世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて
第四章 漆黒の堕天使 中
『主な登場人物』
・輝基 和斗・・本作品の主人公。ゲームをクリアーした所、アリスの魔法により、異世界にワープする事になった。
・アリス・・・勇者軍に倒された魔王サタンの娘であり、現魔王軍を率いる女王である。勇者軍に奪われたブラッククリスタルを取り戻す為、カズトを召喚したが、クリフに力を奪われてしまう。
・レイラ・・・勇者軍の1人。レイラについたあだ名は戦略兵器レイラであり、カズトの事を勇者テトだと思っている。かつて仲間だったクリフをとめるべくカズト達と行動を共にする。(元人間)
・ナナ・・・魔女族。
・輝基 美姫・・カズトの妹で、ブラコン(重症)
・ナナミ・・・ナナの姉。
・クリフ・・勇者軍の1人。クリフについたあだ名は魔法剣士クリフであり、ブラッククリスタルにより性格が変わってしまう。
【本編】
カズトは頭を抱えていた。
カズトの通う高校にナナまで加わり、1時間目の国語の授業を受けていた時であった。
「なぜこやつはばくはつしたのじゃ?」
「・・これはげきどと読みます」
レイラに指摘され、顔を赤くするアリス。
冷ややかな眼差しでアリスを見るレイラ。
そんな二人とは対照的で、カズトの隣でナナはずっとおどおどしていた。
それは無理もないだろうと、カズトは黒板をノートに書き写しながら思っていた。
ずっと戦闘していたはずなのに、気がつけば訳も解らない所で、知らない人がたくさんいる部屋で、事情は後で説明するから、とりあえず大人しくしとけ言われてしまったらそうなるだろう。
ナナは見たこともない物(壁時計やPCなど)に目を白黒させながら、キョロキョロしていると、また知らない人が自分の名前を呼んできた。
もしこれが、試験中だったら間違いなくカンニングの疑いで退学だっただろうと、カズトは横目でナナを見ながら思っていた。
名前を呼ばれたナナは、また名前を呼んだ人に向かって何度もぺこぺこしている。
そんなナナの態度に、国語担当の教師は頭を悩ませていた。
授業を妨害しようとしているなら、教室から出ていかせれば問題ないのだが、こうやって何度も頭を下げる彼女を見ていると、何だか自分がいじめているように見えてしまう。
転入したばかりだった事を思い出し、ナナの奇妙な行動は緊張しているからだと決めつけた。
教師は、少しでもその緊張をほぐしてあげようと、もう二人の転入生に目を向ける。
「アリスさん。読んで下さい」
「ハ、ハイ」
アリスに朗読させる事で、ナナに転入生でもクラスに馴染めるんだぞと、思って欲しかったのだが。
「メロンはげきどした」
「メロスです。メロンがげきどしたら怖いじゃないですか」
アリスが言い間違え、レイラが即つっこみ、クラスが笑いの渦に包まれる。
またですか・・・。
当初は、緊張の為かと思っていたのだが、2回3回と続くとワザとかと思いたくなる。
まるで隣のレイラと、事前に打ち合わせでもしていたのかと疑いたいのだが、顔を真っ赤に染め上げるアリスを見ると、違う気がする。
国語の担当教師は、こっそりため息をつくと、真面目にノートに書き写している生徒に目を向けた。
「輝基君。放課後職員室に来て下さい」
何故自分が呼ばれたのか解らないが、呼ばれてしまったからには、ハイとしか答えようがないカズトは、何のようなのかと放課後まで悩むのであった。
ナナに大雑把ではあるが、学校の事、授業の事、教師について等、一通り説明したおかげで、その後は無事に授業が終わる事ができた。
何も無かった訳ではないが、カズトは頭を振って記憶を消去する。
三人には、先に帰るよう伝え、カズトは放課後職員室へと足を運んだ。
一方その頃、三人で先に帰るように言われたアリス達は、見た事もない物に目移りしてしまい、寄り道ばかりしていた。
とある公園の前を横切ると、ナナが泣いている女の子を見かけた。
「あ、あの・・小さな女の子が泣いています」
ナナに声をかけられ、アリスとレイラは公園の方を向く。
木の下で、小さな女の子が泣いている事に気付いた三人は、女の子の元へ駆け寄り声をかけるのだが、風船が・・と言われ首を傾げてしまう。
風船とは何なのかと三人で話し合うも、当然答え等見つかるはずもなく、三人は女の子に再度声をかけた。
すると女の子は木の上を指さして、風船が飛んでいったのと、説明する。
「アレが風船というものなのか」
「そのようですね。とってあげればいいのではないでしょうか」
アリスの疑問にレイラが答え、レイラがジャンプしようとした時、ナナから声をかけられる。
「ま、待ってく、下さい。カ、カズトさんがそ、その、あまり目立つなと言っていました」
ナナのこの助言を聞いて、アリスは無視しようと提案したのだが、レイラが頑なにそれを拒む。
テトの言いつけに背く事はあってはならないと。
「それじゃぁどうするの?まさか、女の子を泣かせたままで、帰る何て言わないわよね?」
アリスのこの発言に、まさか悪魔がこんな事を言うとは思いもせず、レイラとナナがキョトンとしていると、小さな女の子が提案してきた。
「オネェちゃんかたぐるまして」
この中で一番背の高いレイラのスカートを、クイっと引っ張りながらそう言ってくる女の子に、三人がキュンっとなるのだが、女の子を肩車しても届きそうにない。
「肩車ですか・・いいアイデアではありますが届きそうにありませんね」
「なら、私を肩車しなさい!レイラ」
「・・ご冗談を。アリスが私を肩車するべきです」
「何でそうなるのよ!あんたの方が重いんだから、あんたが下でしょ!」
睨みあう二人をナナが、あわあわしながらとめる。
女の子の為ですからと言う鶴の一声に、二人の動きが止まり、ここはせいせい堂々とジャンケンで決めようという事になったのだが・・。
「屈辱だわ」
「当然の結果です」
「す、すいません。もう少し右です」
アリス、レイラ、ナナの順番で肩車をするのだが、一番小さいアリスが一番下で肩車をするという姿が、とても目立っていた。
流石に重たくて、プルプル震えたりしないものの、屈辱的な感覚にとらわれ、別の意味でプルプルするアリスであった。
風船を取り、女の子に手渡すと、満面の笑顔でありがとうっと言われ、気持ちが晴れやかになっていく。
いい事はするものだと考えるナナ。
いい事をしたのだからカズトに何か買わせようと企むアリス。
いい事をしたのだから、テトに褒めてもらおうと考えるレイラ。
三人は女の子に手を振りながら、それぞれの思いを胸に帰宅するのであった。
失礼しましたと、カズトは職員室のドアを閉めながらお辞儀をする。
呼び出された内容は三人の事であったのだが、異世界から来た為、大目にみてやってほしいなどと、言えるはずもなく、説明に苦労するのであった。
帰ったら説教だなと、心の中でつぶやきながらいつもの道を下校する。
商店街で少し買い物をしてから家に帰ろうと、カズトがいつものお肉屋さんで買い物をしていると、世間話しを耳にする。
桜公園で三人の女子高生が、木に引っかかっていた風船を肩車をして取っていたという、誠に信じがたい話だった。
まさかな・・とカズトはその場を離れ、しばらく歩いていると、見覚えのある後ろ姿に声をかけた。
しかし、声をかけられた人物は、気づいていないのか、スタスタと歩いていく。
不思議に思ったカズトは、駆け足で歩み寄ったのだが、思わず固まってしまう。
「レイラ・・だよな?」
いつものゴスロリ服にツインテールの彼女。
しかし、銀髪の髪の色に、左目が紫色に変化している事にカズトは固まってしまったのだった。
カズトに呼ばれた銀髪のレイラは、にっこり微笑むと、右手をカズトに向け呪文を唱える。
「ルミナスウィンド」
思いもよらない行動にでられ、カズトは驚きとっさに両手をクロスさせてガードをするのだが、凄まじい突風に吹き飛ばされてしまうのだった。
辺りの電柱はへし折れ、近くにあった植木鉢やゴミ箱は綺麗になくなっており、ハリケーンでも通ったのではないかと言わんばかりの惨状であった。
何もなくなってしまった路地裏で、楽しそうに笑う少女の笑い声が辺りに鳴り響いていた。
次回 第四章 漆黒の堕天使  下
※ここまで読んでいただきありがとうございます。
さて、今回はいかがだったでしょうか?
最近、新人章に応募しようかと悩んでいる作品でして、応募するとしばらくなろうで更新できない事を知り、完結させてからの方がいいのか悩んでおります。
同じような方がいたら是非メッセージなどお待ちしております。
では次回もお楽しみに。
・輝基 和斗・・本作品の主人公。ゲームをクリアーした所、アリスの魔法により、異世界にワープする事になった。
・アリス・・・勇者軍に倒された魔王サタンの娘であり、現魔王軍を率いる女王である。勇者軍に奪われたブラッククリスタルを取り戻す為、カズトを召喚したが、クリフに力を奪われてしまう。
・レイラ・・・勇者軍の1人。レイラについたあだ名は戦略兵器レイラであり、カズトの事を勇者テトだと思っている。かつて仲間だったクリフをとめるべくカズト達と行動を共にする。(元人間)
・ナナ・・・魔女族。
・輝基 美姫・・カズトの妹で、ブラコン(重症)
・ナナミ・・・ナナの姉。
・クリフ・・勇者軍の1人。クリフについたあだ名は魔法剣士クリフであり、ブラッククリスタルにより性格が変わってしまう。
【本編】
カズトは頭を抱えていた。
カズトの通う高校にナナまで加わり、1時間目の国語の授業を受けていた時であった。
「なぜこやつはばくはつしたのじゃ?」
「・・これはげきどと読みます」
レイラに指摘され、顔を赤くするアリス。
冷ややかな眼差しでアリスを見るレイラ。
そんな二人とは対照的で、カズトの隣でナナはずっとおどおどしていた。
それは無理もないだろうと、カズトは黒板をノートに書き写しながら思っていた。
ずっと戦闘していたはずなのに、気がつけば訳も解らない所で、知らない人がたくさんいる部屋で、事情は後で説明するから、とりあえず大人しくしとけ言われてしまったらそうなるだろう。
ナナは見たこともない物(壁時計やPCなど)に目を白黒させながら、キョロキョロしていると、また知らない人が自分の名前を呼んできた。
もしこれが、試験中だったら間違いなくカンニングの疑いで退学だっただろうと、カズトは横目でナナを見ながら思っていた。
名前を呼ばれたナナは、また名前を呼んだ人に向かって何度もぺこぺこしている。
そんなナナの態度に、国語担当の教師は頭を悩ませていた。
授業を妨害しようとしているなら、教室から出ていかせれば問題ないのだが、こうやって何度も頭を下げる彼女を見ていると、何だか自分がいじめているように見えてしまう。
転入したばかりだった事を思い出し、ナナの奇妙な行動は緊張しているからだと決めつけた。
教師は、少しでもその緊張をほぐしてあげようと、もう二人の転入生に目を向ける。
「アリスさん。読んで下さい」
「ハ、ハイ」
アリスに朗読させる事で、ナナに転入生でもクラスに馴染めるんだぞと、思って欲しかったのだが。
「メロンはげきどした」
「メロスです。メロンがげきどしたら怖いじゃないですか」
アリスが言い間違え、レイラが即つっこみ、クラスが笑いの渦に包まれる。
またですか・・・。
当初は、緊張の為かと思っていたのだが、2回3回と続くとワザとかと思いたくなる。
まるで隣のレイラと、事前に打ち合わせでもしていたのかと疑いたいのだが、顔を真っ赤に染め上げるアリスを見ると、違う気がする。
国語の担当教師は、こっそりため息をつくと、真面目にノートに書き写している生徒に目を向けた。
「輝基君。放課後職員室に来て下さい」
何故自分が呼ばれたのか解らないが、呼ばれてしまったからには、ハイとしか答えようがないカズトは、何のようなのかと放課後まで悩むのであった。
ナナに大雑把ではあるが、学校の事、授業の事、教師について等、一通り説明したおかげで、その後は無事に授業が終わる事ができた。
何も無かった訳ではないが、カズトは頭を振って記憶を消去する。
三人には、先に帰るよう伝え、カズトは放課後職員室へと足を運んだ。
一方その頃、三人で先に帰るように言われたアリス達は、見た事もない物に目移りしてしまい、寄り道ばかりしていた。
とある公園の前を横切ると、ナナが泣いている女の子を見かけた。
「あ、あの・・小さな女の子が泣いています」
ナナに声をかけられ、アリスとレイラは公園の方を向く。
木の下で、小さな女の子が泣いている事に気付いた三人は、女の子の元へ駆け寄り声をかけるのだが、風船が・・と言われ首を傾げてしまう。
風船とは何なのかと三人で話し合うも、当然答え等見つかるはずもなく、三人は女の子に再度声をかけた。
すると女の子は木の上を指さして、風船が飛んでいったのと、説明する。
「アレが風船というものなのか」
「そのようですね。とってあげればいいのではないでしょうか」
アリスの疑問にレイラが答え、レイラがジャンプしようとした時、ナナから声をかけられる。
「ま、待ってく、下さい。カ、カズトさんがそ、その、あまり目立つなと言っていました」
ナナのこの助言を聞いて、アリスは無視しようと提案したのだが、レイラが頑なにそれを拒む。
テトの言いつけに背く事はあってはならないと。
「それじゃぁどうするの?まさか、女の子を泣かせたままで、帰る何て言わないわよね?」
アリスのこの発言に、まさか悪魔がこんな事を言うとは思いもせず、レイラとナナがキョトンとしていると、小さな女の子が提案してきた。
「オネェちゃんかたぐるまして」
この中で一番背の高いレイラのスカートを、クイっと引っ張りながらそう言ってくる女の子に、三人がキュンっとなるのだが、女の子を肩車しても届きそうにない。
「肩車ですか・・いいアイデアではありますが届きそうにありませんね」
「なら、私を肩車しなさい!レイラ」
「・・ご冗談を。アリスが私を肩車するべきです」
「何でそうなるのよ!あんたの方が重いんだから、あんたが下でしょ!」
睨みあう二人をナナが、あわあわしながらとめる。
女の子の為ですからと言う鶴の一声に、二人の動きが止まり、ここはせいせい堂々とジャンケンで決めようという事になったのだが・・。
「屈辱だわ」
「当然の結果です」
「す、すいません。もう少し右です」
アリス、レイラ、ナナの順番で肩車をするのだが、一番小さいアリスが一番下で肩車をするという姿が、とても目立っていた。
流石に重たくて、プルプル震えたりしないものの、屈辱的な感覚にとらわれ、別の意味でプルプルするアリスであった。
風船を取り、女の子に手渡すと、満面の笑顔でありがとうっと言われ、気持ちが晴れやかになっていく。
いい事はするものだと考えるナナ。
いい事をしたのだからカズトに何か買わせようと企むアリス。
いい事をしたのだから、テトに褒めてもらおうと考えるレイラ。
三人は女の子に手を振りながら、それぞれの思いを胸に帰宅するのであった。
失礼しましたと、カズトは職員室のドアを閉めながらお辞儀をする。
呼び出された内容は三人の事であったのだが、異世界から来た為、大目にみてやってほしいなどと、言えるはずもなく、説明に苦労するのであった。
帰ったら説教だなと、心の中でつぶやきながらいつもの道を下校する。
商店街で少し買い物をしてから家に帰ろうと、カズトがいつものお肉屋さんで買い物をしていると、世間話しを耳にする。
桜公園で三人の女子高生が、木に引っかかっていた風船を肩車をして取っていたという、誠に信じがたい話だった。
まさかな・・とカズトはその場を離れ、しばらく歩いていると、見覚えのある後ろ姿に声をかけた。
しかし、声をかけられた人物は、気づいていないのか、スタスタと歩いていく。
不思議に思ったカズトは、駆け足で歩み寄ったのだが、思わず固まってしまう。
「レイラ・・だよな?」
いつものゴスロリ服にツインテールの彼女。
しかし、銀髪の髪の色に、左目が紫色に変化している事にカズトは固まってしまったのだった。
カズトに呼ばれた銀髪のレイラは、にっこり微笑むと、右手をカズトに向け呪文を唱える。
「ルミナスウィンド」
思いもよらない行動にでられ、カズトは驚きとっさに両手をクロスさせてガードをするのだが、凄まじい突風に吹き飛ばされてしまうのだった。
辺りの電柱はへし折れ、近くにあった植木鉢やゴミ箱は綺麗になくなっており、ハリケーンでも通ったのではないかと言わんばかりの惨状であった。
何もなくなってしまった路地裏で、楽しそうに笑う少女の笑い声が辺りに鳴り響いていた。
次回 第四章 漆黒の堕天使  下
※ここまで読んでいただきありがとうございます。
さて、今回はいかがだったでしょうか?
最近、新人章に応募しようかと悩んでいる作品でして、応募するとしばらくなろうで更新できない事を知り、完結させてからの方がいいのか悩んでおります。
同じような方がいたら是非メッセージなどお待ちしております。
では次回もお楽しみに。
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