魔法×科学の反逆者

伊達\\u3000虎浩

第1章 レイの願い…⑧

 
 レオンに買われた私は、レイナという少女の物となった。自分の主人あるじが女の子だという事は私にとって、初めての事である。


「お名前はどうしましょう…うーん」


 人差し指を下唇に押し当てながら、レイナと呼ばれた少女は考える。


 パンッと両手を叩き、とても幸せそうな、嬉しそうな、そんな表情をしながら、レイナが口を開いた。


「貴女のお名前は、レイよ!ぜろ=レイ。今日から三人で、力を合わせて頑張りましょう」


 両手をあわせながら、首をちょこんと傾けるレイナに対し、レオンが口を開く。


「とてもいい名前だね。それじゃぁレイ、よろしくな」


 どうやら私は、レイという名前に変わったようだ。よろしくと言われた場合は、よろしくと返すのが普通だろうと考え、私は口を開いた。


「よろしくお願いします。レイナ様。レオン様」


 軽く腰を曲げ、頭を下げる私に対し、レイナが軽く注意をする。


「ダメよレイ。私達は兄妹なのだから、レイナ様とか、レオン様とかは禁止」


 可愛らしくほっぺたを膨らますレイナ。
 どうすべきか…頭の中で処理をしようとした私に、レオンが助け船を出してきた。


「ははは。レイナは俺をお兄様と呼ぶのにな」


「そ、それとこれとは別です…もぉ。お兄様の意地悪…」


「すまんすまん。レイ?」


 レイナの頭を撫でながら、レオンは私に声をかけてくる。何でしょうか?と、私は質問した。


「レイナは別に、意地悪で言っているんじゃないんだ。そうだなぁ…レイナはレイを、家族の一員にしたいんだと思う」


「…家族?」


「姉妹でもいい。とにかく、家族や姉妹の間に、堅苦しい挨拶や敬語は不要だ」


 不要だから使うなと言われては、私に断る理由はない。断る理由というより、断る権限がない。
 何故なら私は、買われた身である。


「ロボットだからとか、そういった考えもやめろ。姉妹や家族にそんな考えは不要だ」


 まるで、私の心を読んでいるかのような注意。


「…努力します」


 何に対して?


 自分で言っておきながら、私には分からなかった。何に対して努力をすればいいのだろうか。


「そうだわ。ねぇお兄様?レイに服を着せてあげたいのですが…」


「あぁ。ゆっくりしておいで」


 可愛らしくお辞儀をしたレイナは、私の腕を引っ張って、自分の部屋へと続く階段を駆け上がって行く。


 そんなレイナを見るレオンの表情は、何処か寂しそうな、悲しそうな、苦しそうな…何とも表現しづらい表情で、レオンはレイナを見送っていた。


 その表情を私は、何処かで見たような気がしてならなかった。


 きっと勘違いだろう。


 何故なら私は…ロボットだ。


 そんな感情が頭で理解出来たとしても、心には響かない。一つの情報として、処理されるだけだ。


 だからきっと、勘違いだ。


 この時の私は、レオンが何を考えていたのかを、理解できなかったのであった。

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