おうこく!
第2章3 森の外 下
どれくらい歩いたか解らない。
今更ながら、万歩計をキチンとつけておくべきだったかと後悔するりのであったが、もはやそんな事はどうでも良い。
「・・やっと、やっと抜けた」
森に入り、歩き出してから何時間かかったかは解らないが、遂に森を抜ける事に成功したりのとアリア。
アリアは、りのの頬に抱きついてきた。
「よ、良くやったの」
アリア自身、森を抜けた事よりも、りのが無事に立っている事自体が嬉しかった。
「け、結構・・ギリ・・ギリだったけどね」
両足はプルプル震えている。
座ってしまおうかとも考えたが、ここで座ってしまったらしばらく立てない気がした為、両手を両膝にのせて息を整える。
森に入る前は荒野だった。
現在りのの目の前にあるのは、不思議な光景であり、遠くに建物が見える。
建物が見える事じたいは喜ばしい事なのだが、また、歩かないといけないのかと思うと、落ち込むりの。
そして、この不思議な光景である。
「ね、ねぇアリア?私が疲れているから、こんな変なものが見えているとか、そんな馬鹿な話しじゃないわよね?」
「・・安心せい。ワシにもしかと見えておる」
地面には、何かマスみたいなものが描かれており、そこには色が塗ってあったり、何か模様が描いてあったりした。
例えるならば、ボードゲームの盤上みたいである。
「ど、どういうこと?何かすごろくみたいな感じだけど」
「すごろく?なんじゃそれは?」
どうやらアリアは、すごろくというゲームを知らないらしい。
仕方なくりのは、アリアにすごろくというゲームの遊び方を説明する。
すごろくゲーム
遊び方は大きく分けて2つある。
1つ、先にゴールをする。
2つ、お金を多く稼いでゴールする。
プレイヤーはどちらかのルールを決め、サイコロ、もしくはルーレットを回し、出目によってマスを進んでいく。
例えばサイコロを振り、6がでたら6進む。
こんな感じである。
「楽しいのか・・それ?」
「まぁまぁ。ルールはまだあるのよ」
マスを進んでいくと、マスごとにかかれている内容の事が強制的におこなわれる。
例えば、先ほど6進んだとして、そのマスにかいてあった内容が、一回休みだったなら、そのマスにとまったプレイヤーは、強制的に休みになる。
「なるほど。王様ゲームみたいな感じじゃな」
「すごろくは知らないくせに、王様ゲームは知ってるのね」
「ん?あぁ。流行っていたからな」
「流行ってたの⁉︎」
妖精界が心配になってしまう。
「と、とにかく、こんな感じのルールかしら」
妖精界の事が非常に気になるりのだったが、あまり深入りするのもどうかと思い、一つ咳払いをして話しを戻した。
「ん?何故、顔を赤くするのじゃ?」
「い、いいでしょ別に。それよりも、何故ここにこんなものがあるのかしら?」
問題はそこであった。
ーーーーーーーーーー
必死の思いで、森を抜けたりのとアリアを待ち受けていたのは、すごろくみたいなマスであった。
すごろくみたいなと表現したのは、何が書かれているかが解らないからである。
定番のボードゲームといえば、やはり人生ゲームと呼ばれるゲームだろう。
「人生ゲーム⁇」
人生ゲームとは、各プレイヤーは、所持金をいくらか持ってスタートし、ルーレットを回し、でた出目を進んで行き、お金を多く獲得してゴールしたプレイヤーが勝利となるゲームである。
しかし、ゴールしたら終わりではなく、全員がゴールするまで終わらないのが、このゲームの醍醐味と言っていいだろう。
ようは、ゴールをしたプレイヤーは、全員がゴールするまでの間、ルーレットかサイコロを振り、出目をもとにお金がもらえるのだ。
職業によっては、大金を手にする事もあるが貰えない職業もある。
「ま、まぁ、だいたいこんな感じかしら」
「面白そうじゃの」
一通り説明をすると、アリアがこのゲームにくいついてきた。
自分の説明を聞いて、相手が興味をもってもらえると、とても嬉しい。
できる事なら少しだけアリアに付き合ってあげたいのだが、残念ながらサイコロもルーレットも手元にない。
どこかに代わりになりそうな物がないかと、辺りをキョロキョロ見渡すりの。
「ね、ねぇアリア。あそこに何かあるみたい」
少し離れた所に、二つの柱が建っているのが見えた。
本当は歩きたくはないのだが、気になったりのは、柱を目指して歩き始めた。
ーーーーーーーーーーーー
柱の近くまで行くと、人影が目に入ってきた。
りのは急いで隠れようとしたのだが、隠れる場所がない。
「お、落ちつくのよ!りの」
りのは一つ、大きく深呼吸をする。
深呼吸を終えるとりのは意を決して、人影へと歩き始めた。
「クスクスクス。お客さんみたいだよヨツバ」
「スクスクスク。お客さんみたいだねミツバ」
「ひぃっ‼︎」
柱の近くまで歩いていると、柱の陰から話し声が聞こえてきた。
思わず、悲鳴をあげてしまうりの。
「クスクスクス。ヨツバが驚かせてごめんなさい」
「スクスクスク。ミツバが驚かせてごめんなさい」
悲鳴をあげてしまったりのに対し、謝罪しながら姿を現わす二つの影。
現われたのは、2羽のウサギであった。
(か、可愛い・・・。)
「初めまして、お姉さん。私がミツバ」
「初めまして、お姉さん。私がヨツバ」
ぺこりと頭を下げるウサギ達。
ミツバと名乗ったウサギには、三つ葉のクローバーのアクセサリーが右耳ついており、ヨツバと名乗ったウサギには、四つ葉のクローバーのアクセサリーが左耳ついていた。
「は、初めまして。私は水瀬りのといいます」
「ふむ。ワシはアリアじゃ」
ウサギ達を見習って、りのとアリアは自己紹介をする。
自己紹介が終わるとりのは、ここで何をしているのかをたずねた。
「クスクスクス。ヨツバは国の番人よ」
「スクスクスク。ミツバは国の番人よ」
「・・・番人?」
番人?っとりのが首をかしげると、2羽のウサギは嬉しそうに笑う。
そして、柱の上の方を指さして、りのに宣言をする。
「スクスクスク。ようこそトランプ王国へ」
「クスクスクス。だけどここを通る事は出来ません」
「・・・え?」
思わず聞き直してしまう。
「クスクスクス。私達はトランプ王国の番人」
「スクスクスク。通れるのは私達が認めた者だけ」
「ど、どうやったら、認められるの?」
ようやく、自分が何を言われているのか理解するりの。
認められる条件を聞き直したりのに対し、2羽のウサギは声を揃えて答えを返した。
『私達に勝利したものだけ‼︎さぁ勝負』
「う、嘘・・でしょ⁉︎」
ただでさえクタクタだというのに、いきなり勝負を挑まれてしまうりのであった。
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