おうこく!

伊達\\u3000虎浩

第1章9 魚釣り

『登場人物』
 水瀬 りの
 現役高校生アイドル。不運な事故にあって死んでしまったが、神さまが半分生き返らせてくれた。
 生き返る為には、何もない荒野に国を作る事である。
 アリア
 りのの手助けをする為、神さまからいただいた妖精。
 1日3回まで、お助けアイテムをだしてくれる。


【本編】


 無理無理無理無理無理。


 りのは、大きく首を横に振って、石を閉じる。
 アリアのアドバイスもあり、えさを取る為、石を持ち上げたのだが、持ち上げた瞬間、ブワっと虫たちが逃げて行く。


 それを見たりのは鳥肌が立ち、石をバンと戻す。
 これで何回目になるだろうか。
 見兼ねたアリアはりのに声をかけた。


「なぁ?日が暮れてしまうぞ」


「わ、解っているわよ!でも、でも」


 石をそ〜っと持ち上げるりの。
 石を何回もバンバンとしてしまった為、りのが石を持ち上げてみると・・・虫たちが潰れてしまっていた。


「ヤダヤダヤダ!なんで半分の身体でくねくねするのよ!」


 ミミズが、半分になりながらも、くねくねと動いていた。
 しかし、これは逆にえさとしては最適である。
 ミミズを釣り針につける為には、半分でいいのだ。


 りのは、泣きながら石を置いた。
 虫なんて、虫なんて、この世から消えてしまえばいいのにと、りのはブツブツと呟いてしまう。


 ぐ〜。


 りののお腹が鳴った。


 このままではらちがあかないと、りのは意を決し、石をどけた。
 石をどけると、ミミズの動きがとまっており、それを見たりのは、泣きながら釣り針にミミズをつけるのであった。


「ぬるぬるする・・やだよ」


 ある国では、これを食べるというのだから、凄いとしかいいようがない。
 私なら死んでも無理。
 もし生き返ったら、真っ先にマネージャーにゲテモノNGと告げよう。


 なんとか、えさの取り付けに成功したりのは、釣り竿を投げ、急いで手を洗う。


 ひしゃくですくって、バシャバシャと手を洗う。
 きっと、ひしゃくを使っているから、手は清められているはず。


 ポジティブに考える事にしたりのは、竿を握ってあぐらをかいた。
 プカプカと浮かぶプラスチックのやつを眺めながら、りのはサバイバル本を広げる。


 プカプカと浮かぶやつとは、ウキとよばれるものである。
 ウキ釣りといって、魚が釣れると、水面にプカプカ浮いていたプラスチック(ウキ)が水中にひっこんで、魚が釣れてる事を、知らせてくれるのである。


 初心者の方は、このウキ釣りから始める事を、おススメする。
 上級者になると、魚がえさを食べている事が、竿の振動から解るらしい。


 サバイバル本を読みながら、りのはチラっとウキを見る。
 相変わらず、プカプカ浮いている為、りのはサバイバル本に目を向けた。


「釣るのはいいけどやっぱり、火がつかない事には、話しにならないわよね」


 火のつけ方のページをめくる。
 どれも難しそうだ。
 虫メガネで火をつける事が、一番自分に向いているとは思うのだが、時間がかかりすぎてしまう。
 それに、今から太陽は沈んでしまうのだ。
 夜中に火をつけれる方法でないと、意味がない。


「昔の人はどうしてたのかしら?」


 りのは本を読みながら、現代の有難さを噛み締めていた。


 蛇口をひねれば水が飲める。


 ライターを使えば簡単に火がつく。


 お風呂だって好きな時に入れるし、お腹が空けば、24時間営業のコンビニに行って、いつでも好きなだけ買えてしまう。


 自分が日頃、何げなく使っているものを、一つ一つを思い返し、有難さを噛み締めるりの。
 チラっと竿を見るが、まだウキはプカプカ浮いていた。




「う〜ん。何か間違っていたのかな?」


 竿を投げてから、10分はたっているはず。
 しかし、本に書いてあった事を思いだすりの。
 釣りをするなら、持久戦を覚悟しておく事と書いてあった。
 一日中釣れない事もあり、釣れなかった事を釣り用語で「ボウズ」とよぶ。


「・・・もう少し様子をみよう」


 りのは地面に寝転がって、空を見上げた。
 流れる雲を見上げ、涼しい風と草木の擦れる音を聞きながら、目を閉じていると眠くなってしまう。
 りのはうとうとしてしまう。


「り、りの!!竿、竿!」


 うとうとするりのを見て、アリアはりのをおこすべく、耳もとに飛んでいき、大声でりのをおこした。


「!!」


 りのはバッと起き竿を持つ。
 さっきまで、プカプカ浮いていたウキは水面に沈んでいた。
 慌てて、釣り竿を持ち上げるりの。
 竿はこれでもか、というぐらい曲がっていた。


 本来釣り竿は、真っ直ぐ伸びているのだが、魚が釣れると、魚が釣り糸を引っ張る為、真っ直ぐ伸びていた釣り竿は、曲線を描き、折れてしまうんじゃないかというぐらい曲がり、心配になってしまう。


 実際、その曲線で、魚の大きさが解る。
 大きな魚を大物とよぶのだが、その力はすごく、釣り竿をへし折る事もある。
 また、釣り糸が耐えきれなくなり、引きちぎられてしまう事もある。


 釣り糸が引きちぎられると、当然魚は釣り糸と一緒に、海深くまで行ってしまう為、重りや釣り針、ルアー釣りならルアーも、持って行ってしまうのだ。
 高い竿や、高いルアーを使っていた場合、そうなると、泣きたくなってしまう。
 かと言って、安い竿だとすぐ折れてしまう可能性がある為、釣り好きな人は悩み所なのである。
 魚に、逃げられる事を「バラす」とか「バレた」とかそういう釣り用語を使ったりする。


 りのの竿は凄い曲線を描いていた。
 両手に持って踏ん張るも、体ごと海に持っていかれそうになる。
 りのはサバイバル本の事を、思い出しながら、リールをゆっくり巻いていく。


 魚がかかった場合、魚との呼吸、タイミングが最も重要である。
 ずっとリールを巻いていたら、釣り糸は切れてしまう。
 解りやすく説明するならば、綱引きを思い出してほしい。
 魚は左に行こうとしているのに対し、自分は右に引っ張るのだから、当然糸は両方への負荷がかかり、ぷっつんと切れてしまうのだ。


 魚が左に行こうとしているなら逆らわず、魚が油断した所を一気に引く。
 正し、大きい魚の場合である事を、お忘れなく。


「う・・腕が・・」


 リールを巻いて、引っ張られるのを踏ん張り、またリールを巻くを繰り返していたりのは、腕が痺れてきた。
 何回か繰り返していた為、遂に魚が水面に姿を見せた。


「がんばれがんばれりーの!がんばれがんばれりーの!わー」


「何で部活風の応援なのよ」


 アリアはりのを応援する。
 自分の今夜の食事がかかっているのだ。
 しかし、どうやらお気に召さないようだ。
    アリアは考え、りのが気合いが入る掛け声をかける。


「どんどんドーナッツ!ドーンといこーー!」


「ドーンといこーーー!」


 神アニメのかけ声と共に、一気に竿を持ち上げる。
 アニメ好きならかけ声と言えばこれである。
 当然アニメ好きのりのの気合はマックスにあがり、魚を一気に引き上げた。


 歓喜するりのとアリア。
 残念ながら魚に詳しくない為、全てがタイに見えてしまう。
 しかし、ここで問題が発生する。


「わ、私が触れるわけないじゃない!!」


「それを言うなら、私は妖精なんだから、あんなの持てるわけなかろう」


 二人は釣り上げた魚が触れなかったのであった。


 第1章    10     火をつけよう


 ※ここまで読んでいただきありがとうございます。
 釣りについて、色々調べながら書きましたが、間違っていたらごめんなさい。
 ドーンといこーの台詞を言わせたく、釣りというものを、書きましたが、ちょっと説明くさい文になっていないか心配です。
 面白かったと思っていただけたなら幸いです。
 では次回もお楽しみに。



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