の咳払いに、おびえた様子で敬礼するひかり。


「それで?見つかったのかしら?」


「ま、まだであります」


「そう。見つける気は、あるのよね?」


「も、勿論であります」


「期待しているぞ☆」


「ヒッヒイイエサーーー」


 茜のウインクに、悲鳴なのか気合いなのか解らない返事を返すひかり。
 巻き物ではなく、ありさでもない。
 何故か彩を探そうとしている茜とひかり。
 その答えを、かつまが知る事はなかった。


 ーーーーーーーーー


 茜は両手を組んで、両肘を机の上に乗せ、終始ニコニコしていた。
 それが二人にはとても耐えきれなかった。
・・マジかよ。来るんじゃなかった。
 かつまが後悔していると、茜から名前を呼ばれてしまった。
 隣では、ホッと胸を撫で下ろすひかりの姿が目に入る。
・・何だ?人類補完計画とか言い出さないでくれよ。
 何だよっと返事を返すが、語尾は弱々しくなってしまう。
 茜から放たれるプレッシャーに負けてしまったからである。


「あ、あんたは・・そ、その・・巻き物・・見た?」


「巻き物?見たって、答えをって事か?」


「そ、そうじゃなくて・・そ、その・・ダミーの・・やつとか」


「やっぱりそうか。ダミーがあるんだな」


 何故か急に頬を赤くし、モジモジしだした茜を、疑問に感じるかつま。
・・何だ?トイレなら行けばいいのに。
 しかし、女の子に向かってトイレか?とは聞けない。


「い、いい?もしも巻き物を見つけても、絶対にあけちゃダメよ」


「なんでだ?」


「いいから!見つけたら渡しなさい」


「いや、そもそも審判的な立場の俺が、巻き物の中を見たり、渡したりできないだろう?」


「そ、それもそうね」


 ふーっと息を吐く茜。


「良し。2.3学年とか関係ないわ。片っ端から部屋を開け、巻き物を回収したら私に渡しなさい!」


「了解であります」


 ひかり軍曹は、ピンっと背筋を伸ばし、敬礼しながら返事を返した。


「見てなさい彩。私を怒らせた罪は大きいわよ」


 そう言って立ち上がる茜は、部室を後にする。
 それに続くひかりとかつま。
 自分がいない間に、何があったのだろうか。
 部室のゴミ箱に、破かれた巻き物の残骸がチラリと見えた気がしたのだが、かつまはその事に触れる事ができなかった。


 次回第2章11  巻き物争奪戦??中

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