おうこく!
第2章1 神さまの訪問
『登場人物』
水瀬 りの
現役高校生アイドル。不運な事故にあって死んでしまったが、神さまが半分生き返らせてくれた。
生き返る為には、何もない荒野に国を作る事である。
アリア
りのの手助けをする為、神さまからいただいた妖精。
1日3回まで、お助けアイテムをだしてくれる。
【本編】
りのが死んでから、丁度2週間が過ぎた日の事であった。
いつものようにアリアを連れて、森に入って湖で顔を洗ったり、歯を磨いたりするりの。
ひしゃくですくった水で、口をすすいでから、手桶に新しい水を組み直して、牛小屋に帰る。
帰ったらスイカの種を植えた畑と、四花に水をやり、体操をするのが、りのの朝の日課となっていた。
「ぷーらぷら。ぷーらぷら」
干物妹うまるちゃんの、エンディング画面を脳内放送しながら、元気良く踊るりの。
流石は現役アイドル。
キレっキレな動きを見せるりの。
体操のはずが、ダンスに見えてしまう。
そんなりのをよそに、頭の上に乗っているアリアは、アクビをしながら、ぐでーんとしていた。
「アリアもほら!一緒に踊ろうよ!」
「ふにゃ。体操してたんじゃなかったのか?」
目元を擦りながら、アリアは首を横にふり、りのの提案を断る。
朝は大体こんな感じであった。
朝からお昼までは、牛小屋から森までの穴を掘る作業に明け暮れ、お昼になれば、お昼ご飯と夜ご飯の確保に明け暮れる。
基本的には、果物をとったり、魚を釣ったり、卵をとったり、食べられそうな草を探しまわったりし、温泉に入って牛小屋に帰る。
夜になれば、焚き火をたいて、夜ご飯を食べて寝る。
明日はどうしようか?
明日はこうしようよ!
アリアと話し合いながら、気づいたら眠ってしまっている。
決して、楽しいわけではない。
携帯もない、雑誌もない、大好きなアニメも見れない生活。
しかし、寂しいと感じないのは、りのが一人ぼっちではないからだろう。
生意気な妖精に、怠け者の牛、頼りになる大臣にりのは心の中で感謝し、そして今日が終わりを告げる。
そんなある日の事であった。
いつものように、アニソンを替え歌にしながら、くわを振って穴を掘っていると、どこからか声が聞こえてきた。
「お〜い。久しぶりじゃのぉ」
どこかで聞いた声なのだが、姿が見当たらない。
「何?アリア?」
「私がこんな汚い声なわけないだろ」
「汚いとは何じゃ!!」『うわ!?』
突然姿を現した人物を見て、りのとアリアが驚く。
現れたのは、りのを半分生き返らせてくれた神さまであった。
半分生き返らせてくれたというのは、実際りのは死んでしまったのだが、神さまのはからいで、何もない荒野に国を作れば、生き返らせてくれると、約束してくれた為である。
りのは、異世界では生きていて、現実世界では植物状態になっている。
国を作れば、現実世界に返してくれるという意味だろうと、勝手に解釈していた。
「お、お久しぶりです!神さま」
相手は、自分の運命を握っている相手だ。
なるべく失礼のないようにと、丁寧にお辞儀をする。
「な、何しに来た!ジジィ」
そんなりのの心配をよそに、アリアは失礼な態度で接している。
よりにもよって、自分の頭の上で、失礼な態度をとるアリアに、イラッとするりの。
(私が、生き返れるかどうかがかかっているのよ)
解ってる?と目で合図を送りたいが、アリアはりのの頭の上だ。
丁度、つむじの部分から、ベーっとするアリア。
しかしりのの心配は、杞憂におわる。
「相変わらずのおてんばぶりじゃのうアリア」
白く長い髭をさすりながら神さまは、りのの顔の前に降りてきた。
初めて見た時は、ラジコンのオモチャか何かと勘違いしてしまったが、ちゃんと見ると筋斗雲だとわかる。
「・・か、神さま。失礼を存じ上げます。何をしに来られたのですか?」
「く〜。無理をせんでよい。お主、国語が苦手であろう。馬鹿がバレるわい」
しに来られたではなく、なさりに来られたが正しい使い方であり、りのは失礼のないようにと、敬語を使ったつもりだったが、どうやら違ったらしい。
「ふむ。りのよ。アレから2週間経つがどうじゃ?何か困ったりしておるか?」
この質問に、りのはホッと胸を撫で下ろした。
神さまがもし視察にきたとか、テストをしに来たとか言い出したら、間違いなく不合格で地獄行きである。
「どうって言われても、困っているとしか言えないです」
堅苦しい言葉をやめ、りのは正直な気持ちを打ち明けた。
相手は神さまだ。
嘘をついてもバレるだろう。
しかしそこが問題ではない。
神さまに嘘をつく行為が、駄目というより罰当たりな気がして、りのは正直に話す事にした。
「何に困っているのじゃ?」
「そりゃぁ色々です。お米かパンが食べたいですし、夜は暗くて寝る事しかできません」
りのはこれまでの事を、神さまに話した。
羽の生えた蛇に襲われたり、猿に襲われそうになったり、変な草に会ったりと色々だ。
りのの話しを一通り聞いた神さまは、りのにたずねる。
「ふむ。少しは大変な思いを体験できたようじゃの」
少しじゃないです!とりのは言いかけたが、言う前に神さまが続ける。
「ここでの暮らしはどうじゃ?」
さっきと同じような質問に戸惑うりの。
「現実世界なんかより、こっちの方がいいんじゃないかのぅ?」
「それは絶対にないです」
「ホッホホ。その気持ちが大事じゃ。忘れるでないぞ」
人は慣れていく生き物である。
それはいい意味でもあるし、悪い意味でもある。
最初は否定していても、それが当たり前になってくると、否定から賛成に変わってしまう。
諦めたとかではない。
当たり前の環境が、否定している自分がおかしいのかと、思わせる。
神さまは諦めるなと、念を押してくれているのだ。
りのはハイ!と返事をする。
そんな二人のやりとりを見ていたアリアが、声をかける。
「そんな事より何しにきたジジィ」
「ちょっとアリア!神さまに何て失礼な事を言うの」
流石に黙っていられない。
自分の運命を握っている神さまに対して、その態度は何だと、りのは怒った。
「りのは騙されておるだけじゃ!そのジジィはのぞきの常習犯じゃぞ!」
「う、嘘ですよね?神さま・・」
自分の運命を握っている人が、のぞきなどしないし、神さまがそんな事をするはずがないと、りのは神さまを見た。
「そんな事はせんわい。ワシは、下界の様子をうかがっておるだけじゃ」
「ほら!みなさい!神さまがそんな犯罪を犯すはずがないじゃない!」
「女風呂の様子をうかがってどうするのだ?」
「・・・・」
少しの間、流れる沈黙。
りのの目は軽蔑の目へと変わっていく。
「た、たまたまじゃ!たまたまのぞいたらお風呂だっただけじゃわい」
「エロジジィ!早く帰れ」
ベーっとするアリア。
あまり変な事しないで!と考えるが、同じ女性としては、アリアを援護するべきなのだろう。
しかしそれでも、相手は神さまだ。
りのは何も言わず我慢する。
「りの気をつけろ!エロジジィにのぞかれていたかもしれんぞ」
「え?」
思い返せば、温泉に入る時は全裸だ。
どうせ誰も見ていないんだからと、全裸で湖に飛び込んだりもした。
全裸で、謎のダンスの開発をしたりして、遊んだりもした。
それはマズイ。
私は現役アイドルであり、トップアイドルでもある。
のぞかれてもおかしくない立場にいる。
りのは、自分の胸を隠すようにしながら、神さまから距離をとったのだが、神さまから衝撃発言が飛び出る。
「そんなペチャパイに興味などないわい」
『なんですって!!』
りのとアリアがハモる。
神さまがのぞいていなかった事は良かった。
しかし、女性として譲れないものがあるのだ。
「ふむ。そんな事より、りのよ。大事な知らせをしにワシは来たのじゃ」
「大事な事?」「ごまかされるなりの」
そんな二人のやり取りをよそに、神さまは続ける。
「りのよ。国は作れそうかの?」
「・・・作ります。りの帝国は必ず完成させます」
本当は作れませんと言いたい。
しかし、作らないと生き返れないのだ。
「りの帝国のぉ・・ふむ。りのよ。自分なりに頑張ってはいるみたいじゃがこのままでは作れんぞ」
「・・つ、作れない・・ですか」
「勘違いするでない。国は誰でも作れるものじゃ」
りのの表情を見た神さまは、りのの頭を杖で軽く小突き、 そんな事を言ってきた。
これは以前、アリアに教わった事でもある。
「どういう意味ですか?」
どういう事ではなく、どういう意味なのかをたずねるりの。
「ふむ。りの帝国はもうできておる。しかし、このままでは地獄行きになってしまうじゃろう」
神さまはそういいながら、杖を畑や四花に向ける。
それは、りのが自分なりに考え、アリアのお助けアイテムや知恵をかりて作った物である。
りのは何故地獄行きになるのかが解らず、神さまの次の言葉を待っていた。
「りのよ。国とはなんじゃと思うておる?」
この言葉を聞いたりのは、固まってしまった。
国とは何か?
ちゃんと考えた事など、もちろんない。
正確にいえば、国を作れと言われて考えたが、それは違う意味で考えていた事であり、神さまが今聞いているのは違う意味だろうと、りのは理解した。
「・・国とは、人ではないでしょうか」
自信がある答えではなかった。
神さまとアリアから向けられる目。
「ふむ。何故そう思う?」
りのは、自分の考えを正直に話した。
人は一人では生きていけない。
それを死んでからというもの、毎日痛感させられる。
アリアがいなければ、きっと自分は・・。
「なんじゃその目は?バナナはやらんぞ」
「い、いらないわよ」
アリアと目が合ってつい、いつものように返してしまう。
りのは小さく深呼吸して、神さまに向き合った。
「何かをやるにしても、一人では絶対にできません」
りのは自信たっぷりに宣言する。
「ホッホホ。それに気づけただけでも大したものじゃわい。最近の若い者は、すぐ誰かに頼ったりする癖がある。しかも頼ってばかりのくせに、何でも自分でできると思うておるじゃろ」
そう言われてりのは、何も返せなかった。
思い当たる節がたしかにあったからだ。
神さまは嬉しそうに笑い、りのに向けて杖をふる。
「よいかりの。今、この世界の言葉をそなたに授けた。この世界で人を集めるのじゃ」
「ひ、人がいるんですか!!」
それが本当なら、今度から全裸ダンスは封印しなければならない。
いゃ、それよりも、人がいるんだったら会っておきたい。
りのはソワソワしだした。
「人ではないぞ?まぁ会ってみれば解るわい」
「か、神さま!何処に行かれるんですか!」
神さまは、りのの頭上を高く飛んでいく。
「暴れん坊黄門がはじまってしまうのじゃ。頑張るがよい」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
聞きたい事が山ほどある。
両親の事、ファンの事、りえの事。
神さまは突然やって来て、突然去っていく。
この時りのは、いつかアリアもそうなってしまうのではないだろうかと、心の中がざわついてしまっていた。
何故このタイミングで、そんな事を想像してしまったのだろうか。
いつかがこないでほしい。
バナナを食べる小さな妖精を見ながら、りのは心の中で祈るのであった。
次回第2章2      新世界       上
水瀬 りの
現役高校生アイドル。不運な事故にあって死んでしまったが、神さまが半分生き返らせてくれた。
生き返る為には、何もない荒野に国を作る事である。
アリア
りのの手助けをする為、神さまからいただいた妖精。
1日3回まで、お助けアイテムをだしてくれる。
【本編】
りのが死んでから、丁度2週間が過ぎた日の事であった。
いつものようにアリアを連れて、森に入って湖で顔を洗ったり、歯を磨いたりするりの。
ひしゃくですくった水で、口をすすいでから、手桶に新しい水を組み直して、牛小屋に帰る。
帰ったらスイカの種を植えた畑と、四花に水をやり、体操をするのが、りのの朝の日課となっていた。
「ぷーらぷら。ぷーらぷら」
干物妹うまるちゃんの、エンディング画面を脳内放送しながら、元気良く踊るりの。
流石は現役アイドル。
キレっキレな動きを見せるりの。
体操のはずが、ダンスに見えてしまう。
そんなりのをよそに、頭の上に乗っているアリアは、アクビをしながら、ぐでーんとしていた。
「アリアもほら!一緒に踊ろうよ!」
「ふにゃ。体操してたんじゃなかったのか?」
目元を擦りながら、アリアは首を横にふり、りのの提案を断る。
朝は大体こんな感じであった。
朝からお昼までは、牛小屋から森までの穴を掘る作業に明け暮れ、お昼になれば、お昼ご飯と夜ご飯の確保に明け暮れる。
基本的には、果物をとったり、魚を釣ったり、卵をとったり、食べられそうな草を探しまわったりし、温泉に入って牛小屋に帰る。
夜になれば、焚き火をたいて、夜ご飯を食べて寝る。
明日はどうしようか?
明日はこうしようよ!
アリアと話し合いながら、気づいたら眠ってしまっている。
決して、楽しいわけではない。
携帯もない、雑誌もない、大好きなアニメも見れない生活。
しかし、寂しいと感じないのは、りのが一人ぼっちではないからだろう。
生意気な妖精に、怠け者の牛、頼りになる大臣にりのは心の中で感謝し、そして今日が終わりを告げる。
そんなある日の事であった。
いつものように、アニソンを替え歌にしながら、くわを振って穴を掘っていると、どこからか声が聞こえてきた。
「お〜い。久しぶりじゃのぉ」
どこかで聞いた声なのだが、姿が見当たらない。
「何?アリア?」
「私がこんな汚い声なわけないだろ」
「汚いとは何じゃ!!」『うわ!?』
突然姿を現した人物を見て、りのとアリアが驚く。
現れたのは、りのを半分生き返らせてくれた神さまであった。
半分生き返らせてくれたというのは、実際りのは死んでしまったのだが、神さまのはからいで、何もない荒野に国を作れば、生き返らせてくれると、約束してくれた為である。
りのは、異世界では生きていて、現実世界では植物状態になっている。
国を作れば、現実世界に返してくれるという意味だろうと、勝手に解釈していた。
「お、お久しぶりです!神さま」
相手は、自分の運命を握っている相手だ。
なるべく失礼のないようにと、丁寧にお辞儀をする。
「な、何しに来た!ジジィ」
そんなりのの心配をよそに、アリアは失礼な態度で接している。
よりにもよって、自分の頭の上で、失礼な態度をとるアリアに、イラッとするりの。
(私が、生き返れるかどうかがかかっているのよ)
解ってる?と目で合図を送りたいが、アリアはりのの頭の上だ。
丁度、つむじの部分から、ベーっとするアリア。
しかしりのの心配は、杞憂におわる。
「相変わらずのおてんばぶりじゃのうアリア」
白く長い髭をさすりながら神さまは、りのの顔の前に降りてきた。
初めて見た時は、ラジコンのオモチャか何かと勘違いしてしまったが、ちゃんと見ると筋斗雲だとわかる。
「・・か、神さま。失礼を存じ上げます。何をしに来られたのですか?」
「く〜。無理をせんでよい。お主、国語が苦手であろう。馬鹿がバレるわい」
しに来られたではなく、なさりに来られたが正しい使い方であり、りのは失礼のないようにと、敬語を使ったつもりだったが、どうやら違ったらしい。
「ふむ。りのよ。アレから2週間経つがどうじゃ?何か困ったりしておるか?」
この質問に、りのはホッと胸を撫で下ろした。
神さまがもし視察にきたとか、テストをしに来たとか言い出したら、間違いなく不合格で地獄行きである。
「どうって言われても、困っているとしか言えないです」
堅苦しい言葉をやめ、りのは正直な気持ちを打ち明けた。
相手は神さまだ。
嘘をついてもバレるだろう。
しかしそこが問題ではない。
神さまに嘘をつく行為が、駄目というより罰当たりな気がして、りのは正直に話す事にした。
「何に困っているのじゃ?」
「そりゃぁ色々です。お米かパンが食べたいですし、夜は暗くて寝る事しかできません」
りのはこれまでの事を、神さまに話した。
羽の生えた蛇に襲われたり、猿に襲われそうになったり、変な草に会ったりと色々だ。
りのの話しを一通り聞いた神さまは、りのにたずねる。
「ふむ。少しは大変な思いを体験できたようじゃの」
少しじゃないです!とりのは言いかけたが、言う前に神さまが続ける。
「ここでの暮らしはどうじゃ?」
さっきと同じような質問に戸惑うりの。
「現実世界なんかより、こっちの方がいいんじゃないかのぅ?」
「それは絶対にないです」
「ホッホホ。その気持ちが大事じゃ。忘れるでないぞ」
人は慣れていく生き物である。
それはいい意味でもあるし、悪い意味でもある。
最初は否定していても、それが当たり前になってくると、否定から賛成に変わってしまう。
諦めたとかではない。
当たり前の環境が、否定している自分がおかしいのかと、思わせる。
神さまは諦めるなと、念を押してくれているのだ。
りのはハイ!と返事をする。
そんな二人のやりとりを見ていたアリアが、声をかける。
「そんな事より何しにきたジジィ」
「ちょっとアリア!神さまに何て失礼な事を言うの」
流石に黙っていられない。
自分の運命を握っている神さまに対して、その態度は何だと、りのは怒った。
「りのは騙されておるだけじゃ!そのジジィはのぞきの常習犯じゃぞ!」
「う、嘘ですよね?神さま・・」
自分の運命を握っている人が、のぞきなどしないし、神さまがそんな事をするはずがないと、りのは神さまを見た。
「そんな事はせんわい。ワシは、下界の様子をうかがっておるだけじゃ」
「ほら!みなさい!神さまがそんな犯罪を犯すはずがないじゃない!」
「女風呂の様子をうかがってどうするのだ?」
「・・・・」
少しの間、流れる沈黙。
りのの目は軽蔑の目へと変わっていく。
「た、たまたまじゃ!たまたまのぞいたらお風呂だっただけじゃわい」
「エロジジィ!早く帰れ」
ベーっとするアリア。
あまり変な事しないで!と考えるが、同じ女性としては、アリアを援護するべきなのだろう。
しかしそれでも、相手は神さまだ。
りのは何も言わず我慢する。
「りの気をつけろ!エロジジィにのぞかれていたかもしれんぞ」
「え?」
思い返せば、温泉に入る時は全裸だ。
どうせ誰も見ていないんだからと、全裸で湖に飛び込んだりもした。
全裸で、謎のダンスの開発をしたりして、遊んだりもした。
それはマズイ。
私は現役アイドルであり、トップアイドルでもある。
のぞかれてもおかしくない立場にいる。
りのは、自分の胸を隠すようにしながら、神さまから距離をとったのだが、神さまから衝撃発言が飛び出る。
「そんなペチャパイに興味などないわい」
『なんですって!!』
りのとアリアがハモる。
神さまがのぞいていなかった事は良かった。
しかし、女性として譲れないものがあるのだ。
「ふむ。そんな事より、りのよ。大事な知らせをしにワシは来たのじゃ」
「大事な事?」「ごまかされるなりの」
そんな二人のやり取りをよそに、神さまは続ける。
「りのよ。国は作れそうかの?」
「・・・作ります。りの帝国は必ず完成させます」
本当は作れませんと言いたい。
しかし、作らないと生き返れないのだ。
「りの帝国のぉ・・ふむ。りのよ。自分なりに頑張ってはいるみたいじゃがこのままでは作れんぞ」
「・・つ、作れない・・ですか」
「勘違いするでない。国は誰でも作れるものじゃ」
りのの表情を見た神さまは、りのの頭を杖で軽く小突き、 そんな事を言ってきた。
これは以前、アリアに教わった事でもある。
「どういう意味ですか?」
どういう事ではなく、どういう意味なのかをたずねるりの。
「ふむ。りの帝国はもうできておる。しかし、このままでは地獄行きになってしまうじゃろう」
神さまはそういいながら、杖を畑や四花に向ける。
それは、りのが自分なりに考え、アリアのお助けアイテムや知恵をかりて作った物である。
りのは何故地獄行きになるのかが解らず、神さまの次の言葉を待っていた。
「りのよ。国とはなんじゃと思うておる?」
この言葉を聞いたりのは、固まってしまった。
国とは何か?
ちゃんと考えた事など、もちろんない。
正確にいえば、国を作れと言われて考えたが、それは違う意味で考えていた事であり、神さまが今聞いているのは違う意味だろうと、りのは理解した。
「・・国とは、人ではないでしょうか」
自信がある答えではなかった。
神さまとアリアから向けられる目。
「ふむ。何故そう思う?」
りのは、自分の考えを正直に話した。
人は一人では生きていけない。
それを死んでからというもの、毎日痛感させられる。
アリアがいなければ、きっと自分は・・。
「なんじゃその目は?バナナはやらんぞ」
「い、いらないわよ」
アリアと目が合ってつい、いつものように返してしまう。
りのは小さく深呼吸して、神さまに向き合った。
「何かをやるにしても、一人では絶対にできません」
りのは自信たっぷりに宣言する。
「ホッホホ。それに気づけただけでも大したものじゃわい。最近の若い者は、すぐ誰かに頼ったりする癖がある。しかも頼ってばかりのくせに、何でも自分でできると思うておるじゃろ」
そう言われてりのは、何も返せなかった。
思い当たる節がたしかにあったからだ。
神さまは嬉しそうに笑い、りのに向けて杖をふる。
「よいかりの。今、この世界の言葉をそなたに授けた。この世界で人を集めるのじゃ」
「ひ、人がいるんですか!!」
それが本当なら、今度から全裸ダンスは封印しなければならない。
いゃ、それよりも、人がいるんだったら会っておきたい。
りのはソワソワしだした。
「人ではないぞ?まぁ会ってみれば解るわい」
「か、神さま!何処に行かれるんですか!」
神さまは、りのの頭上を高く飛んでいく。
「暴れん坊黄門がはじまってしまうのじゃ。頑張るがよい」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
聞きたい事が山ほどある。
両親の事、ファンの事、りえの事。
神さまは突然やって来て、突然去っていく。
この時りのは、いつかアリアもそうなってしまうのではないだろうかと、心の中がざわついてしまっていた。
何故このタイミングで、そんな事を想像してしまったのだろうか。
いつかがこないでほしい。
バナナを食べる小さな妖精を見ながら、りのは心の中で祈るのであった。
次回第2章2      新世界       上
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