魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~

天羽睦月

第57話 講堂での説明


出雲が舞台を見ているとそこに一人の黒いスーツを着た白髪交じりの出雲より少し身長が高く見える痩せ型の中年の男性がいた。その顔は皺が少しあるも、若々しく見える。

「皆さんご入学おめでとうございます。 私はこの国立中央魔法学校の理事長である柏木佐助と申します」

柏木佐助と自身の名前を言うと、椿が有名な人だと呟いた。出雲は有名かどうか知らないので、後で美桜に聞こうと決めた。

「さて、皆さんはこれから三年間実践を交えながら教養科目以外の魔法について学ぶ機会が多いと思います。 その際にどのような道に進めばいいか、どのような思いで魔法を学んでいけばいいか、迷うことが多いと思います」

そう言う理事長の話を出雲は静かに聞いていた。美桜も琴音も椿も蓮も思い思いの顔をしながら理事長の話を真剣に聞いている。

「一緒のクラスのクラスメイトや友達、教師達に相談をしながらこの三年間で多くを学んで下さい。 その経験や考え方は、必ずあなた達の道標となるでしょう」

その言葉と共に理事長の話は終わった。理事長が舞台袖に歩いて姿が見えなくなると、初老の男性教師が出てきた。その教師は前方や後方にいる教師達に舞台から支持をすると何枚かの紙を配り始めた。

その紙には学校の年間行事が書かれた紙や保護者に渡す資料が数枚であった。その紙には授業料や教科書代についてなど、生徒達が学校生活を送るために必要なことが書かれていた。

「こんな大金……俺は誰に払ってもらえば……」

出雲が頭を抱えていると、美桜がその様子の出雲に気がついたようで耳打ちをし始める。

「出雲の入学金は私が払ってるし、これから必要なお金も私が払うから安心して」

そう右隣に座る美桜が耳打ちで教えてくれたので、安心と共に申し訳ないと思ってしまった。また、耳打ちで聞いた美桜の声色が色気に溢れていて心臓が高鳴ってしまう。出雲達はなおも続く教師からの説明を聞いていると、これで説明は終わりですと滞りなく説明が終わったようである。

そして、教師は舞台袖にいなくなる前に、これから順々に本校舎に戻ってもらい、そこで担任の教師からこれからの説明を受けてくれと新入生全員に言う。

「本当に魔法学校に入ったんだな……」

出雲は座席に座りながらしみじみと感じていた。魔法学校に通って、魔法を習って、美桜を守るために強くなるんだとも考えていた。

「あ、俺達の番だな。 移動しようぜ」

蓮は出雲達に移動しようと言って、琴音と共に先に席を立った。出雲達三人は蓮と琴音の後に続いて講堂を出ていく。その際に多くのすれ違う新入生達が話している声が聞こえていた。

例えばどんな部活に入ろうか、例えばどんな友達が出来るのか、例えばどんな風な授業なのかなど色々な会話が聞こえていた。出雲自身もこれからの学校生活がどんな風になるのか想像はつかないが、それでも楽しくなるのだろうと嬉しく感じていた。

「あ、そういえば学校の敷地内に桜が咲いているんだね!」

琴音が美桜と椿に校門近くに植えられて咲いている桜の木を指さして言うと、二人は綺麗だよねと言っていた。出雲はその桜の木を見て四月って感じがすると言う。

「確かに四月の新生活シーズンには桜の木は不可欠だよね」

蓮は出雲にそう言い、帰りに写真を撮ろうと全員に言った。すると、出雲達四人は写真撮ろうと笑顔で良いねと蓮に言った。そんな話をしながら楽しく本校舎の中に入ると、上履きに履き替えて階段を上って教室に入っていく。

教室では出雲達が最初の方に入ったようで、全員が揃うまで多少時間がかかった。そして、全員が揃うと担任の女教師が教卓の前に立って、全員揃いましたねと言う。

「では、これからこのクラスの担任教師を任された青葉鈴と言います。 よろしくお願いしますね!」

青葉鈴と名前を言った女教師は、黒い膝下まであるスカート型の黒いスーツを着てスタイルが良いのがよく分かる。また、身長は美桜より少しだけ高く、茶髪のボブ系の髪型をしていた。前髪は左分けをしており、目にかからないようにセットをしているようであった。

年齢は二十台後半だと自身で言っているので、触れられたくないのだろうとクラスメイト達は察した。

「では、出席番号順に自己紹介をお願いします。 一番からお願いしますね」

そう名前順に呼ばれた人から自己紹介を始めた。出雲は自身の番が近づくに連れて緊張をしていたが、美桜が緊張しすぎないで良いのよと自身の番が終わったからか出雲を励ましていた。

美桜は無難に名前と出身学校を言っただけで終わるかと思いきや、アニメやフィギュアが好きだと加えて言ったので、一瞬教室内がざわついたが、何人かの女子達が目を輝かせて美桜を見ていたので、何とか何事もなく自己紹介が終わった。

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