勝部??

伊達\\u3000虎浩

第2章10 転校生??中

 
 かつまのクラスに転校生がやって来た。
 それはどこの学校でもよくある話しである。
 唯一違うというか、変わった所は外国から転校してきた事であった。
 留学生とどう違うのだろうか?
 かつまは目の前でおこなわれている勝負?を、遠い目で見ながらそんな事を考えていた。


「おーい!もうやめて帰ろうぜ」


「愚かなりかつま。逃亡すなわち敗北ではないか」


「アンタってヤツは、副部長としての・・」


 また始まったよと、かつまは茜の小言をシャットアウトする。
 そもそも何故こうなったのか。


 かつまは流れる雲を見上げ、ポツリと呟いた。


 ーーーーーーーーーーーー


 勝負しなさい!と茜が転校してきたリンにそう告げると、リンは不敵な笑みを浮かべ、茜に話しかけた。


「いいアルが、勝負をするからには、私が勝ったら湖を探すのに協力してもらうアルよ?」


 一生見つからないよ?


 かつまはそんな事を考えながら、茜を見る。
 言われた茜は、両腕を組んでニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。


「望む所よ。私が勝ったら、アンタには我が勝負部の雑用係にするわ」


「ク、クク。愚かな娘よ」


 さて、どうしたものか。
 リンがまけると負けると、勝負部の部員になってしまう。
 茜が負けると、絶対見つからない湖を探すハメになる。
 何故ならリンが探しているのは、水を被るとネコになってしまうという、伝説の湖であった。


 気持ちは解らなくもない。
 ブタかネコか、アヒルかパンダかを選べと言われたらネコだろう。
 かつてかつまは、水を被ると女の子になれる”らんま”に憧れたものだ。
・・しかし!コレには欠点があるんだよな。


 女の子になって女湯に行ける!と思うだろう?
 しかし、お湯を被ると元に戻ってしまう為、コレができないのだ。


「・・聞いてるの!」


 かつまは、考え事をしてしまっていたらしい。
 茜に呼ばれ、悪いと謝罪するかつま。
 何の用かたずねると、副部長として審判をやれとの事であった。
 ・・副部長関係あるのか?


「フム。では公平に、ここは拙者が勝負内容を決めるでござるよ」


「異論はないわ」「わかったアル」


「でわ。放課後部室にて、勝負内容を発表するでござるよ」


 そう言って、担任を放置して各々席に着く。
 席はありさが一番後ろの窓際。
 ありさの前にかつま。
 かつまの前に茜。
 茜の隣に彩。
 彩の後ろ、かつまの隣にひかり。
 そしてひかりの後ろ、ありさの隣にリンが座る。
・・偶然だよな?
 出席番号順の為、偶然としか言えない。
 やまつきにりんどう。
 はっとりにゆうき。


 本来ならばかつまは唯一の男の子なので、一番後ろだったのだが、寝すぎてありさと交代になった。
 茜やひかりは身長的にありさの前になり、転校してきたリンは、シャオ・リンなのだが、リンが優先された為、ひかりの後ろになった。


「・・先生?大丈夫ですか?」


 一人のクラスメイトが、みどりを心配して声をかける。


「み、みどりファーイト」


 呟くみどりの言葉。
 自分で自分を慰める言葉を、前の席にいた女子達だけが聞いていた。


 ーーーーーーーーーー


 放課後。
 勝負部の部室に集まるかつま達。
 リンは珍しいのか、緊張しているのか、キョロキョロ辺りを見渡していた。


「待たせたでござるよ」


 彩が部室に到着し、彩を見るかつま達。


「で?勝負内容は?」


 茜がニヤリと笑いながら、彩に質問する。


「フム。この学園内に、巻き物を置いて来たでござる」


 彩はそう言いながら、巻き物をスッと差し出した。


「つまりは、コレを先に見つけた方が勝ちということアルね?」


「左様でござる。そこにはが書かれているでござるから、それを見つけてまで届けた方が勝ちでござる」


 ルールはいたってシンプルであった。
 彩が隠した巻き物を先に見つけて、ありさに届ければ勝ちというルールである。


「待て。リンが不利じゃないか?」


 かつまが手をあげる。
 リン一人に対し、茜とひかりのペアである。
 探し物をする上で大切な事。
 人数が、多い方が有利だということである。


「構わないアル。ハンテね」


「ハンデな。コレは日本語じゃないぞ」


「ク、クク。オツムの足りぬヤツじゃ。ドイツ語が解らんとは」


「・・・英語よ」


「・・・・。」


 やれやれとポーズをとりながら、自信たっぷりに話すひかりだったのだが・・間違えている。
 おほん!と茜はワザとらしく咳をし、話しを強引に戻した。


「と、とにかく!先に見つけた方が勝ち!いいわね?」


「正確には見つけて、ありさに届けた方が勝ちな」


 スタートの前に、彩がかつまの元へやってきた。
 何のようかと思ったら、発信機を手渡す彩。


「かつま殿は審判ゆえ、ちくいち不正がないか監視するでござるよ」


「うそ・・だろ?」


 早い話し、かつまは茜とひかりペア、リンが今、何処で、何をしているのかを監視する役目を押し付けられたのである。


 つまり、茜とひかりの様子を見た後、発信機を元に、リンの所まで走って行き、リンの様子を見たら、茜とひかりの様子を見に行けとの事であった。


「では参るでござる」


 彩の号令のもと、巻き物争奪戦がスタートする。


 ーーーーーーーーーー


 スタート直後、物凄い勢いで飛び出すリン。
 それに続いて飛び出そうとするひかりを、茜が呼びとめた。


「ひゃっ!?な、何をする愚かもの!」


「待ちなさい。作戦もなしに動いてどうするのよ」


「だ、だからって脇腹を触るヤツがあるか!」


 ひかりの両脇腹をガッチリ掴んだ茜に、ひかりが猛抗議するが、茜の耳には届かない。


「いい?闇雲に探しても見つからないし、見つけたとしても嬉しくはないでしょ?」


 茜は左手を腰にあて、右手人差し指を立てながら、ひかりの顔の前でチッチチと振る。
・・闇雲に探してたらいつかは見つかると思うがな。
 しかし、最後の部分だけは共感できた。


 例えばテストを受けたとしよう。
 解らない問題があり、適当に書いたものが当たったのと、コレだ!と書いたものが当たった時とでは嬉しさが違わないだろうか?
・・コナン君を見たまえ!犯人がわかったとしても、きちんと証拠を見つけるまでは、犯人を捕まえないじゃないか!


 かつまがそんな事を考えているとは知らず、茜が作戦を伝える。


「本作戦”巻き物ゲッチュー大作戦”の会議を始めるわよ」


「・・そのネーミング、どうにかならなかったのか」


 巻き物を探す前に、何故か会議を始める茜とひかり。
 とりあえず会議を開いてから、リンの元に行こうと決め、かつまは席に着いた。


「この高校は広い。それはみんな解っているわね?」


 茜がホワイトボードに図を書いていく。
 我が高校は、できたばかりの新設校である。
 ペンタゴン型の校舎は、アメリカにあるペンタゴンを参考にしたものであった。


 そのペンタゴン型の校舎は、それぞれ1.2.3学年に別れており、その他は校長室や各部室、生徒会室などが置かれている。


 茜が言う事は一理あった。
 この広さを闇雲に探すには、時間が足りない。
 ならばと、会議になったのである。


「恐らく、2.3学年にはないでしょう」


 ホワイトボードに✕マークをつけていく茜。
 何でなのか気になったかつまは、茜にたずねた。


「そんなの勘よ!」「あっ・・そう」


 しかし、これはかつまとしても、そうあって欲しい事であった。
 後々かつまは、監視役として動き回る事になる。
 2.3学年の教室に、茜とひかりが行かないとなれば、かつまも行く必要がないのだ。


 会議をする茜とひかり。
 飛び出して行ったリン。


 果たして勝者はどちらの手に!!
・・どっちでもいいけどな。


 次回 転校生?? 下

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