魔法×科学の反逆者
第1章 コウモリ
レイの過去を聞いたレオンとジャンヌ。
レイの意見が正しいのかどうかなど、2人には分からない。人の考え方はそれぞれだからである。
少しの時間が過ぎた頃、レオンが口を開いた。
「…レイ。右肩を見せてくれないか」
「構いませんが…何故ですか?」
何故かと聞かれたレオンであったが、それには答えなかった。
「いいから見せてみろ」
強引な言い分であったが、レイは特に気にしなかった。右肩ぐらいなら見られた所で別に、嫌悪感など湧く事はない。それに、相手はレオンだったからであった。
「すいませんが、背中のファスナーを下ろしてもらえませんか?」
レイは背中を向け、ファスナーに髪が引っかからないようにしながら、レオンに声をかけた。
レイナから、この手の依頼を受ける事が多いレオンは、特に気にせずファスナーを下ろしにかかる。
黒いメイド服から露わになる肌。
レイの事を、ロボットだと知らない人からすると、人間と見間違えてもおかしくはないだろうな…と、そんな事を考えながらレオンはファスナーを半分だけおろし、右肩が見えるようにと服をめくった。
服をめくると、お目当ての刺青が目に入る。
「ジャンヌ!見てくれ」
レオンはこの刺青が、本当にコウモリという組織の刺青なのかどうかの判断が出来ない。
レイに確認しようにも、鏡も携帯も持っていない。ならば知っているであろう人物、ジャンヌに確認をしてもらうしかない。
ジャンヌもそれを理解しているのか、特に文句を言う事もなく、レイの背後に回りこみ、レオンの手元を除き込んだ。
「どれどれ…」
刺青を見るだけであり、確認が出来るのは自分だけであった事から、ジャンヌは少し愉悦感に浸っている。
鼻歌とまではいかないが、その表情は明るい。
しかし、刺青を見たジャンヌの表情は、一変する。
「…し、ま…離れろ!レオン!」
「…な、何だ」
明るい表情は険しいものとなり、ジャンヌはレオンに飛びついた。いきなりの事で驚くレオン。
「クソ!私とした事が…すまないレオン」
耳元で囁かれる謝罪の言葉と同時にレイの右肩に、ある文字が浮かびあがる。
コウモリ羽の刺青は確かにあった。
なければジャンヌに確認など頼まない。
そのコウモリの羽の中央に"解"という文字が浮かびあがった時、レイの右肩が爆発する。
押し寄せてくる熱波、けたたましい音。
ジャンヌはレオンを守るべく、レオンの顔や両手を自分の胸元に押し付ける。
ジャンヌを待っていたのは、激痛であった。
「…オイ!ジャンヌ!レイ!」
慌ててジャンヌの体をどかすレオン。
床に倒れているジャンヌとレイ。
ジャンヌの背中には、爆発によって飛び散った破片が刺さっている。
一方レイは重傷であった。
爆発により、右腕がなくなっていたのだ。
「クソ、何がどうなっている」
ジャンヌの体を持ち上げ(お姫様抱っこ)レイの元へと走るレオン。
「…レ…オン。す…いません」
「何故、謝る!」
お前らは俺に対して、謝罪の言葉ばかりぶつけてくる。
何に対して謝っているのかが分からなければ、謝られても全く意味はない。
それでは…許せないではないか。
ジャンヌを床にそっと置き、レイが無事かを確認しようとしたその時であった。
「フフフ、ハハハハハ!ようやく、ようやく出られたか」
両手を天に掲げ、全身を真っ黒なローブで身を包む男は、高らかに笑う。その姿に固まるレオン。
レオンに気づいた男は、こう呟いた。
「よう、魔法師。俺と世界を握らないか?」
西暦2999年12月某日。
男とレオンの初めての会話であった。
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