魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~
第60話 初日の帰宅
撮影後は談笑しながら電車に乗って帰宅をしていた。最寄り駅はそれぞれ違うので、途中で別れたりをしていた。美桜と出雲は地元に到着をすると、美桜が出雲に話しかけてくる。
「学校は通えそう? 楽しい?」
まだ初日だが美桜は出雲のことが気になったようで、学校が楽しいか聞いてきた。出雲はまだ初日だよと言うが、それでも美桜達がいてくれるから楽しくなりそうだし、今日だって楽しいと返答をした。
「そ。 なら良かった。 出雲には学校の楽しい思い出が少ないと思ったから、楽しい思い出を沢山作てほしいと思って!」
美桜が出雲の前に躍り出てそう話してくる。出雲はその美桜の気持ちが嬉しくてありがとうとすぐ言葉がでた。美桜は出雲がありがとうと言ったことが突然過ぎて驚いたのか、びっくりしたと言っていた。
「何がびっくりしたの? 思ったことを言っただけだよ?」
そう言われた美桜は顔を紅く染めていた。そして、前を向いて良かったわよと言って家に向かって走っていった。
「ちょっ、何で走ったの!? 美桜さーん!?」
出雲は突然走り出した美桜に驚くも、待ってと言って自身も走って追いかける。しかし美桜は足が速かったので、出雲は全く追い付かない。
「待って……待ってよ……」
息を切らしながら小走りになって、次第に歩いて追いかける。出雲が癒えに着くと、美桜が玄関に寄りかかって出雲が来るのを待っている姿が見えていた。
「やっと追いついた……早いよ……」
息を切らせながら美桜に話しかけると、美桜がごめんねと言う。出雲は突然謝ってどうしたのと聞くと、美桜が置いて行っちゃってと言った。
「そんなことくらい大丈夫だよ。 美桜に何もなくて良かった」
そう出雲が言うと、優しいねと美桜がポツリと呟く。その言葉は出雲には聞こえていなかったが、美桜は蓮と琴音以外の同年代に優しくされることに慣れてはいないようである。
出雲は蓮と琴音同様に優しく自身のことを考えてくれて接してくれているので、特別な人間として接していた。特別以上の感情も持ち合わせているようだが、それは自身で認めたくない部分もあるらしく、頬を紅く染めてしまっている。
「ありがとう。 じゃ、中に入りましょう」
出雲と美桜が扉を開けると、そこには雫が立っていた。
「し、雫さん!? 帰ってくるのが分かっていたんですか!?」
出雲が驚いていると、雫が国立中央魔法学校は初日は昼前に学校が終わるんですと出雲に言った。
「雫さん知っていたんですか?」
出雲が聞くと、雫は私も通っていたんですよと話す。
「本当ですか!? なら、試験のこととか知ってますか!?」
出雲は既に試験のことを心配していたが、雫が昔のことですし範囲や内容が違うと思いますから意味ないですよと言う。美桜は雫に話しかけていた出雲の右肩を掴んで、試験は皆で勉強すれば大丈夫よと笑顔で言った。
「そ、そうだよね。 ありがとう……」
美桜の顔は笑顔なのに、出雲に肩を掴む手に力が籠り過ぎていた。ミシと骨が軋む音が出雲の身体の中から聞こえる程に、美桜の手に力が籠っていた。出雲は何で怒っているのか理解出来なかったが、多分試験のことを聞いたからだろうと推測出来た。
「美桜と試験勉強が今から楽しみだよ」
感情を込めずに言わないとと思った言葉を美桜に言うと、美桜が眩しい笑顔で出雲に勉強しようねと言った。感情は込めていなかったが、美桜はその出雲の言葉に歓喜していた。
「右肩が痛い……美桜って力強いのかな?」
出雲がそう呟いていると、雫が私が鍛えましたからと出雲に言う。出雲そう聞くと、そりゃ強いですわと呟いた。
「さて、お昼は過ぎてますがまだ食べてないですよね? お昼ご飯作りますね!」
雫がそう出雲に言うと、美桜には言いますかと聞いた。すると、美桜には雫から言うと言われたので自室に一度戻ることにした。自室に戻ると出雲は鞄を床に置いてベットに座った。
「新しい世界で、新しい学生生活……こんなに楽しいことばかりで良いのかな? 死ぬ間際にこの世界にこれて幸せだ……夢のような世界だけど、死の危険がある世界。 この世界で俺は絶対幸せになってやる!」
そう叫んで拳を上にあげると、美桜が扉の隙間からそんな出雲を見ていた。美桜は幸せになる出雲をが言った言葉を聞くと、私が幸せにしてあげるわよと小さな声で呟いていた。
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