水瀬りのはアイドルであって異世界を救う者ではない

伊達\\u3000虎浩

第1章 13 薬草って食べますか?塗りますか?

 第1章13


【18】薬草って食べますか?塗りますか?


 防具屋を後にする三人。


 なぜ二人は落ち込んでいるのだろうか。と、葵は思ったのだが、その理由を聞いてはいけない気がした為、聞けずにいたのであった。


 重い空気が流れる。


「はぁ…確かに、最近のアイドルはバラエティーでも活躍してますよ。ええ、えぇ。だからって、だからって」


「いえ。りのは理由があるからいいじゃないですか。魔法少女ですよ?魔法少女」


「理由があったって良くないわよ。大体、玲奈なら問題なく着れるんじゃないの?」


「き、着れるわけないじゃないですか!りのは私を何だと思ってるんですか!!」


「え?コスプレイヤーだと思ってるけど」


「そ、そんな…照れますよ」


 照れるポイントが分からん。


 玲奈とそんな話しをしていると、後ろから葵が声をかけてきた。


「お、おい!アレが道具屋ではないか?」


 声をかけられた二人は、葵が見つめる方へと顔を向ける。


 そこには看板があり、看板には瓶のマークが描かれていた。


「確かにそうかもね。とりあえず、中に入りましょうか」


 違ったら違ったで、店を出ればいいだけの話しである。


 そう思った三人は、店内へと足を運んだ。


 ーーーーーーーーーー


 カラン。カラン。と、入り口のベルを鳴らす。


「いらっしゃいませ〜」


 と、店員さんが挨拶してくるので、軽く会釈をする三人。


「……!?ま、まさか・・」


「はい?」


 ピョコピョコ動く耳。


 その耳は、左右の頭の上で揺れている。


「りの!葵!」


「うむ。良い。良い!実に良い店だ」


 店員さんのお尻からは、フサフサの尻尾がヒラヒラと揺れていた。


「ミヤも可愛いけど、やっぱりこっちよね♡」


「あ、あのぉ〜?」


 はぁはぁと、息遣いが荒い三人を見ながら、獣人族の店員さんは困惑していた。


 いきなり店にやってきて、はぁはぁなどと言われたら、それは仕方がない事である。


「あ、あの!」


「は、はい!」


「お金を払うので、尻尾を触らせてくれませんか?」


「……え"?」


 りのの提案に、店員さんの警戒度数があがる。


「り、りの!落ちついて」


「はぁ、はぁ、はっ!?す、すいません」


「あ、い、いえ。あのぉ…本日はどのようなご用件でしょうか?」


 良かった。とりあえずは大丈夫そうだ。と、店員さんは思った。


「ク、ク、ク。我等はお主をに来たのだ」


 買いに、飼いに。


 果たして店員さんは、どちらの意味で捉えただろうか?どちらにせよ、警戒度数は更にあがる。


「こ、こら、葵!!すいません。すいません。冗談ですので。すいません」


 りの達が女の子で良かった。


 男なら間違いなく、通報されていただろう。


「あ、いえ。大丈夫ですので、頭をあげて下さい」


「ありがとうございます。すいません…ホントに…。獣人族の方を見るのが珍しくて、つい」


「ふふふ。そうでしたか。キツネ族である私達を見かける機会などあまりないでしょうから、仕方がありませんね」


「キツネ族…何ですか?」


「はい。皆さまよく勘違いされますが、妖狐族とは異なる種族でございます。妖狐族は優秀な方達が多く、変化の術を得意としております」


「へ、変化…だと!?」


 キランと、葵の目が光る。


「あの…初めて見るということは、この町の方ではないのですか?」


「え?え〜っと…」


 さて、何と返すべきなのだろうか。


 悩むりのだったが、返す必要はなくなってしまう。


「たのもぉーー!!」


 バン!と、勢いよく扉が開き、お客が入って来たからであった。


 ーーーーーーーーーー


 勢いよく扉を開き、店の外から入って来たのは、一人の女の子であった。


「いらっしゃいませ。すいません。できれば、静かにお願いします」


 キツネ族の店員さんは、軽く注意する。


「む。かたじけないでござる。道を尋ねたいのだがよろしいでござるか?」


 ござる?と、四人は思った。


 そんな四人を気にする素ぶりすら見せず、女の子はそんな事を言いながら、店員さんの側へと近づいていく。


 どうやら道に迷った人らしい。


 りの達は邪魔にならないようにと、脇にずれた。


「拙者、江戸に行きたいのでござるが、どう行けば良いのか教えていただきたいでござる」


「え、江戸…ですか?」


「む。江戸を知らぬでござるか?さてはお主…田舎者でござるな」


「…はぁ」


 何を言われているかがさっぱり分からない店員さんは、そう返すので精一杯であった。


「ふむ。お主のその格好からして、め、めいちょなんちゃらというのではござらんのか?」


「め、めいちょ…ですか?」


「むむ。どうやら分からぬようでござるな。失礼したでござる」


 軽く会釈をしながら、店を出ようとする女の子。


「むむ?」


 げ!と、りのは心の中で呟いた。


 絶対に関わってはマズイ子だと思ったりのは、沈黙を貫いていたのだが、どうやら気づかれてしまったようだ。


 しかし、店員の側にいたのだから、それは仕方がない事である。


「かたじけないのだが」


「聞こえてたわよ。江戸って、貴方、いつの時代の人なのよ」


「むむ。聞こえておったたのに無言でござったか」


「悪かったわね。ていうより、私の話し聞いてた?」


 関わりたくないからよ。などと言えるはずがない。りのはその事をうやむやにしようと、質問する事にした。


「かたじけないのだが、道を教えてほしいでござる」


「って、こら、話しを聞きなさい!」


 りのではなく、葵に質問をする女の子。


「ク、ク、ク。我を頼るとはな」


「知ってるでござるか!?」


 驚く女の子に対し、葵は右腕を真っ直ぐ突き出し、右眼を左手で隠すポーズをとりながら告げる。


「我を誰だと思っておるのだ!」


『中二病の可哀想な子』


「ちゃ、ちゃうわい!」


「あ、あのぉ…」


「あ!すいません。ほ、ほら、ちょっとこっちに来なさい」


 困った顔をする店員さんを見たりのは、ここにいては邪魔になると判断し、女の子を連れて外に出た。


 玲奈と葵も、後に続く。


 ーーーーーーーーーー


 道具屋の外に出てきた四人。


「江戸って言ってたし、もしかして貴方、日本から来た人?」


「むむ。拙者は里から来たでござるよ」


「どこの里よ全く。はぁ…ねぇ?貴方、名前は?」


「ふむ。拙者、う○まきナルトと申す」


「嘘は、いい、から、本名を、教えなさい!」


「いひゃいでござる」


 イラッとしたりのは、女の子のホッペをつねった。


「まぁ、いいわ。私は水瀬りの。17歳よ。で、こっちにいるのが」


「か、神崎玲奈といいます。歳はりのと一緒です」


「ク、ク、ク。我はユーシスティス。この世界を救う者である」


「おぉ!異国の者でござったか」


「違うから。この子は天龍寺葵っていって、歳は17歳よ」


「むむ?まあよいでござる。拙者は服部一族の血を引く者でござるよ。名を"右京 皐月"と申す」


「うきょう…さつき?服部じゃなくて?」


 服部一族なら服部では?と、りのは質問する。


「うむ。一族の名を与えられる為には、試練があるでござる」


 ふ〜ん。と、りのと玲奈は思った。


 というのも、葵がいるからであり、皐月も同じように、中二病なのだろうと考えたからである。


「ほほぅ。試練とな」


 案の定、くいついたのは葵であった。


「左様でござる。一族の血を引く者は、いくつもの厳しい試練を見事勝ち抜き、立派な忍びとしての道を歩む者にしか与えられないのでござる」


「おぉ!かっこいいではないか」


 さて、どうしよう。


 目を輝かせる葵と、両腕を組みながら語る皐月を見ながら、りのはそんな事を考えていた。

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