魔王様は学校にいきたい!
特別編 ~穏やかで賑やかな日々~
──これはウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの、穏やかで賑やかな日々の一幕──
ここはロームルス学園の学生寮、その角に位置する古びた一室。ウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの四人が暮らしている部屋だ。
「ぎゃああああっ!?」
朝の静寂を塗り潰す、只事ではない叫び声。声の主はシャルロットだ、何やら鏡の前でワナワナと震えている。
「し、衝撃的な寝癖ですわ……っ」
まるで荒れる海原、伸びる竜巻、あるいは爆ぜる大火のよう。いずれにせよシャルロットの髪は、凄まじく荒れ散らかしていた。
「ですからシャルロット様、私は何度も止めたのです。寒さ対策にウルリカ様を抱っこして寝ようだなんて、あまりにも危険な行為です」
「そうは言ってもオリヴィア、ここまでグチャグチャにされるとは思いませんわよ……」
「ウルリカ様の寝相は天変地異なのです、一緒に寝ようものなら無事でいられません」
「はぁ、ワタクシの髪も天変地異ですわ……」
シャルロットはガックリと項垂れ、無残に荒れ果てた髪をイジイジ。そんなシャルロットを横目に、オリヴィアはウルリカ様の元へ。
「起きてくださいウルリカ様」
「むむぅ……」
「朝ですよ、起きる時間ですよ」
「むうむぅ……」
「頑張ってください、起きてください」
「んやんやぅ……」
ウルリカ様はキュッと丸くなり、右へゴロゴロ左へゴロゴロ、まだまだ眠っていたいのだろう。とても可愛らしくはあるが、眠らせたままというわけにはいかない。
「仕方ありません……運びますので、しっかり掴まってください」
「のじゃ……」
「こちらに座りますよ、落ちないよう気をつけてくださいね」
「んのじゃ……」
「すぐに朝食をお持ちしますね」
「ぐぅ……」
オリヴィアは眠ったままのウルリカ様を抱え、食卓へと運んで強引に座らせる。ウルリカ様をお世話し続けてきただけあり、すっかり扱いに慣れたものだ。
「恐ろしく手強い寝癖ですわ……ダメですわね、とりあえず先に朝食ですわ」
「ふぅ……ただいま戻りました!」
「あっ、お帰りなさいサーシャ」
「今日も朝から気持ちのいい汗をかきました! ホラ見てください、シュッシュッシュッ!」
「なぜ突然の反復横跳び……えっと、朝食の準備が出来ていますよ」
「ありがとうございます、さて今日の朝食は……えっ、シャルロット様!?」
寝癖に手こずるシャルロット、日課である剣術の特訓を終えたナターシャ、そしてウルリカ様とオリヴィア。四人揃って朝食の時間だ、と思いきやナターシャはシャルロットを見て口をあんぐり。
「シャルロット様、それ……その髪は一体?」
「ウルリカにやられましたわ……」
「あっ、もしかしてウルリカさんの寝相で……ぷぷっ」
「どうぞ笑ってくださいですの……」
「すみません、でも面白すぎて……ぷぷぷっ」
「すやぁ……すやぁ……」
「はいウルリカ様、今日の朝お菓子はマドレーヌですよ」
「むぐぐぅ……むむっ、甘々なのじゃ!」
ウルリカ様はお菓子で目覚め、オリヴィアはお世話に大忙し、シャルロットは寝癖を嘆き、ナターシャは寝癖で爆笑。実に無秩序、なんとも混沌とした食卓である。
それにしてもお菓子で目を覚ますとは、相変わらずウルリカ様のお菓子好きは筋金入りだ。
「おはようなのじゃ! うむっ、今日の朝お菓子も甘々でおいしいのじゃ!」
「おはようございます、ありがとうございます」
「ふむ? ところでロティよ、その髪はどうしたのじゃ?」
「ウルリカの寝相にやられましたのよ!」
「ふーむ……ソフトクリームみたいじゃな、おいしそうじゃ」
「ソフトクリームってウルリカさん、笑わせないでくださ……ぷぷぷっ」
「はぁ……もう朝食は終わりですわ、さっさと制服に着替えますわよ!」
混沌とした朝食はお終い、そろそろ学校の支度をする時間である。だが支度の前に食後の歯磨きをしなければ、とっても痛い虫歯になってしまう。
「さあウルリカ様、歯を磨きましょう」
「むうぅ、面倒臭いのじゃ」
「ダメです、ちゃんと磨いてください」
「むぐぐっ、むぅむぅ……」
慣れたものでオリヴィアは、イヤイヤするウルリカ様の歯を丁寧に磨いてあげる。上の歯をシャコシャコ、下の歯をシャコシャコ、なんとも至れり尽くせりだ。
「はいウルリカ様、磨き終わりましたよ」
「うむ、では着替えるのじゃ!」
「ああっ、待ってくださいウルリカ様」
クチュクチュペッをしたウルリカ様は、寝間着を脱ぎ捨てて制服にお着替え。ところが大胆に着崩れており、とても人前に出られる格好ではない。
ここでもオリヴィアは慣れたもので、丁寧に着崩れを直していく。最後にネクタイを結んで完成、やはり至れり尽くせりだ。
「じゃーんっ、お着替え完了じゃ!」
「じゃじゃん、私も準備完了です!」
ウルリカ様は元気いっぱい、そしてナターシャも元気いっぱい。二人は腕を組んでクルクル、とてつもなく楽しそうだ。
「はぁ、ようやくウルリカ様の支度が終わりました……」
「はぁ、ようやく寝癖を制圧しましたわ……」
対照的にオリヴィアはクタクタ、そしてシャルロットもクタクタ、二人揃って朝から疲れ果てている。
「では学校へ出発じゃ!」
「ちょっと、まだワタクシは着替えていませんわよ!」
「私も支度を……待ってくださいウルリカ様、走ると転んでしまいます」
「平気なのじゃ、妾は転ばないのじゃ──ぷえっ!?」
「あ、ウルリカさんが転んでしまいました……」
ウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの、穏やかで賑やかな日々は続く。
ここはロームルス学園の学生寮、その角に位置する古びた一室。ウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの四人が暮らしている部屋だ。
「ぎゃああああっ!?」
朝の静寂を塗り潰す、只事ではない叫び声。声の主はシャルロットだ、何やら鏡の前でワナワナと震えている。
「し、衝撃的な寝癖ですわ……っ」
まるで荒れる海原、伸びる竜巻、あるいは爆ぜる大火のよう。いずれにせよシャルロットの髪は、凄まじく荒れ散らかしていた。
「ですからシャルロット様、私は何度も止めたのです。寒さ対策にウルリカ様を抱っこして寝ようだなんて、あまりにも危険な行為です」
「そうは言ってもオリヴィア、ここまでグチャグチャにされるとは思いませんわよ……」
「ウルリカ様の寝相は天変地異なのです、一緒に寝ようものなら無事でいられません」
「はぁ、ワタクシの髪も天変地異ですわ……」
シャルロットはガックリと項垂れ、無残に荒れ果てた髪をイジイジ。そんなシャルロットを横目に、オリヴィアはウルリカ様の元へ。
「起きてくださいウルリカ様」
「むむぅ……」
「朝ですよ、起きる時間ですよ」
「むうむぅ……」
「頑張ってください、起きてください」
「んやんやぅ……」
ウルリカ様はキュッと丸くなり、右へゴロゴロ左へゴロゴロ、まだまだ眠っていたいのだろう。とても可愛らしくはあるが、眠らせたままというわけにはいかない。
「仕方ありません……運びますので、しっかり掴まってください」
「のじゃ……」
「こちらに座りますよ、落ちないよう気をつけてくださいね」
「んのじゃ……」
「すぐに朝食をお持ちしますね」
「ぐぅ……」
オリヴィアは眠ったままのウルリカ様を抱え、食卓へと運んで強引に座らせる。ウルリカ様をお世話し続けてきただけあり、すっかり扱いに慣れたものだ。
「恐ろしく手強い寝癖ですわ……ダメですわね、とりあえず先に朝食ですわ」
「ふぅ……ただいま戻りました!」
「あっ、お帰りなさいサーシャ」
「今日も朝から気持ちのいい汗をかきました! ホラ見てください、シュッシュッシュッ!」
「なぜ突然の反復横跳び……えっと、朝食の準備が出来ていますよ」
「ありがとうございます、さて今日の朝食は……えっ、シャルロット様!?」
寝癖に手こずるシャルロット、日課である剣術の特訓を終えたナターシャ、そしてウルリカ様とオリヴィア。四人揃って朝食の時間だ、と思いきやナターシャはシャルロットを見て口をあんぐり。
「シャルロット様、それ……その髪は一体?」
「ウルリカにやられましたわ……」
「あっ、もしかしてウルリカさんの寝相で……ぷぷっ」
「どうぞ笑ってくださいですの……」
「すみません、でも面白すぎて……ぷぷぷっ」
「すやぁ……すやぁ……」
「はいウルリカ様、今日の朝お菓子はマドレーヌですよ」
「むぐぐぅ……むむっ、甘々なのじゃ!」
ウルリカ様はお菓子で目覚め、オリヴィアはお世話に大忙し、シャルロットは寝癖を嘆き、ナターシャは寝癖で爆笑。実に無秩序、なんとも混沌とした食卓である。
それにしてもお菓子で目を覚ますとは、相変わらずウルリカ様のお菓子好きは筋金入りだ。
「おはようなのじゃ! うむっ、今日の朝お菓子も甘々でおいしいのじゃ!」
「おはようございます、ありがとうございます」
「ふむ? ところでロティよ、その髪はどうしたのじゃ?」
「ウルリカの寝相にやられましたのよ!」
「ふーむ……ソフトクリームみたいじゃな、おいしそうじゃ」
「ソフトクリームってウルリカさん、笑わせないでくださ……ぷぷぷっ」
「はぁ……もう朝食は終わりですわ、さっさと制服に着替えますわよ!」
混沌とした朝食はお終い、そろそろ学校の支度をする時間である。だが支度の前に食後の歯磨きをしなければ、とっても痛い虫歯になってしまう。
「さあウルリカ様、歯を磨きましょう」
「むうぅ、面倒臭いのじゃ」
「ダメです、ちゃんと磨いてください」
「むぐぐっ、むぅむぅ……」
慣れたものでオリヴィアは、イヤイヤするウルリカ様の歯を丁寧に磨いてあげる。上の歯をシャコシャコ、下の歯をシャコシャコ、なんとも至れり尽くせりだ。
「はいウルリカ様、磨き終わりましたよ」
「うむ、では着替えるのじゃ!」
「ああっ、待ってくださいウルリカ様」
クチュクチュペッをしたウルリカ様は、寝間着を脱ぎ捨てて制服にお着替え。ところが大胆に着崩れており、とても人前に出られる格好ではない。
ここでもオリヴィアは慣れたもので、丁寧に着崩れを直していく。最後にネクタイを結んで完成、やはり至れり尽くせりだ。
「じゃーんっ、お着替え完了じゃ!」
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ウルリカ様は元気いっぱい、そしてナターシャも元気いっぱい。二人は腕を組んでクルクル、とてつもなく楽しそうだ。
「はぁ、ようやくウルリカ様の支度が終わりました……」
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