おうこく!
第2章4 クローバー 中
りのとアリアは、トランプすごろくというゲームをやる事になった。
簡単に説明するなら通常のすごろくに、トランプを使用するゲームである。
「この、最初の5ターンは同時にって言うのは何故なの?」
唯一、ひっかかるのはここであった。
すごろくに関わらず、通常こういったゲームではターン制といって、交代しながら進めていくものなのだが、このトランプすごろくは違うらしい。
「クスクスクス。だってその方が」
「スクスクスク。面白いじゃない」
理由を聞いて、納得してしまった。
例えば先攻のチームが6を出し、いい事が起きたとしよう。
そうなると後攻のチームは、6が出ますように!と祈るだろう。
それじゃぁ面白くないとミツバとヨツバは言う。
それはそれで面白いとりのは思うのだが、考え方は人それぞれだと思っているので、何も言わなかった。
何故面白いと思うのかと説明するならば、6が出ますようにと祈るプレイヤーを、皆んなで見ながら、6が出たら出たで面白いし、出なかったら出なかったで面白いと思う。
そもそも、すごろくの醍醐味ってそこではないのだろうか?そう思いながらも、ルールだと言われてしまう以上、特に反論する事もできない。
楽しみに来たのではない。
謎を、解明しにきたのだ。
「クスクスクス。では、コレを」
「スクスクスク。さぁ始めましょう」
「コレは?」
りのが受け取ったのは、白い布であった。
丁度、教科書サイズぐらいの布を広げ、りのはたずねた。
「スクスクスク。それで互いが何をしているか解る」
「クスクスクス。スタートの合図でプレイヤーが何処にいるかが映されます」
ミツバとヨツバはそう伝えると、スタートと同時に宣言する。
宣言すると、白い布にマップと、ミツバヨツバ、りのアリアと、表示された。
「なるほどね。とりあえずやってみましょう」
こうして、トランプすごろくは幕をあける。
ーーーーーーーーーー
同時にトランプを山から一枚引く。
「ドロー」
「クスクスクス。ドローだって」
「スクスクスク。ドローだって」
「え!?違うの!?」
若干顔を赤く染めるりの。
遊戯王好きなら解ってもらえるはずなのだが、どうやらミツバとヨツバは知らないらしい。
「クスクスクス。お好きにどうぞ」
「スクスクスク。私達はダイヤの4」
「私は・・ダイヤのK。つまり13ね」
「お〜りの!やるではないか!」
引いたトランプの、数字通りマスを進む。
4マス進むミツバとヨツバのマスの上には、3進むと表示されている。
そして、3進むと何も書いていないマスに止まった。
「何も書いていないマスは、何も起こらないってわけね」
こうやって、ゲームのルールを確認しながら、りのはゲームを理解していく。
「1.2.3・・13っと」
「星型のマスじゃな」
13マス進むと、星型のマスの上に止まる。
りのが足をつけると、パンパカパーンという、ファンファーレと共に、チャレンジマス〜という、猫型ロボットのような声が聞こえてきた。
「チャレンジマスってなんじゃ!?」
驚くりのとアリアの前に、星型の人形がやってきた。
「初めまして。僕はヒトデン」
「スターじゃないの!?」
「スターだなんて、恐れおおい」
どうやら星型ではなく、ヒトデ型のマスだったらしい。
「それじゃぁ早速、ルールを説明するね」
このマスではある事にチャレンジし、成功したなら報酬が貰え、失敗したら罰ゲームがあるらしい。
そして失敗した場合、回避するならジョーカーを使えるという事らしい。
「今回のチャレンジはこれだ」
これだの後に、ワンツースリーと思わず言ってしまいそうな、そんな掛け声とともにホワイトボードを渡されるりの。
「はかない夢のはかないを漢字にしてくれ。成功したら2進む。失敗したら一回休みだよ」
チャレンジマスとはこういう事だと、りのは理解した。
「はかないじゃと。り、りの!難易度が高いのではないのか!!」
「フッフフ。アーハッハッハ!いいアリア?漢字には覚え方があるのよ」
そう言って、りのはホワイトボードに文字を書き始める。
「私がチームメイトで良かったわね。え〜っと、はかない夢だったわね。いいアリア?人の夢と書いて儚いと覚えるといいわ」
「何故、人なのじゃ?」
「それは・・人は夢を見るからじゃない?」
「ワシも見るぞ?」
「・・見るんだ。多分だけど、寝てる時の夢じゃないからなんじゃないかしら」
りのは自分の考えを伝える。
通常人は、夢をみる。
保育士やアイドル。
ラノベ作家だったりと色々だ。
しかし、それが叶う人間はごく僅かしかいない。
だからこそ、はかないという漢字ができたのではないだろうか。
「と、とりあえず、書いちゃうからね」
アリアと議論しても仕方がない。
りのが作った訳ではないのだ。
しかし、考えてみれば漢字とは不思議だと、思わないだろうか?
例えば悲しいという漢字。
心を非難するのだ。
相手に非難されて、心が悲しいという事なのだろうが、だとするならば、非難した相手は哀しいで、非難された私は悲しいという事なのだろうか?
国語の先生に今度聞いてみようと、りのは書きながら考えた。
「普通は非難ではなく、否定と言うがな」
「あっ。そっか・・あれ?聞こえてた?」
どうやら、声に出ていたらしい。
ポツリと呟くアリアの言葉に、顔が赤くなるりの。
「はいは〜い。では結果発表〜!成功です」
ダッタラ〜ン的な音にのせて、成功と言ったヒトデンは手を振りながら、何処かへと行ってしまった。
ともあれ、チャレンジマスを成功させたりのは2マス進む。
2マス進む先は、何も書いていないマスであった。
「どうやら、何マス進むの後は無印が多いみたいね」
目の前には、1マス戻るの文字があり、先ほどのミツバとヨツバチームも、進んだ後は無印であった。
この事から、りのはそう推測する。
「クスクスクス。後4ターンは同時に引く」
「スクスクスク。その後は競争」
左の腕輪から、声が聞こえてくる。
その言葉を聞いて、アリアがりのに質問をする。
「何故、5回は同時になんじゃろな」
アリアの質問に、りのはアゴに手をあてながら答える。
「多分だけど、5回でルールを把握させるのが目的なのかも」
ゲームとは、数回すれば大体どういったゲームなのか、どうすればいゲームなのかが理解できる。
りのはそう考え、アリアに答えた。
例えば、今回のこのゲームについて考えるならば、どういったゲームかは考える必要など無い。
トランプを使った、すごろくである。
どうすればいいゲームなのかというならば、先にトランプを全て使用し、ゴールしたチームが勝ちという事である。
「今回、私はこのゲームを知っていたけど、アリアは知らなかったわよね?きっとそういったプレイヤーに対しての配慮なんだと思う」
「ワシなら1回で覚えるがな」
「ハイハイ。ドローっと」
「あー!!ワシが引きたかったのに!!」
りのが引いた瞬間、アリアがりのの頭をペシペシ叩く。
「ごめん、ごめん。次はアリアが引きなよ」
そう言いながら、引いたトランプの数字を確認すると、スペードのKであった。
「お、おぉ…やるではないか」
「フッフフ。日頃のおこないってやつね」
腰に手をあて、トランプを天にかかげながら高笑いするりの。
日頃のおこないが悪いから、地獄行きになりかけているのでは?と言うアリアのつぶやきは、聞いていなかった。
ーーーーーーーー
13マス進み、1戻るマスに止まった為、1マス戻る。
「クスクスクス。差がついてしまいました」
「スクスクスク。負けちゃうかな?かな?」
「ワシが13を出して差を広げてくれるわい」
オリャーという掛け声と共に、アリアはトランプを引く。
「ア、アリア・・」
「何じゃ?いい数字じゃったのか?」
「コレよ、コレ!!」
「・・・ま、まぁたまにはあるじゃろな」
アリアが引いた数字分進み、1マス戻る。
アリアが引いたのは、スペードのAであった。
「つ、次じゃ次!!」
オリャーと言う掛け声と共に、再びトランプを引くアリア。
引いた数字はクローバーのAであった。
ある意味すごい事なのだが、今は勝負の最中であり、相手より1マスでも多く進んでおきたい所でもあった。
「ア、アリア!?ま、まずいわよ」
りのは気づいた。
今は4ターン目の最中である。
この先何マスあるか解らないが、1マス進む数字をすでに2回使ってしまっている。
「お腹が空いたのか?」
「ちが・・わなくないけどそうじゃなくて・・」
通常、1マス進む為にはAを4枚所持していなくてはならない。
何故ならば、ゴールまで残り1マスの際に使えるのはこの4枚だけである。
例えば、ゴールまで残り2マスだったとしよう。
2を引くか、Aを2回引かないとゴールできない。
カードの枚数でいえば8枚。
同様に、ゴールまで残り3マスだった場合は、3を引くか、2とAを1回ずつ引くか、Aを3回引くかしないとゴールできない。
カードの枚数でいえば12枚。
そして、Aの代わりになるカードは存在しないという事である。
つまり、Aはとても重要なカードだという事である。
「なるほどのぅ。しかしまだ残り2枚あるじゃろ」
「そ、そうなんだけど・・」
トランプは全部で54枚あり、4枚使用した為、残りは50枚である。
50枚の内Aは2枚残っている為、確率でいうのであれば、50分の2=25分の1の確率である。
「ワシに任せておれ・・オリャー」
「・・ア、アリア」
顔を引きつらせるりの。
トランプの数字は、ハートのAであった。
ーーーーーーー
アリアの有り得ないヒキのおかげで、ミツバとヨツバチームが追いついてきた。
丁度、りの達がいるマスに止まった。
「クスクスクス。5ターンあってKを2回使用したというのに」
「スクスクスク。まだこんな所にいるなんて」
「ぐぬぬ・・」
返す言葉が見つからないとは、この事である。
Kを2枚使用したという事は、2ターンで、26マス進んだという事であり、現在りのアリアチームは27マス目である。
つまり3ターンの間に、1マスしか進んでいないという事だ。
「スクスクスク。5ターン以降は布を見ながらになるわ」
「クスクスクス。ペアーチームの名前の数字を見て頂戴」
ヨツバとミツバに言われた通りに布を広げると、名前の上に、赤く塗り潰された5という数字がある。
「クスクスクス。私達が1枚引くと」
「あっ!6に変わった」
黒い文字で6と書かれている。
「スクスクスク。ここからはターン制。1回休みの場合は青くなり、チャレンジマスの場合、黄色くなる」
「クスクスクス。チャレンジマスには制限時間がない。しかし、ここからはターン制」
「なるほどね。制限時間がないという事は、終わるまで待たないといけないのね。でもそれじゃあ・・」
「クスクスクス。相手がチャレンジ中は5分後に1枚カードを引く」
「つまり1時間かかってしまったら、相手は12回トランプを引けるという事ね」
通常のすごろくとは違うルールである。
2時間もかかってしまったら、負けは確定してしまうだろう。
「スクスクスク。うまくジョーカーを使う事ね」
チャレンジ中は、5分経つと腕輪から音がなる仕組みらしい。
「クスクスクス。私達は11」
嬉しそうに、トランプを見せるヨツバ。
りのは深呼吸をして、トランプを1枚引く。
「私達は13ね・・」
またしてもKを引いたりのであったが、りのの表情は浮かない顔をしていた。
「やったのぉって何じゃ?何故浮かない顔をしておるのじゃ?」
アリアは喜び、りのの頬に、キスのご褒美でもやろうかと思ったのだが、りのの浮かない表情を見て止まる。
「スクスクスク。どうやらお姉さんはこのゲームを理解し始めているようね」
「クスクスクス。それに比べて妖精さんったら」
「な、なんじゃと!!」
クスクスクス。スクスクスク。
アリアを見て笑うヨツバとミツバ。
「アリア!行きましょう」
ヨツバとミツバに、くって掛かろうとするアリアにりのは軽く注意をし、マスを歩きだした。
「クスクスクス。先攻、後攻のトランプ勝負を忘れてしまいましたね」
「スクスクスク。先攻でも後攻でも結果は同じ」
ヨツバとミツバは、声を揃えて宣言する。
私達の勝利は、揺るがないと。
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