おうこく!
第2章5 ミツバとヨツバ 中
看板を見ながらりのはため息吐いた。
そんなりのを見たアリアが、ため息を吐いた理由をたずねてくる。
「…いいアリア?残り256マスという事は、絶対にトランプが足りないって事。つまり、どこかでトランプを補充しなくてはいけないって事なのよ」
「そんなマスがあるのか?」
「ないとは言えない。けど、強制的に補充になる方法ならある」
アゴに手をあて、りのはアリアに説明をする。
「ジョーカー以外のカードを全て使いきった場合、墓場からカードを全て補充しなくてはいけないっていうルールよ」
「つまり、どういうことなのじゃ?」
「いい?私達の手元に残っているトランプだけではゴールは難しい。チャレンジマスや進みマスに止まって、何マスか進める可能性もあるけど、逆も考えられるのよ」
後退マスや、スタート地点に戻される可能性も考えられる。当然、スタート地点に戻されるとなれば、ジョーカーの出番となるわけなのだが…
「待って。墓場にあるカードを全てって事は、ジョーカーも該当するって事かしら?」
「クスクスクス。その通り」
「スクスクスク。やはり貴方は優秀ね」
「ミツバにヨツバ!?りの!コヤツら追いついて来おったわ」
りのが考えていると、ミツバとヨツバが後ろのマスに止まって声をかけてきた。
「スクスクスク。カードを全て使ってしまいましたわ」
「クスクスクス。墓場からカードを回収っと」
このままではマズイ。
残り256マスということを考えると、いいタイミングでの補充であった。
「考えても仕方がないわ。アリア。行きましょう」
りのはトランプを引いて、先に進む事にした。
ギブアップするか?と、一瞬脳裏に浮かんだが、勝負は最後まで何があるのか分からない。
それに、一度最後まで行く必要があると判断したからであった。
ーーーーーーーー
先に進むりの達であったが、遂にトランプを全て使いきってしまう。
ルールに乗っ取り、墓場から全てのトランプを回収するのだが、ゴールまで残り100をきっていた。
「これは仕方ないわ」
ルールなのだから仕方がない。
そう自分に言い聞かせ、りのはトランプを引く。
引いたトランプは8だ。
8マス進んで行くと、スタート地点に戻りマスに止まってしまう。
仕方がないので、ジョーカーを使って回避するも、次に引いたカードを見て言葉を失ってしまう。
引いたトランプの数字は5である。
進む前に目の前を見ると、またしてもスタート地点に戻りマスである事が発覚したのだった。
ゴールに近づくにつれ、スタート地点に戻りマスが多いのは、すごろくゲームならば当たり前なのだろう。
これも仕方がないと、ジョーカーを使って回避する。ジョーカーを全て使いきってしまったが、ゴール目前で、スタート地点に戻されるわけにはいかない。ミツバとヨツバはすぐ近くにいるのだから…そう自分に言い聞かせ、りのは再びトランプを引くのであった。
ーーーーーーーー
ゴール目前まで来たりのであったが、当然トランプは大量に残ってしまっている。
その為、ゴールまでの道ではない別ルートへと案内される事となった。
【ゲーム終了です。お疲れ様でした。全プレイヤーはスタート地点へと案内します】
別ルートへの看板を見ていたりのに対し、そんな言葉がかけられた。
ポワッと身体が光ったかと思った次の瞬間、目も開けていられないほどの光が発生する。
「キャ……あれ?ここは…スタート地点?」
「クスクスクス。お疲れ様でした」
「スクスクスク。残念でした」
目を開けて辺りを見渡していると、ミツバとヨツバがそんな言葉をかけてきた。
「そっか…負けちゃったのね…」
ミツバとヨツバがゴールをした為、ゲームが終了したのだった。悔しい気持ちもあるが、久しぶりにゲームをした所為か、どこか晴れやかな気分であった。
「クスクスクス。では、約束通り」
「スクスクスク。持ちモノをいただきます」
負けたりのに対し、罰ゲームを要求するミツバとヨツバ。りのは腰につけている万歩計を取り出し、ミツバとヨツバに差し出した。
「はい、これ。万歩計っていうのよ」
約束は約束であり、万歩計など必要ないと思っているりのは、特に気にする事なく手渡した…だがしかし。
「クスクスクス。何を言っているのですか?」
「スクスクスク。勘違いですよ?」
「え?」
背中を合わせ、それぞれが口元に手をやり、可笑しそうに笑うミツバとヨツバ。その言葉に固まるりの。
「スクスクスク。私達は持ちモノと申しました」
「クスクスクス。モノはモノでもモノではない」
「だから持ちモノって、これでしょ?ま、まさかアンタ達…ブラを要求しているの!?」
両手で胸を隠し、りのは二人から一歩退いた。
目を細めて警戒するりのの隣を指さしながら、ミツバとヨツバは告げる。
「クスクスクス。もらうのは妖精さん」
「スクスクスク。物ではなく者」
「だ、ダメよ!!だ、第一、アリアは私の持ちモノじゃないじゃない」
当然、りのは講義する。
「クスクスクス。いいかしら?お姉さん」
「スクスクスク。地面を見てみて」
ミツバが地面に何かを書いていく。
ヨツバに指示されたように、りのは地面をジッと見つめた…すると、地面に文字が浮かびあがる。
お姉さんの持ち者、と。
「クスクスクス。万歩計は者かしら?」
「スクスクスク。いいえ、万歩計は物です」
何だか怪しい気配がする。
りのの心臓が大きな音をたて、鼓動が早くなっていく。
「持ち物っていったら、物であって者ではないじゃない!」
「スクスクスク。お姉さん?」
「クスクスクス。確認した?」
「……!?」
確認はしていない。
それでも、こんな騙し討ちみたいな卑劣なやり方で、アリアを取られるわけにはいかない。
何て返せばいいのか悩むりのに対し、更に追い討ちをかけるミツバとヨツバ。
「クスクスクス。何を言っても、もう遅い」
「スクスクスク。ここはトランプ王国」
『ルールは絶対に遵守される』
そう宣言するミツバとヨツバに対し、りのは何かないかと考えるのであった。
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