第48話 料理の味

その言葉を聞いた出雲は、ありがとうございますと二人に言うと納豆ご飯を食べ始めた。出雲は自身の世界で食べた納豆と味は同じだろうと思っていたが、その考えは一口で味が違うと実感させられた。

「この納豆の味が全然違う！ 今まで食べたやつと違いすぎる！ 美味しい！」

出雲は納豆と白米を同時に食べ続けるとその味が舌の中で蕩け、納豆の臭味がなく、いくつでも食べられると感じていた。

「凄い美味しい！ この納豆ご飯食べたことない！」

出雲は勢いよく食べ進めると、途中で咽てしまうがそれでも食べ進める。美桜と雫は、食べ進める出雲を見て美味しそうに食べてて良かったと顔を見合わせて笑っていた。

「げふっ！ ゴホゴホ……美味しい！」

出雲が咽つつも食べていると、美桜が自身の茶碗から納豆を出雲に少し渡した。

「いいの！？」

出雲がそう聞くと、食べてと笑顔で出雲に言った。出雲はありがとうと言うと、勢いよく再度食べる。途中に何度かおかわりと言って納豆と白米をもらうも、おかずには目もくれていなかった。

「納豆もいいけどおかずも食べなさいね」

美桜が出雲に笑顔で言うと、ごめんと言っておかずにも手を付けた。出雲はおかずを食べると、そのおかずの脂っこさのなさのウィンナーやスクランブルエッグの甘さに感動をしていた。

「こんなに美味しいの毎日食べれて幸せです！」

出雲のその言葉を発すると、ご馳走様と全て食べたようである。美桜は今日はゆっくりしなさいと出雲に言うと、部屋に戻るわねと言った。雫は仕事があるからと言って自室で準備をするようである。

「部屋に戻るか」

出雲はそう言って食器を台所に持って行く。使用人の人達に後は任せると、自室に戻る。自室ではすることがなかったので、スマートフォンを操作したり椿にメールをしたりテレビを見たりと時間を潰していた。

「暇だな……」

出雲はそう言ってベットから起き上がると、テレビの電源を再度入れた。そこにはもうすぐ魔法学校や一般学校の入学式が行われるとアナウンサーが話していた。

「来週の月曜日から入学式なのか。 俺も入学できるかなー」

出雲がテレビを見ながら入学したら楽しいだろうなと考えていると、自室の扉が勢いよく開いた。

「な、なに！？ 何が起きたの！？」

出雲が突然扉が開いて、部屋の中に現れた美桜を見て驚いていた。

「どどどどどどうしたの！？ 突然俺の部屋に来て！？」

出雲が美桜を見てどうしたのと聞くと、美桜は笑顔で一枚の紙を胸の前に持ってきていた。

「何それ？ 手紙？」

出雲が美桜に聞くと、美桜が試験結果が来たわよと笑顔で出雲に話す。試験結果が出た。夜に来ると思っていたのに、まだ昼間のうちに結果が来たので出雲は目を丸くして突然の試験結果の到着に驚いていた。

「もう来たの！？ 急に緊張してきた！」

出雲は頭を抱えながら美桜の前にゆっくりと歩いて行く。日の光が窓から出雲の背中に当たり背中が熱くなるも、その熱さは緊張からか分からなかった。美桜は出雲が目の前に来たのを確認すると、白い手紙を手渡す。

出雲はその手紙を受け取ると、表面に黒羽出雲様宛てと書かれていた。出雲は裏面に回して封を開けると、三つ折りにされている紙を取り出した。その紙には試験結果と書かれており、下の方に目線を向けると国立中央魔法学校入学試験合格と書かれていた。

「え……？ 何これ……？」

出雲が両手を震わせながら紙を掴んでいると、その出雲の表情を見ていた美桜がもしかして駄目だったのと聞いてくる。しかし、出雲は両手を震わせるのを止めて、美桜の眼を真っ直ぐ見た。

「美桜……俺、試験受かってた！」

受かってた。その言葉を聞いた美桜は目を潤ませて涙を流し始めてしまう。出雲は涙を流す美桜の涙を、持っていたハンカチで拭く。美桜にどうして泣いたのと聞くと、美桜は出雲が合格したことが嬉しかったからと出雲に言う。

「あ、ありがとう……俺の代わりに泣いてくれてありがとう……」

出雲は美桜にありがとうと言って、これで二人で学校に行けるねと笑顔で言った。美桜はその笑顔の出雲を見ると、抱きしめて一緒に通えるねと笑顔でいながら涙を流していた。