魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~

天羽睦月

第64話 魔法史の勉強


椿は雫に声をかけて、雫がこのマカロンを手作りしたのと聞いた。雫は椿の質問に対して私が作りましたよと笑顔で返答をした。

「凄いです! マカロンを作れるなんて! お菓子作りが好きなんですか?」

椿が雫に聞いてみると、雫は昔から好きでしたよと答えた。

「それに、美桜様と出雲君に食べてもらえるのが嬉しくて、最近は特に手の込んだお菓子や料理を作ってます」

そう笑顔で雫が言うと、出雲は雫さんのお菓子や料理凄く美味しいんだよと椿に言った。

「そうなの!? 雫さんの手料理食べてみたい!」

椿がマカロンを一口食べながら言うと、雫が晩御飯は私が作りますから楽しみにしていてくださいと皆に言った。すると、蓮や椿達が楽しみですと笑顔で喜んでいた。出雲と美桜も雫の料理が毎日楽しみであった。

「さ、晩御飯までもう少しだから勉強しちゃいましょう!」

美桜がそう言うと、出雲達は頑張っていこうと声をあげて勉強に勤しんだ。勉強を再開して二時間が経過すると、美桜が出雲に小テスト大丈夫そうなのと聞いた。

「だいぶ分かってきたよ! 美桜の教え方上手くて助かる!」

出雲はこの世界の魔法の歴史について少しずつ理解していた。例えば、この世界では初めから魔法があるわけではなく、遠い昔、弥生時代の辺りから魔力が人間に宿っていることが判明した。

魔力は一人一人総量が違うことや、属性は初めは火と風しかなかったこと。次第に多くの属性が発生して今現在判明している属性の数になったらしい。また、魔法が発生したことによって国家間の戦争が一度発生したと魔法史に書かれていた。

国家間の戦争が一度だけ。出雲のいた世界とは違う歴史がそこにはあった。戦争は一度だけ、しかもその戦争は第一次魔法世界戦争と言われていた。機械による戦争ではなく、生身で魔法を用いての侵略戦争であった。

日本は戦争の後半に魔法世界大戦に巻き込まれてしまい、人々が亡くなったようである。また、地上戦も勃発したようで地図が変わる程の戦いが行われたと書かれている。出雲は魔法の威力の高さや魔法による戦争の恐ろしさを学んでいた。

魔法史の教科書には地上戦での戦争前と戦争後の写真が載せられていた。それは町から見えていた山が半分消し飛んでおり、煌びやかな街が跡形もなく消えていた。初めは嘘の写真かと思っていたが、美桜に聞いたら本当のことよと言われたので、こんなことはもう起きないでくれと出雲は思っていた。

「今は日本を含めての世界中の国々が睨み合いを行っている感じで、いつ戦争が起きてもおかしくない状況が五十年以上続いているのよ」

まさかの真実が告げられた。確かに魔物がいて危険が身近であるが、国家間の戦争も行われており、それがいつ起きてもおかしくないとは恐ろしいと出雲は感じていた。

「五十年以上もそんな状態が続いているから、平和なイベントやこんなに楽しい毎日が送られているけど……」

美桜がそこで口ごもってしまうが、出雲の眼を見て言おうと決めたようである。

「いつ戦争が起きてもおかしくないの」

出雲は戦争が起きてもおかしくはないと聞き、美桜も貴族だから駆り出されるのかと聞いてみた。すると美桜は考える素振りをするも、出雲にはちゃんと伝えないとねと呟いた。

「私達貴族は大人も子供も戦争になったら、戦地に赴かないといけないの」

戦地に行かないといけない。その言葉を聞いた出雲は愕然としていた。

「ということは、蓮や琴音さんも戦地に行かないといけないんだ……」

椿と笑っている蓮や琴音も戦地に行って戦わなければいけない。出雲は自身も付いて行って美桜や皆を守りたいと思う。しかし、自身の実力がまだなことや、人を殺すことが出来るのか迷いがあるのも確かである。

「出雲がそんなに思いつめることはないのよ。 戦争だってしたい人ばかりではないし、本当に起きるなんて誰にも分からないから」

美桜はそう言って出雲の頭を撫で、そのまま蓮達の方に歩いて行く。出雲はこの世界の歴史も自身のいた歴史みたく、人の努力によって積み重なっているのだと理解し、小テストの勉強意外に考えることの方が多い時間だったなと疲れていた。

「失礼します。 夕食をお持ちしました!」

部屋の扉がノックされて開いたと思ったら、雫が二段作りの白いカートに乗せられて美桜達の夕食が運ばれてきた。

「皆さんの夕食をお持ちしました! 本日の夕食はシチューですよ!」

そう言って雫とその後ろにいた使用人の女性は出雲達が勉強をしていた机をくっつけてその上に雫が作ったシチューを乗せていく。

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