魔法×科学の反逆者

伊達\\u3000虎浩

第1章 レイの願い②

 
 初めて人を殺したのはこの時である。


「さぁーお待たせしました!今宵もイキのいい獲物達の殺し合いをー!とくと、ご覧ください!まずは、エントリーナンバー1番!」


  暗いトンネルのような所を、テクテク歩く私。
 暗闇の奥に見えるあの光の向こう側は、更なる地獄が待ち受けていると分かりながらも、それでも、ただひたすらあの光の向こうを目指して歩いて行く。


 出口に近づくにつれ、この向こうに人がいるということに私は気づいた。
 だからといって、立ち止まる理由になどならない。


 私は暗いトンネルを抜けだした。


「待ってましたー!」「おらー!いけー!」


 私が姿を現わすと、たくさんの罵声が浴びせられ、私の対角線上では、巨大な体をした男が一人、私を睨みつけている。


「それではーお待たせしました…レディーーーファイ!!」


 何が始まるのかと考える事はない。
 何故ならモリ・コウランから指導を受けていたからであった。


 今から行われる事、その意味を。


 2メートルはこえているであろう男は、私に向かって走りだした。


「ひねり潰してやる」


 両手を伸ばし、私の首を掴もうとする。
 それを難なくかわし、私は男の背後に周りこみ、男の首めがけて、思いっきり手刀を振り抜いた。


『うおーぉおおおお』


 吹き出す赤い鮮血。
 返り血を浴びながら私は、首が無くなった男が倒れていくのを無言で見守っている。


 "いいか?ここは犯罪者が集まるコロシアムだ。お前は3ヶ月間ここで、コイツらを公開処刑しろ"


 モリ・コウランはこう言っていたが…頭の中で処理をする。データーと照合し、この男は指名手配中の男だと判明した。


 だから何だというのだ。
 今思えばそうなのだが、この時の私は…


 "やれば出来るじゃねぇか。ほら、血を吹けよ…次も頼むぜ"


 初めて人から褒められた事が、嬉しかったのだと思われる。
 お掃除ロボットとして生まれた私は、褒められた事が無かった。
 初めて必要とされているという実感もまた、初めてのことであった。


 格闘術、剣術、暗殺術、ありとあらゆるものを叩きこまれる日々。
 いつものように感じる嫌悪感などない。
 残念ながら、魔法術は教えてもらえなかった。
 教えてもらえたところで、魔法者でも科学者でもない私には無縁の事であり、モリ・コウラン自身が、ただの一般人だった事もある。


 それからの3ヶ月間は、たくさんの人を殺す日々だった。


 3ヶ月が過ぎたある日の事である。


「よくやったな。今日からこっちで仕事しろ」


「…ありがとうございます」


 何に対してのお礼なのだろうか。
 頭の中で処理しきれない私に対し、モリは続ける。


「お前には潜入任務をやってもらう」


「潜入…任務?」


「そうだ。これを見ろ」


 渡されたのは1枚の写真で、写っていたのは、一人の男。


「こいつは人攫いだ。お前はコイツにワザと攫われて、始末して帰ってこい」


 断る事など出来ない。


 何故なら…何故なら?


 本当に断る事は出来ないのだろうか。
 この頃の私は、そんな事ばかり考えていた。

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