おうこく!
第2章3 森の外 上
『登場人物』
水瀬 りの
現役高校生アイドル。不運な事故にあって死んでしまったが、神さまが半分生き返らせてくれた。
生き返る為には、何もない荒野に国を作る事である。
アリア
りのの手助けをする為、神さまからいただいた妖精。
1日3回まで、お助けアイテムをだしてくれる。
【本編】
りのは緊張していた。
「だ、大丈夫・・だよね?」
神さまからいただいた魔法のおかげで、色々な人?動物?と話せるようになったりの。
毎日通っている森ではあるのだが、話せるようになってから、初めての森である。
ゴン太や、モッキーのように、何かの生まれ変わりが、この森の中にいるかもしれないと思うと、緊張してしまうのも、仕方がなかった。
「うむ。大丈夫じゃ」
「一応聞くけど、その根拠は?」
「ない!」
「・・・・」
りのの頭の上で、自信満々に告げるアリアであるが、相変わらずの調子であった。
しかし、少し緊張がほぐれたりの。
いつもと変わらないアリアを見て、少し安心したからである。
右手を胸にあて、軽く深呼吸し、りのは森の中へと入っていく。
ーーーーーーーーーーーー
いつもと同じ景色なのに、いつもと違ってみえるのは何故だろうか。
りのは、一歩一歩慎重になりながら、森を歩いて行く。
「気持ちの問題なのかしら」
病は気からという言葉があるように、普段とは何も変わらない事や、風景が違って見えた事がないだろうか?
例えば、落ち込んだ時に見る白い花と、ハイテンションで見る白い花とでは違って見える。
要は受け取り方の問題ではないだろうか。
りのはいつも通りの森にいる。
しかし、昨日とは違って言語が解るりの。
いつものようにはいかなかった。
「お嬢ちゃん。迷子かい?」
「キャッ!?」
「おやおや。驚かせてしまったね。すまない」
森の中を歩いていたりのは、右から急に声をかけられた為、驚いて思わず体が仰け反ってしまう。
バッっと、飛び退いて声がする方に顔を向けると、他の木とは違う色をした大きな木が、りのに向かって喋りかけてきたようだ。
「あっ、いえ。こちらこそすいません」
驚かせてすまないと謝罪する木に、りのも少し大げさだったかなと思い、頭を下げる。
(こんな木・・あったかしら)
いつも通りの森で、いつも通りの道を歩いていたりの。
当然、いつも通りなのだから、何かが変わっていれば、それはいつも通りではない。
「それで、迷子にでもなったのかい。お嬢ちゃん」
「あっ、いえ。迷子ではないのですが・・あの。失礼な事をお聞きしますが、もしかしてお爺さんも、生まれ変わりか何か・・ですか?」
最後の方で少し歯切れが悪くなるりの。
声で、ご年配の方だと思い、お爺さんと言ったが、違ったらマズイ。
先に年齢から聞くべきだったかと思い、歯切れが悪くなってしまった。
「ほ、ほ、ほ。お嬢ちゃん、いい事を教えてあげよう。なぁに、年寄りの戯言よ」
「いい事・・ですか?」
最後の年寄りと言う言葉で、お爺さんと言ったのは、大丈夫だったと安心するりの。
いい事とは何なのだろうかと、首をチョコンと傾けて、言葉を待った。
「言葉遣いだけが礼儀ではないよ」
「す、すいません」
りのは慌てて頭を下げた。
そんなりのを見て、お爺さんは嬉しそうに続けた。
「お嬢ちゃんは素直じゃの。どれ、先ほどの質問じゃが、生まれ変わりではない」
「そ、そうなんですか」
生まれ変わりの人が集まる世界なのかと思っていたりのにとって、これは貴重な情報であった。
「お嬢ちゃん。生まれ変わりの人ばかりだとしたらどうだね?」
お爺さんに質問されたりのは考える。
そもそも生まれ変われたとした場合、全員が生まれ変われるだろうか?
「気付いたようだね。お嬢ちゃん。天国と地獄を信じるかね?」
「はい。信じています」
りのは即答する。
実際に神様から聞いているということもあるが、神様に会う前からあると信じている。
「ふむ。では天国と地獄の違いは何だと思うかね?」
「違い・・ですか?」
天国とは良いイメージであり、地獄とは悪いイメージである。
しかし、何故そういうイメージなのかを聞かれると、答えに詰まってしまう。
りのが困っていると判断したお爺さんは、再度質問する。
「ほほ。質問を変えようかね。では、どちらにも行けない場合はどうかな?」
「それじゃぁ・・生まれ変わりって」
りのは驚きを隠せなかった。
生まれ変わりがあったらいいなっと思っていたりの。
しかし、生まれ変わりの理由が、どっちにも行けない為なのだとしたら・・。
「お嬢ちゃん。もし天国に行けるとした場合、生まれ変わりたいと思うかね?」
「そ、それは・・思わないかもしれません」
天国がどんな所なのかは解らない。
しかし、いい所だと思っているし、いい所であってほしいと思っている。
いい所に行けると解っていて、引き返す人がいるのだろうか?
「なら逆に、地獄行きの人を神様は生まれ変わらせると思うかね?」
「た、確かに・・」
地獄に行く人は悪い事をした人であろう。
悪い事をした人が生まれ変わった場合、また悪い事をするかもしれない。
悪い事をしたのだから当然、反省しなくてはならない。
反省させる為には、生き返らせる事はしないだろう。
「ま、待ってください。それじゃぁ・・私は・・」
りのの顔色が変わる。
もしかしたら自分は、この世界に生まれ変わっているのではないのかと思ったからだ。
「りの。それは無いから安心せい」
アリアがりのの鼻先をつつきながらそう告げてきた。
「ほほ。妖精さんの言う通りじゃよ」
「・・どうしてそう言い切れるんですか?」
「エロジジィの言ったことを思い出してみろ・・ジジィは言っておったじゃろ?本来あそこで、死ぬべき所じゃなかったと」
「お嬢ちゃんからは精気を感じるからのう」
アリアとお爺さんにそう言われて、少し安心するりの。
神様はこう言った。
本来地獄行きだったのだが、いいことをして、死んでしまったりのに、いい事をしたのに地獄に行けと言うのは間違っていると。
この荒野に国を作れば、生き返らせてあげると。
つまりどういう事なのかと言うと、生まれ変わりではなく、よみがえらせるという事だ。
「それじゃあ、お爺さんは何なんですか?」
「ワシか?この森の長じゃよ」
「・・・え?・・ええええ!」
今日いちの衝撃であった。
りのは慌ててお辞儀を繰り返す。
「あ、あの。いつもお世話になっております」
温泉だったり、湖だったり、食べ物だったりと、りのはこの森に大変お世話になっている為、深々とお辞儀をする。
「おぉ!ジジィ偉い奴だったのか」
「こ、コラ!アリア」
「ほ、ほ、ほ。妖精さんはどうやらおてんばさんのようじゃの」
「・・すいません」
少し頬を赤らめ、りのは謝罪する。
何だか、アリアの保護者になった気分であった。
「さて、お嬢ちゃん。生まれ変わるのは、未練がある人じゃよ」
「未練・・ですか?」
「左様。未練もしくは使命じゃな」
お爺さんは続ける。
そもそも人が生まれるのには意味がある。
しかし、その使命を果たせずに死んでしまった人が、生まれ変わりを果たして、また使命をもらう。
例えば、明日、交通事故に巻き込まれ、死んでしまったとしよう。
特に悪い事もいい事もしていない。
神さまはそんな人達に対し、生まれ変わりを提案するのだという。
しかし、生まれ変わるには条件がいくつかあるのだそうだ。
「それは何なんですか?」
「ふむ。それはワシにも解らん」
「アリアは?何か知ってる?」
「知らん。まぁ、神のみぞ知るということじゃな」
今度ゴン太やモッキーに聞いてみようか・・。
嫌、聞けない。
お爺さんから聞かされた話しだと、未練があるからだと言っていた。
どんな未練なのかを聞くということが、躊躇われてしまう。
それにもし未練がなくなってしまったら?
いなくなってしまうかもしれない。
りのはうつむいた。
悲しい表情を見せない為に。
「お嬢ちゃん。もしも、誰かに助けを求められたら助けてあげなさい」
「それは・・もちろん・・です」
質問の意図が分からず、りのは首をかしげながら答えた。
「それによって、いなくなってしまうは、いい事じゃよ」
「!?」
お爺さんは、りのが何を考えていたのかがわかっていたようで、りのにアドバイスをする。
未練がある人に対し、積極的に助けるのではなく、助けてと言われたら助ければいいんだと。
「そうじゃな。ジジィはいい事を言うな」
「もう!アリア!」
「ほ、ほ、ほ。気にせんで良い。久しぶりに人と喋れて満足じゃわい。時にお嬢ちゃん。名は何と申す」
「水瀬りのです」
「良い名じゃ。また来ると良い」
「はい。ありがとうございます」
りのはぺこりと頭を下げ、その場を後にする。
この世界の謎が少しだが、解った気がした。
今ではない、遠くない未来にでも、ゴン太とモッキーに話しをしようと心に誓いながら、りのは歩きだした。
次回第2章3      森の外     中
水瀬 りの
現役高校生アイドル。不運な事故にあって死んでしまったが、神さまが半分生き返らせてくれた。
生き返る為には、何もない荒野に国を作る事である。
アリア
りのの手助けをする為、神さまからいただいた妖精。
1日3回まで、お助けアイテムをだしてくれる。
【本編】
りのは緊張していた。
「だ、大丈夫・・だよね?」
神さまからいただいた魔法のおかげで、色々な人?動物?と話せるようになったりの。
毎日通っている森ではあるのだが、話せるようになってから、初めての森である。
ゴン太や、モッキーのように、何かの生まれ変わりが、この森の中にいるかもしれないと思うと、緊張してしまうのも、仕方がなかった。
「うむ。大丈夫じゃ」
「一応聞くけど、その根拠は?」
「ない!」
「・・・・」
りのの頭の上で、自信満々に告げるアリアであるが、相変わらずの調子であった。
しかし、少し緊張がほぐれたりの。
いつもと変わらないアリアを見て、少し安心したからである。
右手を胸にあて、軽く深呼吸し、りのは森の中へと入っていく。
ーーーーーーーーーーーー
いつもと同じ景色なのに、いつもと違ってみえるのは何故だろうか。
りのは、一歩一歩慎重になりながら、森を歩いて行く。
「気持ちの問題なのかしら」
病は気からという言葉があるように、普段とは何も変わらない事や、風景が違って見えた事がないだろうか?
例えば、落ち込んだ時に見る白い花と、ハイテンションで見る白い花とでは違って見える。
要は受け取り方の問題ではないだろうか。
りのはいつも通りの森にいる。
しかし、昨日とは違って言語が解るりの。
いつものようにはいかなかった。
「お嬢ちゃん。迷子かい?」
「キャッ!?」
「おやおや。驚かせてしまったね。すまない」
森の中を歩いていたりのは、右から急に声をかけられた為、驚いて思わず体が仰け反ってしまう。
バッっと、飛び退いて声がする方に顔を向けると、他の木とは違う色をした大きな木が、りのに向かって喋りかけてきたようだ。
「あっ、いえ。こちらこそすいません」
驚かせてすまないと謝罪する木に、りのも少し大げさだったかなと思い、頭を下げる。
(こんな木・・あったかしら)
いつも通りの森で、いつも通りの道を歩いていたりの。
当然、いつも通りなのだから、何かが変わっていれば、それはいつも通りではない。
「それで、迷子にでもなったのかい。お嬢ちゃん」
「あっ、いえ。迷子ではないのですが・・あの。失礼な事をお聞きしますが、もしかしてお爺さんも、生まれ変わりか何か・・ですか?」
最後の方で少し歯切れが悪くなるりの。
声で、ご年配の方だと思い、お爺さんと言ったが、違ったらマズイ。
先に年齢から聞くべきだったかと思い、歯切れが悪くなってしまった。
「ほ、ほ、ほ。お嬢ちゃん、いい事を教えてあげよう。なぁに、年寄りの戯言よ」
「いい事・・ですか?」
最後の年寄りと言う言葉で、お爺さんと言ったのは、大丈夫だったと安心するりの。
いい事とは何なのだろうかと、首をチョコンと傾けて、言葉を待った。
「言葉遣いだけが礼儀ではないよ」
「す、すいません」
りのは慌てて頭を下げた。
そんなりのを見て、お爺さんは嬉しそうに続けた。
「お嬢ちゃんは素直じゃの。どれ、先ほどの質問じゃが、生まれ変わりではない」
「そ、そうなんですか」
生まれ変わりの人が集まる世界なのかと思っていたりのにとって、これは貴重な情報であった。
「お嬢ちゃん。生まれ変わりの人ばかりだとしたらどうだね?」
お爺さんに質問されたりのは考える。
そもそも生まれ変われたとした場合、全員が生まれ変われるだろうか?
「気付いたようだね。お嬢ちゃん。天国と地獄を信じるかね?」
「はい。信じています」
りのは即答する。
実際に神様から聞いているということもあるが、神様に会う前からあると信じている。
「ふむ。では天国と地獄の違いは何だと思うかね?」
「違い・・ですか?」
天国とは良いイメージであり、地獄とは悪いイメージである。
しかし、何故そういうイメージなのかを聞かれると、答えに詰まってしまう。
りのが困っていると判断したお爺さんは、再度質問する。
「ほほ。質問を変えようかね。では、どちらにも行けない場合はどうかな?」
「それじゃぁ・・生まれ変わりって」
りのは驚きを隠せなかった。
生まれ変わりがあったらいいなっと思っていたりの。
しかし、生まれ変わりの理由が、どっちにも行けない為なのだとしたら・・。
「お嬢ちゃん。もし天国に行けるとした場合、生まれ変わりたいと思うかね?」
「そ、それは・・思わないかもしれません」
天国がどんな所なのかは解らない。
しかし、いい所だと思っているし、いい所であってほしいと思っている。
いい所に行けると解っていて、引き返す人がいるのだろうか?
「なら逆に、地獄行きの人を神様は生まれ変わらせると思うかね?」
「た、確かに・・」
地獄に行く人は悪い事をした人であろう。
悪い事をした人が生まれ変わった場合、また悪い事をするかもしれない。
悪い事をしたのだから当然、反省しなくてはならない。
反省させる為には、生き返らせる事はしないだろう。
「ま、待ってください。それじゃぁ・・私は・・」
りのの顔色が変わる。
もしかしたら自分は、この世界に生まれ変わっているのではないのかと思ったからだ。
「りの。それは無いから安心せい」
アリアがりのの鼻先をつつきながらそう告げてきた。
「ほほ。妖精さんの言う通りじゃよ」
「・・どうしてそう言い切れるんですか?」
「エロジジィの言ったことを思い出してみろ・・ジジィは言っておったじゃろ?本来あそこで、死ぬべき所じゃなかったと」
「お嬢ちゃんからは精気を感じるからのう」
アリアとお爺さんにそう言われて、少し安心するりの。
神様はこう言った。
本来地獄行きだったのだが、いいことをして、死んでしまったりのに、いい事をしたのに地獄に行けと言うのは間違っていると。
この荒野に国を作れば、生き返らせてあげると。
つまりどういう事なのかと言うと、生まれ変わりではなく、よみがえらせるという事だ。
「それじゃあ、お爺さんは何なんですか?」
「ワシか?この森の長じゃよ」
「・・・え?・・ええええ!」
今日いちの衝撃であった。
りのは慌ててお辞儀を繰り返す。
「あ、あの。いつもお世話になっております」
温泉だったり、湖だったり、食べ物だったりと、りのはこの森に大変お世話になっている為、深々とお辞儀をする。
「おぉ!ジジィ偉い奴だったのか」
「こ、コラ!アリア」
「ほ、ほ、ほ。妖精さんはどうやらおてんばさんのようじゃの」
「・・すいません」
少し頬を赤らめ、りのは謝罪する。
何だか、アリアの保護者になった気分であった。
「さて、お嬢ちゃん。生まれ変わるのは、未練がある人じゃよ」
「未練・・ですか?」
「左様。未練もしくは使命じゃな」
お爺さんは続ける。
そもそも人が生まれるのには意味がある。
しかし、その使命を果たせずに死んでしまった人が、生まれ変わりを果たして、また使命をもらう。
例えば、明日、交通事故に巻き込まれ、死んでしまったとしよう。
特に悪い事もいい事もしていない。
神さまはそんな人達に対し、生まれ変わりを提案するのだという。
しかし、生まれ変わるには条件がいくつかあるのだそうだ。
「それは何なんですか?」
「ふむ。それはワシにも解らん」
「アリアは?何か知ってる?」
「知らん。まぁ、神のみぞ知るということじゃな」
今度ゴン太やモッキーに聞いてみようか・・。
嫌、聞けない。
お爺さんから聞かされた話しだと、未練があるからだと言っていた。
どんな未練なのかを聞くということが、躊躇われてしまう。
それにもし未練がなくなってしまったら?
いなくなってしまうかもしれない。
りのはうつむいた。
悲しい表情を見せない為に。
「お嬢ちゃん。もしも、誰かに助けを求められたら助けてあげなさい」
「それは・・もちろん・・です」
質問の意図が分からず、りのは首をかしげながら答えた。
「それによって、いなくなってしまうは、いい事じゃよ」
「!?」
お爺さんは、りのが何を考えていたのかがわかっていたようで、りのにアドバイスをする。
未練がある人に対し、積極的に助けるのではなく、助けてと言われたら助ければいいんだと。
「そうじゃな。ジジィはいい事を言うな」
「もう!アリア!」
「ほ、ほ、ほ。気にせんで良い。久しぶりに人と喋れて満足じゃわい。時にお嬢ちゃん。名は何と申す」
「水瀬りのです」
「良い名じゃ。また来ると良い」
「はい。ありがとうございます」
りのはぺこりと頭を下げ、その場を後にする。
この世界の謎が少しだが、解った気がした。
今ではない、遠くない未来にでも、ゴン太とモッキーに話しをしようと心に誓いながら、りのは歩きだした。
次回第2章3      森の外     中
コメント