アイドルとマネージャー
第2章 霧島修二家の侵略者
とりあえず千尋は社長なので、これまでの経緯を一通り説明する事にした。と言っても、墓場や飛行機の中での出来事ではなく、雪の家に泊まるつもりだった遥の事。しかし、雪の家はもうないだろうからって事で、俺の家に荷物を送った事をだ。
「…とまぁ、そんな訳で、遥の荷物は明日には家に届くとしてだな。ん?千尋?」
「ん?何かな?シュウ君?何かな?」
「ひぃっ!しゅしゅ、修二さん?何か千尋さん怒ってませんか?」
サッと俺の背後に周りこむ遥。
「はぁ…当たり前だろ?いいか?家がないなんて事をだなぁ、そりゃぁ誰が聞いたって怒るだろ」
怒るよね?ね?
「だ、だって、だって、鹿児島からどうやってコッチの家を借りるんですかぁ〜ねぇ?ねぇ?」
「知らねぇよ!つか離せよ…ってあれぇ…姐さん。何か怖いんですけど」
「ちょっと修二。目を閉じて膝まづきなさい」
「…そ、それ、もうちょっと可愛いい感じで頼みます」
「死ね!」
顔を赤く染め、結衣必殺のボディーブローが飛ぶ。
うん。一歩君もビックリだわ。
「で?で?遥ちゃんはどうするのかな?かな?」
お腹を抑えながら悶絶している俺に向かって、千尋は笑顔で尋ねてくる。
「どうって…な?千尋。泊めてやってくれよ。な?」
「結衣ちゃんとだけでいっぱいいっぱいだよ」
「え、恵理さんは!?」
「ひかりと一緒に住んでるから無理なんじゃない」
千尋は結衣と。
恵理さんはひかりと住んでいる。
「…事務所に泊まらせるわけには、いきませんよね」
同時に、レッスンスタジオも論外である。
セキュリティの問題上、事務所の中に誰かがいたら、鍵が閉められないのだ。
確か、体温なんちゃらってセキュリティが…ってコ、コイツ…!?
「……お、お前な」
「ふぇ。ね、寝てませんです。はい」
「何で俺が!お前の寝床を!探さにゃならんのだ!」
「ひたい、ひたいでふよ!シュウさん!」
遥の両頬を、思いっきりつねる修二。
「……!?いぃぃ痛い!痛いっすよ姐さん!」
「アンタってヤツは…遥の担当なんだから、どう、して、こう、なってるのよ!」
修二のこめかみを、思いっきりグリグリする結衣。野原みさえ直伝攻撃…ガキの頃、観る度に恐怖したもんだぜ。な?わかるよな?
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!」
理不尽だ。
流石に黙ってはおれん。
「俺は確かに、遥の担当マネージャーっすよ。けど、流石に遥の家までの面倒なんてみれませんよ」
だよね?ね?
「じゃぁ何?アンタは、遥を野宿させる気?」
あれれ〜可笑しいぞぉ?話しが通じてない。
うむ。俺は名探偵の気分が少しだけ分かった気がする。
「そ、そうじゃなくてですね。こっちに来るなら来るで…そ、その遥の家をですね…探すのは俺じゃなくな…いですか?」
「は?で?何?」
「…で、ですから。そ、その拳をですね」
お、お願いだから、女の子から聞きたくない言葉、ベスト10もやめて!
「済んだ事をグチグチ言っても仕方ないじゃない」
うん( ・∇・)今までの会話、済んだ事をグチグチ言ってましたよねwwなどとは、死んでも言えない。
「と、とりあえずは、借りる家を探すそうです。はい」
「は?当たり前でしょ。馬鹿なの?家がないと、仕事出来ないじゃない」
「そうですよ〜シュウさん。冗談キツすぎますって…ひぃ!?」
「だ・か・ら…何で、俺が、お前、の。今夜の寝床を、探さにゃならんのだ!」
ふふふ。結衣直伝のグリグリ攻撃。
特と味わうがいいさ。
「ご、ごめんなふぁい!だ、だから、も、もぉちょっと、や、優すぃく…ひて、ぐらふぁい」
「……!?」
アレ。な、何か背中に悪寒が…走っひぃぃ!?
「し、死ね!!セクハラ修二!!」
「しゅ、修二の馬鹿ぁぁあ!!」
「ち、ちが……!?」
ハートブレイク・ショット。
右ストレートをひねりながら攻撃をする技であり、一瞬だけ時間を奪う技でもある。
詳しくははじめの一歩を是非、読むといい。
面白いからさ。
ていうか何だ?痴漢対策か何かで、はじめの一歩が流行ってんのか?ったく、明日のジョーを読めっての。
立つんだ!立つんだ!修二ーー!!
うん。
無理です。ハイ。
ーーーーーーーー
はぁ…ったく。と、深いため息を吐いてしまう。
あの後、今夜だけは家に泊めていいということになったのだが、千尋は泣きながら、結衣は怒りながら、間違いだけはおこすなと説得してきやがった。ったく、俺を何だと思ってんだよ。
マネージャーよ。マネージャー。
今から担当するタレント、以前担当していたタレントの妹に対して、間違いなんかおこさんわ!
「へ〜ここがシュウさんの家かぁ」
たく。コイツは、そういうのを気にしないのだろうか?しかし、聞くと気不味くなる為、聞く訳にはいかないだろう。
部屋の玄関を開け、鍵を靴棚の上に置く。
玄関には廊下があり、正面にリビング、左側にトイレやお風呂、右側が寝室という、一人暮らしなら普通である1LDKタイプの部屋である。
「…今日だけだからな」
「分かってますよ。あ!ここが私が寝る部屋ですね?」
ガチャっと寝室の扉を開ける遥。
「…痛、な、何するんですかぁ」
「何じゃない。人の部屋を勝手に開けるな」
「エロ本ぐらいじゃビビりませんよ〜」
「…そうじゃなくてだな」
頭痛がする気がするが、気のせいだろうか?
「とりあえずリビングに来い。作戦会議だ」
今後について話し合わねばと、修二はリビングに向かう。
「生存戦略ですね」
イマ〜ジ〜ンなどと言いながら、遥が付いて来る。
なぁ?頭痛がするのは、気のせいだよな?と、修二はため息を吐きながら、考えるのであった。
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