アイドルとマネージャー
第2章 神ゲー
床を見つめる修二と遥。
どうす…る?何か話させねば。
修二は考える。
「……しゅしゅ、修二さんも男の子ですもんね。し、仕方ないですよ」
しかし、先に動いたのは遥であった。
遥は決して、目を合わせようとはしない。
(こ、こいつ…自分の私物のくせに気不味くならないようにと、俺の私物だと言ってきやがった)
どうする?話しにのるか?
「そ、そうなん……」
そこまで言いかけて、修二は気づいた。
お互いが気不味くならないようにする為には、遥の作戦にのるのが、一番手っ取り早い。
(修二のエッチと遥から言われ、ごめんな〜ハハハ。と、俺が返す。遥がシャワーを浴びているうちに、コレを処分。そして、話題に出さないようにする…ハイ。一件落着)
コレが、遥が瞬時に導き出した答えなのだろう。
し、しかしだ。
かばうためには、一つの傷害を覚悟しなくてはならない。
『妹だけど愛さえあれば関係ないよね♡』
そう、妹モノのエロゲーだということだ。
シスコンだの、ロリコンだのと言われてしまうだけではない。実際問題、俺には妹がいる。
つまりだ。
かばったとしよう。
しかし、かばうということは、この問題も全て了承したということになり、もしもうっかり遥が千尋や結衣の前でこの事をポロッと口にした瞬間、俺は、こ、殺されてしまう。
ならば俺がとるべき行動は、一つしかないではないか。
「…いやいや、俺のじゃねぇよ!実妹がいる兄が、こんなくだらないゲームなんて買わねぇっての」
「……あ"?く、くだらない・・だと」
「ん?何か言ったか?」
「……い、いえ。し、しかしですね。実際問題ここは修二さんの家でして、わわ、私は良く知らないんですけど、パッケージを見る限り、そ、そういういかがわしい、ゲゲ、ゲームなんですよね」
眉をピクピクさ、笑顔の表情を浮かべながらも、決して自分の私物だとは言わない遥。
『俺妹』ならここでどうするか…い、嫌、かばう事など出来ない。
「あ、あぁ。み、見た感じそうみたいだな。しかし、実妹がいる俺は、そういうゲームなんか見たくもやりたくもねぇな」
やはり、妹モノのエロゲーというハードルは高すぎる。妹にでもバレでもしたら、一生の問題になることが確定してしまうだろう。
「み、見たくも、やりたくも…ない…ですか」
ボソボソと呟く遥。
「あぁ。ゴミにでも出そうぜ」
お互いの物ではないと、主張する二人。
ならここは、宅配業者には悪いが、宅配業者が落としていったのではないかと、提案…いや、宅配業者に電話しようなどと提案されは…しないハズか?
「やりもしないで…」
「……え?」
修二がそんな事を考えていると、遥の怒りが爆発した。
「やりもしないでくだらないだぁ?あ"ぁん!?この神ゲーをゴミに出すとか、マジでありえねぇだろぅがぁ!!」
生まれて初めて俺は、壁ドンというのを経験した。
「……え、えっと・・は、遥さん?」
「……あっ!?」
失態に気付いたのか、みるみる顔が赤く染まる。
「い、いやぁ。だ、大丈夫、大丈夫!俺は何も、見ていないし、聞いてもいない。あ、あははは」
「…………」
頭をかきながら、話しをそらそうとする修二だったが、遥は無言のままうつむいていた。
「さ、さてと。ノドが渇いたなぁ…?」
リビングに避難しようと試みる…が。
「あ、あのぉ…と、通してほしいなぁ」
しかし、遥の壁ドンはまだ続いていた為、避難が出来ない修二。
「……謝って」
「え?」
「くだらないとかゴミに出すとか言ったことを、ちゃんと謝って下さい!!!」
涙目になりながら、遥が訴えてきた。
理不尽な!と、思うかもしれないが、女の子に泣かれてしまっては、そんな事は言えないだろう。
「…あ、あぁ。くだらないとか言って悪かった」
暴れ馬をなだめるかのように、修二は謝った。
「修二さん!!」
「は、はい!?」
「可笑しいですか?私がこの神ゲーを持っていたら、変ですか?」
神ゲーなんだ…と、思いながら、チラッと遥を見ると、ぷるぷる震えているのが分かった。
「……変じゃねぇよ。ただ、自分の持ち物なのに俺の所為にされたから、ちょっと驚いただけだ」
「本当…ですか?」
「あぁ。まぁ、やった事がないけどさ、遥がそこまで言うんだから、神ゲーなんだろうなぁ〜ぐらいの事だよ」
我ながらナイスフォローだ。
「…………よ」
「ん?何だって?」
ボソボソ呟かれては、返事のしようがない。
謝るのも、お礼を言われるのも、きちんと聞いてからではないと、返事が出来ないではないか。
そうだろ?
「だ・か・ら!そんな羨ましそうな目をするなら、一緒にやりましょうよ!って、言ったんですよ!!」
「……い、いや、別にいい」
謝られるわけでも、お礼を言われるわけでもなく、まさかの誘いであった。
「や、やっぱり、馬鹿にしているんですね」
「な、何故そうなる!?」
「じゃぁ、なんでやらないって言うんですか!」
妹モノのエロゲーだからだよ。などとは言えない。
もしも仮にそう言った場合、じゃぁ違うのならいいんですか?などと言われてしまっては、断る口実がなくなってしまうじゃないか。
「……だ、だからな、そ、それって、エ、エロゲーってヤツなんだろ?と、当然さ、ほ、ほらアレだよアレ」
〇〇〇〇が出てきて、〇〇〇〇したりなんかして、それを一緒に見るって事はだなぁとは言えず、激しく動揺してしまう修二。
「は?違いますよ。何を言ってるんですか?」
そんな修二の意見を、ばっさり切る遥。
「ち、違うのか?」
良かった。と、胸をなでおろす修二。
どうやらパッケージが裸だからといって、そんないかがわしい事はしないゲームらしい。
分かりやすく言うのであれば、パッケージ詐欺ってヤツだな。うむ。世の中の男性が、一度は通る道だ。
「全然違いますよ!神ゲーです。神ゲー」
エロゲーではなく、神ゲーだと主張する遥。
「……い、いや、だからな、ジャンルは?」
「神ゲーです(๑>◡<๑)」
「あ、そ……」
話しが全く通じていない。
まぁ…なんか良く分からんが、元気になったみたいで安心したぜ。
「ほら、修二さん!やりますよ」
「い、いや、あのですね。やるとは一言も…って、聞け!!」
前言撤回したい。
こうして、何故か遥と一緒にゲームをする羽目になった修二であった。
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