おうこく!
第2章2 新世界 下
モッキーを慰めていた、りのとアリアだったのだが、騒がしいと注意を受けてしまう。
注意をしてきた人物は、牛小屋から現れた牛、ゴン太であった。
「なぁに見惚れてるのよぉ」
肩肘を付き、背中を小屋にあずけ、足をくの字にしながらそう告げるゴン太に、りのはただただ呆然としていた。
モッキーに続いて、ゴン太まで喋っている。
やはり、神さまからいただいた言語とは、動物達と話せるということなのだろう。
「オィオィりのっちYOビシっと言ってやった方がいいZE」
「え?」
ゴン太に対し、何て声をかけようかと考えていたりのに、モッキーが話しかけてきた。
「牛らしくしろってYO」
「アンタもね」
猿らしくしろと、心の中で呟きながら、りのはゴン太に頭を下げた。
騒がしくしてしまったのは事実であり、ゴン太がうるさいと言うのだから、一応謝った方がいいのだろう。
「あら〜りのっぺは謝らなくていいのよぉん。オィ猿!聞こえてんぞ」
りのは固まってしまう。
ゴン太の喋り方からして、おそらく・・と考えていたりのだったが、アリアが質問する。
「ゴン太!男なら男らしく喋らないとダメじゃぞ」
ゴン太の鼻先で、指を1本立てながら、アリアはシャキッとしなさい!と注意をする。
「あたし、男じゃなぁいしぃ。オカマだしぃ。無理って言うかぁ。」
「オ、オカマ?」
思わず聞き返してしまうりの。
「そうよ。前世はスナックのチーママだったわよ。なぁによぉ?オカマが珍しいのかぃ?」
「ちょ、ちょっと待って!!今前世って言った?」
聞き間違えで無ければ、とても重要な事である。
りのは、ゴン太に近づいて行って、質問する。
「そうでーす。あたし、スナックのチーママでしたぁーー。ああぁ。酒飲みたい」
最後の方だけ、とても貫禄のある渋い声。
ビクっとしながら、りのはモッキーを見る。
「オ?俺っちはYO前世はDJだったんYO」
チーママ?DJ?何を言っているの?昨日までウキーとか、モーとしか言ってなかったじゃない。
りのは急に怖くなってしまう。
例えばの話しである。
自分の部屋で飼っていたペットが、急に喋りだしたとしよう。
普通はまず驚くであろう。
次に、質問などをするかもしれない。
しかし、実は生まれ変わったんだ!みたいな事を急に言われてしまったら、誰だって、怖くなるのではないだろうか?
「いいかいりのっぺ。落ちついて良く聞くといい」
ゴン太は、りのが震えている事に気づいたようで、草の根元を口に加えながら、りのに語りかけてきた。
まるで、くわえたばこのような感じで、自分に語り始めたゴン太に向かって、りのはコクリとうなずく。
「生まれ変わりってもんを、アンタは信じるかぃ?」
「そりぁ。まぁ。あったらいいと思うけど」
途切れ、途切れになってしまったが、りのはゴン太の質問に答えた。
りの自身、生まれかわりがあったらいいなと、そう思う。
しかし、実は私、昔〇〇でした!何て事を言われた事もなければ、そんな出来事があったということを聞いた事もない。
その為少し、歯切れの悪い言い方になってしまったりの。
「ハッキリしない子だねぇ。じゃぁ質問を変えてあげようかぃ。生まれ変われるなら、アンタは何になりたいんだい?」
「女の子で、職業はアイドルです」
今度は迷わず、ハキハキと答えるりの。
この質問は誰しも、一度はあるのではないだろうか。
生まれ変われるなら、次は何に生まれかわりたいか。
りえとも、そんな話しばかりしていた時があった。
絶対女の子に生まれ変わりたいと話す時もあれば、男の子に生まれ変わってみたいと思う時もある。
こう思ってしまうのは、女の子には、女の子の楽しみ方や楽しさがあり、男の子には男の子の楽しみ方があるからだ。
「それと同じで、アタシは生まれ変われるなら、牛になりたいと願ったのさ」
りのには全く理解ができない話しであった。
そんなりのに構わず、ゴン太は続ける。
「大自然の中で、たまに乳搾り体験に来る子供の相手をしてやりながら、のんびりと暮らす。コレが生まれ変わったらやりたかった事だったかしら」
ゴン太の話しを聞いていたりのは、納得してしまう。
もしも、動物に生まれ変わるなら何になりたいかと、りえと話しをした事がある。
二人の意見は見事に一致した。
鳥になって、大空を羽ばたいてみたいと。
それと同じで、ゴン太は大自然の中で、のんびりと過ごす牛に、憧れを抱いていたのではないだろうか。
「りの、りの。ねぇ、りの!」
「あっ、アリアごめん!何かよう?」
「何かじゃないぞ!!これはチャンスじゃ」
アリアはりのの鼻先にやってきて、両手を広げて、りのにチャンスだと伝える。
しかし、りのには何の事だかが、さっぱり解らない。
「りのが言ったんじゃない!一人では生きていけない、自分一人では、限界だって・・」
確かにそう言ったが、何がチャンスなのか?
モッキーの前世がDJで、ゴン太の前世が、オカマでスナックのママで・・あ!!
アゴに手をあてながら、ブツブツ呟いていたりのは、ある事に気がついた。
ハッっとした表情を浮かべるりのを見て、アリアは満面の笑みを浮かべる。
『生まれ変わり』
りのとアリアの声がハモる。
もしかしたら、この世界は「生まれ変わりに」あふれている世界なのかもしれない。
だとするならば、大工さんや、美容師さん。
お医者さんや、コックさんの生まれ変わりの人を探せば、りの帝国は完成するかもしれない。
希望がみえた瞬間であった。
「りの!」「アリア」
人間と妖精なので、抱きしめ合う事は出来ないが、気持ちはそんな感じである。
喜ぶりのとアリアだったのだが、一つの疑問が浮かぶ。
「それで、どうするのだ?」
「どうするって?」
アリアの質問の意味が解らず、りのは笑顔で聞き返す。
アリアは、コヤツ大丈夫か?と不安な表情を浮かべながら、理由を説明する。
「運良く見つけたとして、どうするのだ」
「・・・あっ!!」
大工さんの生まれ変わりかどうかは、色んな動物に話しかければ、見つかるかもしれない。
問題はその後である。
りの帝国のお城を作ってほしいと言って、ホイホイついてきてくれるとは限らない。
「落ち込むなYOりのっち」
「あぁ飲みてぇぇ」
「りの!りの!とりあえずご飯にしよう!」
DJとオカマと妖精と人間。
こんなんで大丈夫かしらと、更に落ち込むりのではあったのだが、りの帝国が少しだが確実に動き出した瞬間であった。
「そ、そうね。とりあえず、森に行きましょう」
ご飯もそうだが、モッキーやゴン太以外の動物に会ってみたい。
怖くないと言えば、嘘になる。
しかし、動き出さないと何も始まらない。
りのは一つ深呼吸をし、森に向かって歩きだした。
「あら〜行くのなら、何か美味しい食べ物をお願いよん」
「オ、オレっちは行かないZEロザリーに会っちまうかもしれないからyo・・ロザリーーー」
どうやら、ゴン太とモッキーはついてこないようだ。
りのは、アリアを見る。
「・・心配しないでもついて行ってやるぞ」
顔に不安だと、でてしまっていたようだ。
少し顔を赤くして、りのはアリアに告げる。
「ありがとう」
「べ、別に!ホラ行くわよ」
こうしてりのは希望を胸に、森へ入って行くのであった。
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