アイドルとマネージャー

伊達\\u3000虎浩

第2章 パーティー

 
 結衣を見送った修二は、パイプ椅子を片付け、部屋を出ようとしていた。


「忘れ物は…って、あるわけないか」


 一人言を呟きながら、部屋の辺りを見渡していたその時である。


「おぉ!?アキラではないか!」


 ガチャッという音と共に、ひかり達がやって来たのであった。


「…修二な。それより、どうしたんだよ?」


 買い物に行ったとは聞いていたが、その後、レッスンスタジオに来るなど聞いていない。


 ひかりに質問をすると、嬉しそうな表情を浮かべながら、質問に答えてくれた。


「ク、ク、ク。宴じゃ宴」


「…まさか、パーティーでも始めるつもりなのか?」


「そうなんです!しかも恵理さんが、好きな物を買ってきていいって言ってくれたんですよ」


「………しかも自腹」


 修二の質問に対し、遥が答え、遥の補足にと、あゆみが答えてくれた。


「…流石は恵理さんだな。ん?ゆず?」


 恵理に関心していた修二であったが、ゆずが元気がない気がする。心配になった為、声をかけた。


「……買えなかった」


「は?」


「だ・か・ら!買えなかったの!!」


「いやいや、何をだよ」


 急にキレられても、困るだけだっての。


「まぁまぁゆずちゃん。あゆみちゃんが代わりに買ってくれたんだしさ」


「……あぁ。なるほどな」


 見た目が小学生であるゆずは、お酒が買えなかった事に対し、かなりご立腹のようであった。


「人を見た目で判断するなんて…」


「いやいや、年齢確認は当たり前だからな」


 むしろ、キチンとしているなぁと、誉めるべきなのだ。いや、当たり前の行為なのだから誉めるのは違うか?


「そもそも、身分を証明する物をキチンと持っていなかったのが悪い」


 お酒にしろタバコにしろ、キチンと年齢確認をしなくてはダメだからな。


「は?パーティーをするって事や、お酒を買いに行かされるって事を、前もって知っていたら持ってきたわよ」


「まぁまぁ、せっかくのパーティーですから」


「……喧嘩。駄目」


 熱くなる修二とゆずを、遥とあゆみが止めに入った。勿論、修二とゆずに、異論はない。


「……悪かった」


 とりあえず謝罪をして、楽しくパーティーでもしようではないか。


「ふ、ふん。私も、ちょっと、ほんのちょっとだけ、悪かったわ」


 それは謝罪なのか?と、聞きたくなる修二であったが、グッとこらえて我慢した。


「おい!アキラ!」


「あぁぁもぉ!修二だって言ってんだろ?んで、何だ?」


「ク、ク、ク。大魔王はどうした?」


「は?何の話しだ」


「ほれ、先ほどヤツの魔法により、身動きがとれなかったじゃろ?しかも、身動きがとれない所でのメテオストライク…恐ろしいヤツじゃ」


「ちょ、ちょっと待て。まさか、姐さんの事か?」


 魔法により、身動きがとれなかったとは、縄で縛られてしまっていた事に対してだろう。


 メテオストライクというのは、踏まれた事なのか、殴られた事なのか…と言うより、中二病の言葉を解釈するの、メンドくせーよ!


 しかし、ここは話しに乗るとしよう。
 何故なら、おそらくこのパーティーの目的というより、恵理さんの目的は、皆んなと親密になろうっていう目的だろうからな。


「い、いいか、ひかり!?姐さんは確かに怖い。何で怒ってんのかがたまにわからんが、大抵は向こうが正しい」


 さっきも、訳も分からないまま怒られたしな。


「ク、ク、ク。だからこその大魔王なのだ」


 良くわからん。
 一番正しいイコール、一番偉い的なヤツか?
 そもそも、一番とは言ってないからな。


「そりゃぁ、怒ると悪魔みてぇに怖いが…まぁでも、そこには愛がこもっているっていうか何と言うかだな」


「…………あ…………結衣さん」


「そ、そうアレだよアレ!ご褒美ってヤツ?じゃなくて、何ていうか…ま、とにかく、大魔王って評価は妥当だな。もしかしたらアイツの前世は、悪魔かもな…悪魔的な可愛いさってヤツ?ははは」


「……わ、我は、そんな事、い、言ってないぞ」


「ん?おぃおぃ。さっき大魔王って…ふぎゃ!?」


「はぁ…はぁ…こ、この…お馬鹿ぁぁぁあ!!」


「あ、姐さん!?い、一体、いつから?」


「ほら、喜びなさいよ?愛がこもった、ご褒美ってヤツなんでしょ?」


「さ、最初っからじゃないですか!?ち、違うんです!コレは、親密をって、痛い痛い!!」


「陰口を叩いて親密って、アンタは女子か!?し、しかも……悪魔的可愛さって言った」


 痛すぎて、後半部分が聞きとれん。
 と、とりあえず、誰かに助けを…って、おい!


 辺りを見渡す修二。


 怯えるひかりが見え、ゲスを見るような視線を送るゆず。


 眠いのか、興味がないのか、良く分からん表情のあゆみ。


 そして、なぜか目を輝かせている遥。


 自分で何とかするしかないと考えた俺が、見上げると、顔を踏まれてしまった。


 おそらく、スカート的なヤツだろう。


 背中に乗る姐さんは、そりゃぁもう赤鬼の如く、顔を真っ赤に染めて、怒ってらっしゃった。

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