魔王様は学校にいきたい!
邪教の神
邪教の軍勢を退け、南ディナール王国は平穏を取り戻しつつある。しかしフラム王の構える謁見の間は、未だ緊迫感に包まれていた。
「この者がガレウス邪教団の手先……」
「そうっす、半人半魔の魔人っすね」
フラム王と元老院、そしてアンナマリアは輝く球体を取り囲んでいる。アンナマリアの作り出した、ザナロワを閉じ込めた光の牢獄だ。
もはや逃走を諦めたのか、ザナロワは身じろぎ一つしない。しかし意識はあるようで、アンナマリアとフラム王を睨みつけている。
「それにしても魔人を捕獲されるとは、アルテミア様のお力は凄まじい」
「ふふんっ、この程度なら余裕っすよ。後は適当に尋問して、ガレウス邪教団の情報を吐いてもらうっす」
「ガレウス邪教団の情報を得られれば、戦いを有利に進められますね」
「そうっすね……んん?」
最上位の魔人を生け捕ったのだ、これ以上ないほどの戦果といえる。ところがアンナマリアの表情は浮かない、何やら周囲を警戒しているよう。
「アルテミア様、どうされました?」
「妙な魔力を感じるっす、これは……マズいっす!」
「うおっ!?」
どういうわけかアンナマリアは、フラム王を押し倒し覆い被さったのだ。その直後、光の檻は跡形もなく砕け散る。
元老院は一人残らず吹き飛ばされ、あまりの衝撃にグッタリと失神。アンナマリアに助けられなければ、フラム王も吹き飛ばされていただろう。
「……ふむ、地上の空気は千年振りだな」
ザナロワの口から出た声は、まるで別人のように低く重たい。心臓を震わせるような、濃い威圧感を孕む声だ。
「この気色悪い魔力、そして根暗で陰気な声。間違いないっす、邪神ガレウスっすね?」
「貴様は余を知っているのか、果たして何者であろうな? いや待てよ……この魔力は知っているぞ、貴様は勇者アルテミアだな?」
「覚えてられてたっす、気持ち悪いっすー」
漂う魔力は暗澹にして異質、ザナロワの魔力とは明確に異なっている。なんとザナロワはガレウスの魔力により、完全に操られている模様。
「ずいぶん長く寝てたっすね、残念ながら復活しやがったっすか?」
「配下の肉体を借りてではあるが、力を顕現するに至った。完全復活はまだ先か、しかし復活の時は近いぞ」
「完全復活なんてさせないっすよ?」
「クククッ……時にアルテミアよ、貴様どうやら衰えておるな? 千年の時を経て弱体化したか、もはや貴様など恐るるに足りんな」
「弱体化して丁度よくなったっす、なんせ全盛期の私は強すぎたっすから」
「はっ、減らず口は相変わらずか」
空間を歪ませるほどの、強大な魔力と強烈な殺気。常人であれば気を失うか、あるいは発狂してもおかしくない状況だ。
「さて、余の配下を返してもらうとするか」
「させないっすよ!」
アンナマリアは閃光の速度で、再び神聖魔法の檻を作り出す。対するガレウスは暗黒の魔力を解き放ち、闇の柱で宮殿の天井を貫く。
アンナマリアの反応は決して遅くなかった、しかし紙一重の差で軍配はガレウスにあがる。
「さらばだ勇者アルテミアよ、余の完全復活を楽しみにしておるのだな」
「くっ……」
闇の柱にズルリと溶け込み、ザナロワおよびガレウスは姿を消した。ついに復活した邪神ガレウス、その姿は未だ闇の中。
一方そのころ、もう一人の魔人アブドゥーラにも異変は起きていた。虫の息だったにもかかわらず、ユラユラと起きあがったのだ。
明らかな異常事態に、ミーアは油断なくレーヴァテインを構える。
「ふむ……どうやらアブドゥーラは手酷くやられたようだな」
「あの状態から動けるなんて……声も魔力も別人みたい、さっきの魔人じゃないの?」
「貴様は巨人族か、まるで火山のような魔力だな。いや待てよ……貴様から感じる魔力の残滓、もしや忌々しい吸血鬼の真祖か?」
「吸血鬼の真祖って、もしかしてウルリカ様を知ってるの? ていうかあんたは誰?」
禍々しいガレウスの魔力、燃え滾るミーアの魔力。強大すぎる魔力の衝突により、地は震え空は悲鳴をあげる。
「クククッ……」
「笑ってないで答えなさいよ!」
「余は邪神ガレウス、人と魔の頂点に君臨せし、邪なる神である」
「はぁ? 人と魔の頂点って、魔界の頂点はウルリカ様でしょ?」
「余こそ真の頂点なり、憎きウルリカは余の手で葬り去る──」
「ウルリカ様の敵だな、ここで消えろ!」
ガレウスの言葉を遮り、ミーアはレーヴァテインを振り下ろす。爆炎により加速された一撃は、速度も威力も凄まじい。
しかしガレウスの反応は早かった、一瞬にして闇の柱に姿を隠したのだ。敢え無く空振りとなった一撃は、虚しく大地を叩き割るのみ。
「くっ……ごめんなさいウルリカ様、逃げられてしまいました」
南ディナール王国での戦いは終わった、しかしガレウス邪教団との戦いは、邪神ガレウスとの戦いは終わらない。
「この者がガレウス邪教団の手先……」
「そうっす、半人半魔の魔人っすね」
フラム王と元老院、そしてアンナマリアは輝く球体を取り囲んでいる。アンナマリアの作り出した、ザナロワを閉じ込めた光の牢獄だ。
もはや逃走を諦めたのか、ザナロワは身じろぎ一つしない。しかし意識はあるようで、アンナマリアとフラム王を睨みつけている。
「それにしても魔人を捕獲されるとは、アルテミア様のお力は凄まじい」
「ふふんっ、この程度なら余裕っすよ。後は適当に尋問して、ガレウス邪教団の情報を吐いてもらうっす」
「ガレウス邪教団の情報を得られれば、戦いを有利に進められますね」
「そうっすね……んん?」
最上位の魔人を生け捕ったのだ、これ以上ないほどの戦果といえる。ところがアンナマリアの表情は浮かない、何やら周囲を警戒しているよう。
「アルテミア様、どうされました?」
「妙な魔力を感じるっす、これは……マズいっす!」
「うおっ!?」
どういうわけかアンナマリアは、フラム王を押し倒し覆い被さったのだ。その直後、光の檻は跡形もなく砕け散る。
元老院は一人残らず吹き飛ばされ、あまりの衝撃にグッタリと失神。アンナマリアに助けられなければ、フラム王も吹き飛ばされていただろう。
「……ふむ、地上の空気は千年振りだな」
ザナロワの口から出た声は、まるで別人のように低く重たい。心臓を震わせるような、濃い威圧感を孕む声だ。
「この気色悪い魔力、そして根暗で陰気な声。間違いないっす、邪神ガレウスっすね?」
「貴様は余を知っているのか、果たして何者であろうな? いや待てよ……この魔力は知っているぞ、貴様は勇者アルテミアだな?」
「覚えてられてたっす、気持ち悪いっすー」
漂う魔力は暗澹にして異質、ザナロワの魔力とは明確に異なっている。なんとザナロワはガレウスの魔力により、完全に操られている模様。
「ずいぶん長く寝てたっすね、残念ながら復活しやがったっすか?」
「配下の肉体を借りてではあるが、力を顕現するに至った。完全復活はまだ先か、しかし復活の時は近いぞ」
「完全復活なんてさせないっすよ?」
「クククッ……時にアルテミアよ、貴様どうやら衰えておるな? 千年の時を経て弱体化したか、もはや貴様など恐るるに足りんな」
「弱体化して丁度よくなったっす、なんせ全盛期の私は強すぎたっすから」
「はっ、減らず口は相変わらずか」
空間を歪ませるほどの、強大な魔力と強烈な殺気。常人であれば気を失うか、あるいは発狂してもおかしくない状況だ。
「さて、余の配下を返してもらうとするか」
「させないっすよ!」
アンナマリアは閃光の速度で、再び神聖魔法の檻を作り出す。対するガレウスは暗黒の魔力を解き放ち、闇の柱で宮殿の天井を貫く。
アンナマリアの反応は決して遅くなかった、しかし紙一重の差で軍配はガレウスにあがる。
「さらばだ勇者アルテミアよ、余の完全復活を楽しみにしておるのだな」
「くっ……」
闇の柱にズルリと溶け込み、ザナロワおよびガレウスは姿を消した。ついに復活した邪神ガレウス、その姿は未だ闇の中。
一方そのころ、もう一人の魔人アブドゥーラにも異変は起きていた。虫の息だったにもかかわらず、ユラユラと起きあがったのだ。
明らかな異常事態に、ミーアは油断なくレーヴァテインを構える。
「ふむ……どうやらアブドゥーラは手酷くやられたようだな」
「あの状態から動けるなんて……声も魔力も別人みたい、さっきの魔人じゃないの?」
「貴様は巨人族か、まるで火山のような魔力だな。いや待てよ……貴様から感じる魔力の残滓、もしや忌々しい吸血鬼の真祖か?」
「吸血鬼の真祖って、もしかしてウルリカ様を知ってるの? ていうかあんたは誰?」
禍々しいガレウスの魔力、燃え滾るミーアの魔力。強大すぎる魔力の衝突により、地は震え空は悲鳴をあげる。
「クククッ……」
「笑ってないで答えなさいよ!」
「余は邪神ガレウス、人と魔の頂点に君臨せし、邪なる神である」
「はぁ? 人と魔の頂点って、魔界の頂点はウルリカ様でしょ?」
「余こそ真の頂点なり、憎きウルリカは余の手で葬り去る──」
「ウルリカ様の敵だな、ここで消えろ!」
ガレウスの言葉を遮り、ミーアはレーヴァテインを振り下ろす。爆炎により加速された一撃は、速度も威力も凄まじい。
しかしガレウスの反応は早かった、一瞬にして闇の柱に姿を隠したのだ。敢え無く空振りとなった一撃は、虚しく大地を叩き割るのみ。
「くっ……ごめんなさいウルリカ様、逃げられてしまいました」
南ディナール王国での戦いは終わった、しかしガレウス邪教団との戦いは、邪神ガレウスとの戦いは終わらない。
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