魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~

天羽睦月

第52話 入学前のある一日③


美桜はありがとうございますと言うと、出雲に帰ろうと話しかける。出雲はスマートフォンを操作していたのですぐには気がつかなかったが、話しかけられてから数秒後に美桜に分かったと返答した。

美桜は誰かにメールでも打っていたのと出雲に聞くと、試験で知り合った女の子だよと言う。女の子との言葉を聞いた美桜は目を見開いて、可愛いのと出雲に聞く。出雲は何も考えずに可愛いと思うけど気が強いよと返答した。

「ふーん……可愛いんだ……」

美桜は口をへの字にして部屋を出ていった。出雲は美桜に違うんだよと言いながら肩を掴もうとすると、美桜にぺしっと払われてしまう。

「美桜さーん怒らないでよー」

郵便局を出ても出雲が美桜にごめんと言っていると、美桜が何のことを謝っているのと言った。出雲は口ごもると、晩御飯奢るから許してと言う。

「何を許してほしいか分からないけど、晩御飯奢ってくれるのは楽しみ」

美桜がそう言いながらスマートフォンを操作して電話をし始めた。電話相手は雫と美桜の口から発せられたので、雫なのだろうと出雲は思った。

「晩御飯なんだけど、出雲と外で食べるわ。 急でごめんね」

そう言って通話を終えた美桜は、出雲に笑顔で楽しみと言う。出雲はもしかして一緒に食べたかっただけなのではと冷や汗をかいていた。出雲は美桜は怒らせると怖いなと実感すると、怒らせないようにしないとと心に決めた。そして、スマートフォンでこの近辺で美味しい料理屋がないかと調べると、駅の反対側の方に有名な和食料理屋があるようであった。

出雲は美桜にそこに行こうとスマートフォンの画面を見せると、美桜は良い選択ねと喜んでいた。美桜は出雲の左手を掴んで、早く行こうと小走りになる。太陽が沈み始めている空を見ながら、美桜といると楽しいと出雲は考えていた。

「そんなに小走りでいると転ぶよー」

出雲がそう注意してと声をかけると、美桜は転ぶわけないじゃないと笑顔で返答をした。出雲ははいはいと言って一緒に手を繋いで駅の方に行くと、人が沢山いた。

駅前には商店街や駅前広場などもあるため、そこでは家族連れや社会人、パフォーマンスをしている人など多くの人がいた。美桜は結構人がいるわねと言いながら、人混みを避けつつ出雲と共に駅に入っていく。駅に入ると、反対側に向けて歩くと晩ご飯の時間帯になってきたので人がより多くなってきていた。

「人多いけど大丈夫?」

出雲が横にいる美桜に聞くと、美桜が手を引いてくれてるから大丈夫と言っていた。

「普段なら埋もれちゃうけど、今は出雲がいるから大丈夫!」

笑顔で下から見上げている美桜を見て、可愛いと出雲は思った。そして目当ての和食料理屋に到着をすると、混み始めている雰囲気であった。出雲は早く並ぼうと美桜に言うと、そうねと美桜は返答をした。出雲が並んだ和食料理屋は天ぷら料理屋であった。様々な野菜の天ぷらに海老やその他の天ぷらまで幅広く提供している店である。

出雲は列に並びながら美桜に何が食べたいか聞くと、天丼を食べると言ってくる。出雲はそれもいいねと言うと、美桜が出雲は何を食べるのと聞いてくる。出雲は季節野菜の天丼にすると言うと、美桜がそれも美味しそうと言っていた。

「どっちを食べるの?」

出雲が再度美桜に聞いてみると、美桜が出雲と同じのにすると言う。出雲は分かったと言って美桜と自身の注文する料理を覚えておく。五分程度待つと出雲達の番が回ってきた。

「お二人ですね? 中にどうぞ」

従業員の女性に案内をされて二人は店内に入っていく。店内では多くの人が早い時間なのに席に座っていた。カップルや家族連れが多い中、一人で食べている人もいるようである。それぐらい美味しくて人気店であることが理解できた。

美桜は案内された席に座ると、すぐに案内をしてくれた人に注文をお願いしますと呼び止める。

「あ、注文いいですか?」

その言葉を聞いた案内をしてくれた人は分かりましたと言って、注文票を取り出した。

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