魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

邪悪なる神の帰還

 果てしなく広がる暗闇、輝きを失った魔法陣、立ち並ぶ無数の祭壇。何処かの地底に存在する巨大施設、ここはガレウス邪教団本拠地。
 人影は四つ、ザナロワ、アブドゥーラ、リィアン、ラドックスのものだ。最上位魔人である四人は、一際巨大な祭壇の前に膝をついている。よく見るとそれは祭壇ではなく、禍々しく装飾の施された玉座のよう。

「闇の祭壇、暗黒の玉座、何もかも懐かしいものだ」

 玉座には誰も腰かけていない、陽炎のような闇が座面中央で揺らめいているのみ。その正体は邪悪なる意志の塊、不完全ながら復活を果たした邪神ガレウスの魂だ。

「ガレウス様のご帰還、心よりお喜び申しあげます。そして……」

「どうしたザナロワ?」

「先日の無様な失態、申し訳ございませんでした」

「我々の救出にお手を煩わせましたこと、心よりお詫び申しあげます」

 ザナロワとアブドゥーラは頭を下げ、南ディナール王国での敗北を深謝。弁明をすることもなく、ただひたすらに詫び続ける。

「よい、お前達の無事こそ緊要。最上位魔人は余の力に適応した貴重な存在、余の完全復活を前に失うわけにはいかぬ」

「我が身の重要性、あらためて肝に銘じます」

 ザナロワとアブドゥーラに目立った外傷は見受けられない。特にアブドゥーラは手酷くやられていたはず、だがそのような痕跡は一切ない。最上位魔人の回復力たるや、実に恐るべきものである。

「さてラドックスよ、北方陥落の功績を褒賞せねばな。多大なる魔力の献上、真に大義であった」

「はっ、勿体なきお言葉!」

 ラドックスは身を震わせながら、繰り返し地面に額を擦りつける。外套に隠され顔は見えないが、歓喜の表情を浮かべていることは想像に難くない。

「余の完全復活は近く叶うだろう、これは予感ではなく確信である。懸念材料はウルリカの存在だ、彼奴こそ千年前に余を倒した張本人」

 闇の揺らめきは勢いを増し、小規模な炸裂を繰り返す、まるでガレウスの強烈な怒りを反映しているかのようだ。

「口惜しいことに今の余ではウルリカに勝てん、故に余の完全復活を優先する。是が非でもヨグソードを入手せよ、これは至上命令である」

 命令を下すや返事も待たず、ガレウスは気配を消してしまう。どうやら完全に意識を閉じ、復活を待つ体勢に入った模様。
 誰一人として言葉を発しないまま、ザナロワ、アブドゥーラ、ラドックスは暗闇に紛れ何処かへ。リィアンだけは顔を伏せたまま動かず、揺れる心を静かに吐き出す。

「リィは……リィには友達が……」

 邪悪なる神は帰還を果たし、息を潜め完全復活の時を待つ。人類は団結し、次なる戦いに備え力を蓄える。
 そして魔界の動向は如何に、いずれにせよ決戦の時は近い。

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